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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第2章 ふたりぼっちの冒険
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ぼっち少年、再会する


「よぉ、久しぶりだな。元気そうじゃねえか。」


 聞き覚えのある声に身を縮ませながら振り返ると、あの時の三人組がニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて立っていた。


――またこいつらかっ!?


 俺は無視して、もう一度冒険者ギルドに戻ろうとしたが、すぐに前を塞がれてしまった。



「もう、B級の旦那方はいなくなったそうだね。」


 三人組のリーダーであろう、魔術師風の男が声をかけてくる。



「おいっ!無視してんじゃねえぞ?こらっ!」


 戦士風の男はずいぶんと喧嘩っ早いようだ。俺をダンジョンの裂け目に落としたのは、たしかコイツだったっけ。



「最近、薬草やら毒消草やら集めてきて、懐がだいぶ暖かくなってるそうじゃねぇか。」


 レンジャー風の男が俺に顔を近づけてきた。


――おぃおぃ、こいつらチンピラかよ……。



「まぁ、前にポーターの仕事を失敗した事に対しての賠償金て事で、毎回、ギルドから受け取る代金の3分の2でいいぞ。俺たちに支払いな。」


――ほんとにチンピラだった!?



 こいつら、本気で言ってるのだろうか?

 俺をあんな酷い目に合わせておいて、その挙句に俺の失敗なんだから賠償金をよこせだと?人のリュックを奪った挙句、崖から突き落とした悪党のくせに……。


 こんな奴等が冒険者だとは本当に情けない……。冒険者ギルドはどうしてこんな奴らを野放しにするのか。


 しかし、頭にはきたが、俺には戦う力がない。

 腰に下げてる木の棒も、袋に入れてる石ころも、冒険者相手に役に立つとは思えない。

 そうなれば、なんとかして逃げたいところなんだけど、三人は俺を囲むように動いていた。



――逃してはくれなさそうだ……。



 周囲を見回してみても、俺を助けようとする者はいそうにもなかった。それどころか、この悪党共のやる事を楽しむように、一緒になってニヤニヤしながら、こちらを覗き見ている輩ばかりだ。


「――こりゃ、また我慢比べかな。」


 ボソッと溢れた俺の言葉は、三人組にも聞こえたようだ。それを聞いた3人は顔を見合わせてから首をかしげる。この悪党共は、恐喝行為を止める気などは、さらさら無さそうだった。



「さっきからボソボソと独り言いってないで、とりあえず今日の分の上がりを支払いなっ! そうじゃなけりゃ、痛い目にあうぜっ!」


 痛い目にあうぜっ!て……。これからの事かと思ったら、もうすでに、手の早い戦士風の男は俺に向かって右拳を叩きつけてきてるじゃないか!?


 俺は衝撃で吹き飛ばされる。

 

 第一の才能、【アンチ】の能力の為、直接のダメージは無いのだが、俺の小さい身体自体は、強い衝撃には耐えることができない。見事にレンジャー風の男の足元まで吹き飛ばされた。


「ほらほら、俺達の大事なスポンサーなんだから、壊れない程度にやれよ? 兄ちゃんも、痛い目にあいたくなければ、さっさと稼ぎをよこしな。」


――冗談じゃない! せっかく稼いだ、俺の大事なお金を取られてたまるかっ!



 俺はなんとかレンジャー風の男の手を振り解き、頭の前に腕を抱えてボクサーがするような防御姿勢をとる。実は、前世で読んだ漫画の知識を参考に、アンチバリアを活かす為の防御体勢を考えてたんだ。


――さぁ、こい!?



 我慢比べに耐え切ってみせる! 俺はそう決意した……、その時だった。鈴の鳴るような音が聞こえてきた。



「ちょっと!? あんた達なにしてるのよ!! こんな子供一人を相手に、大人が寄って集って!!」



 俺の頭の上から、姦しく、でも可愛らしい声が響いたのだ。



――えっ? 妖精!? ベルさん!?



 森を彷徨っている時に出会った妖精族の少女だった。小さな身体ながらも勇ましく、腕を組んで三人組を見下ろしながら飛んでいた。



「ったく!全然花畑に来ないと思えば、こんな所でムサ苦しい男たちに囲まれてるとか!? 私と遊ばないでそんな奴等と遊んでるなんて、あんたそういう趣味なのっ?!」



 いや、それ誤解です……。

 ていうか、こんなときでもそんな感じ!?

 冗談だよね?!



「おいおい! こいつ、妖精族じゃねえかっ!」

「マジか!? いい金になるぞっ! 捕まえろ!」



――っ!?



 三人の男達は、俺の事など後回しにしたのか、突然現れた妖精族の少女を捕まえる為に集中して動き出した。


「はぁ? あんた達ごときに、私が捕まるわけないでしょ? 馬鹿なのっ?」



 なんとも自信満々に胸を張り、顎を上げて勝ち誇ってるけど、大丈夫なのか?


 そう思った瞬間、魔術師風の男が叫んだ。


「お前らっ!離れろっ! 『世に顕在する万能なるマナよ、彼の者を安らかなる眠りに誘えっ、スリープ』!」


 あいつ、本当の魔術師だった! そういえば前にダンジョンで魔法使ってたよ! 魔術師風なんて言ってごめんなさい。


 あ……、心の中で反射的に誤ってしまった……。あんな奴らに謝ることなんてないのに。


 ちょっと悔しい気持ちになってると、妖精族の少女が上から落ちてきて、俺の頭の上に、ぽんっと弾んだ。 俺は咄嗟に女の子をキャッチして、慌てて両腕で抱えこんだ。


――あんなに威勢よく登場したのに、簡単に眠っちゃったの!?



 登場して、すぐにピンチに陥るヒロインかよ!

 そういえば、初めて会った時も、なんともおバカな行動して木のウロに捕まってたんだっけ……。



「妖精族は眠りの魔法に弱いって相場が決まってるんだ。ほらっ!さっさとその妖精族を渡しなっ!」


 戦士風とレンジャー風の男改め、戦士とレンジャーの2人が俺に掴みかかる。



――くっ、なんとかしてベルさんを守らなきゃ!



 元から三人が諦めるまで、アンチバリアで我慢するつもりだった訳で……。やる事はかわらない!

 俺はベルさんを抱えたまま、もう一つ考えていた、第二の防御体勢、亀のポーズをとる。すこぶる格好悪いが、ベルさんを守るのには一番都合が良い!



――さあこいっ! 俺と我慢比べだっ!



本日から第二章頑張ります!


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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