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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
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ぼっち妖精の憧れ


――彼女は妖精である


 妖精は精霊の中で、力の強い物の中から、いつの間にか自然に生まれてくると云われている


 彼女は自分が生まれた時、何故自分が存在しているのか理解していなかった


 彼女は、自分が何者なのかも理解していなかった


 自分の周りには言葉を発しない精霊のみ


 ある時、その中にいる自分だけ、何故か少し違う存在なのだという事に気付く


 疑問に思った妖精は、出会う精霊、出会う精霊、みんなに何故、自分とあなたたちは違うのかを尋ねて回った


 周りの精霊たちは、声帯から発する言葉ではなく、思念と呼んだら良いのか、そういったものでコミュニケーションをとる


 何度も、何度も、話を聞いているうちに、自分が精霊の中から選ばれた者なのだということを知った


 でも、妖精は、それを知った所で、どうすることもなく、そのまま何もかわらなかった


 周りにたくさんいる精霊たちは、彼女に世界の仕組みを教え、そして優しく育んでいった


 知識は人を成長させていく


 妖精も、少しずつ知識を蓄えていった


 世界は広く、山や、川や、森や、海や、ここにはない色々な場所があること


 世界には、精霊とは違う存在がいて、国や、街やなどを創り出していること


 そうすると、どんどん色々な疑問が、彼女の胸の内に湧いてきたのだ


 そして、とうとう、彼女は精霊達とだけ話す毎日に飽きてしまった


 精霊たちから教えてもらった、自分たちと違う存在に会ってみたくなったのだ


 でも、自分の周りには精霊たちしかいない



――そうだ、私がみんなに会いに行けばいいんだわっ!



 突然、それを思いついた彼女は、居ても立っても居られなくなり、〝精霊達の遊び場“から飛びたっていってしまった……



        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽


 

 彼女は、外の世界にでて、街を目指した


 精霊以外の存在と話してみたい


 そして、とうとう、彼女は外の世界で、とある人族の子供に出会った


 その子供は無邪気に妖精である彼女に話しかけた


「あなたのお名前は?」


 妖精は首を傾げて黙り込んだ


「もしかして、あなたには名前が無いの? じゃあ、私が名前をつけてあげる!……あなたはリンリンと羽を鳴らすから……、ベル! あなたの名前はベルにしましょ!」


 妖精はとても嬉しかった


「わたしとあなたは友達よ。仲良くしましょうね。」


――名前をもらっただけでなく、友達までできちゃった!?こんな嬉しい事ってあるかしら!?


 その日、2人は暗くなるまで野原を駆け回り、飛び回って遊んだ



        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



 次の日、またあの子供と会えないかと、昨日遊んだ野原へと飛んで行ってみた


 しかし、そこに居たのは子供ではなく、二人の大人の人族だった


 子供に妖精の話を聴いた彼等は、妖精を捕まえれば、高く売れるからと、此処にやってきたのだ


 子供が家で待っているからと、2人の言葉にすっかり騙されて、簡単に彼女は捕まってしまった


 家に連れていかれると、彼女に名前をくれた子供が泣いているのが見えた


「――私のお友達に酷い事しないで……」


 おそらく、昨日家に帰った子供は、新しい友達ができた嬉しさから、彼女の事を両親に話したのだろう


 子供の話をきいた夫婦は喜んだ


 夫婦は、子供から妖精の居場所を聞き出し、捕まえて金にしようと考えたのだ


 まんまと妖精を捕まえた夫婦は、彼女に蔓で編まれた籠を被せ、その上に、重しとして分厚い本を置いた


 妖精は、籠を持ち上げようとしたが、重くて全く動かせない


――なんで人族は妖精族を捕まえるの? 妖精はあなた達になんか悪い事したの?



 彼女は悲しかった……とても、とても悲しかった


 その夜、誰もが寝静まるような頃、突然被せられていた籠が外された



――あぁ、どんな目に合わされるのだろう……


 そう思って顔を上げると、唇に人差し指を当てながら、名前をくれた子供がそこにいた


「パパとママがごめんなさい……ここから逃がしてあげるから、みんなを許してね。」


 子供は、涙を流しながら彼女を窓の外へと差し出した



 彼女は、手を振る子供をの周りを一周してから、夜空へ飛び去っていった――



       ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



 その日、妖精は名前を貰えた喜びと、人に攫われた恐怖とを同時に経験した


 人というものは、他人に与える優しい心と、他人を害する怖さを併せ持っている


 自分が一緒にいた精霊たちとは、全く違う理の存在であった



――怖い……でも、もっと、もっと外の世界を知りたい



 彼女は、この後も自分以外の存在への興味は尽きる事なく、而して何度も外の世界へ出かけていったのだった



       ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽

 

 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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