ぼっち少年、決める
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俺は冷たい視線を避けるように、町外れの森の前までやってきた。
――また、ここに来てしまったな
行く場所のない自分には、誰も居ないこの場所が安心できる場所だった。
草むらに寝転び、空を見上げる。草の匂いがひどく苦く感じた。
――これからどうしようか
胸元から、先日買ったメモ帳を取り出した。すでページの半ばまで文字で埋まっていた。ケインとユウから教わった冒険者として活動する為の知識だ。
――やっぱり、冒険者の夢は諦められない
そうさ、二つ目の才能を授かるまで、なんとしても生き残ってみせる。ケインさんだって、絶対諦めるなって言ってくれたじゃないか。
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――だからね、千里の道も一歩から。最初に一歩足を踏み出さないと、何も出来るようにならないよ。
私が隣にいるから、一緒に頑張ろ。
さあ、そう決めたら早速始めよっ!
明日やろうは馬鹿野郎っていうのよ!?
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――あれっ?どこかで聞いたような……
前世の記憶にある言葉と、現世での優しい剣士の言葉が重なった。違う世界にいる、俺の心の支えの二人が俺に同じ言葉をくれたのだ。
「あはははっ、すごいな2人とも同じ事言ってる!」
隣で一緒に過ごしたかった君は、今ここにはいない。
君と同じ言葉で僕を励ましてくれた人も、一緒に冒険に出る夢は叶わなかった。
でも、こうやって思い出せる色鮮やかな言葉たちは、真っ白で何者でも無い俺に力を与えてくれた。
「――そうだね。もうちょっと頑張ってみようか。君風に言うなら、笑う門には福来る。かな? ちょっと違うか?」
ふっと力が抜けて、自然と笑顔になれた。
俺の心の重しが軽くなった。
――そうだね。やってみなくちゃわからないよな。一歩で駄目なら、二歩三歩。千歩で駄目なら、万歩進んで夢を叶えてみせる。
英雄になってみんなを見返してみせる!
……いや違うな。彼女に言われたんだっけ。
「優しい英雄になって、みんなに認めてもらう!」
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「あなた自身は人に悪意をむけないで。優しいあなたが私は一番好きよ。」
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思い出した彼女の言葉が、自分の小さな掌から溢れ落ちないように、しっかりと、大事に大事に胸の中にしまっておこう。
俺のこれからへの誓いと共に。
けっして忘れてしまわぬように。
第1章完です!
これからも頑張る主人公を応援してください。
第2章も引き続きよろしくお願いしいたします。




