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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第1章 ひとりぼっちの少年
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軽薄な魔術師、諭す


「何を1人で突っ走ってるのかと思えば……。」


 魔術士のライトはため息をついた。


「ライト、この子は魔物の子供なんかじゃない。歴とした人の子だ。真面目で誠実な子なんだよ。」


 ケインは必死の表情でライトに食い下がる。


「なぁ、ユウもナナシに色々と教えてくれた時、そう思っただろ? この子がみんなが噂するような子じゃないって事を。ユウからもみんなに話してくれよ!」


「――やれやれ。ユウもケインの思い付きに手を貸していたのかい。全くユウはケインに甘すぎる。」


 突然話を振られたユウは、顔を強張らせて口を一文字に結んでいたが、なんとか言葉を絞り出した。


「――いい子ではあると思うよ……実際……。」



 自信無く小さな声での返答に、ライトはあからさまに不満な態度で溜息をついた。

 その態度に反応してか、ユウの口は益々身体を強張らせ、再び真一文字に結ばれてしまう。



「僕はね、そんな事はどうでも良いんだよ。その少年が魔物であろうとなかろうと、一緒に連れて歩く事には反対だ。」


 淡々と、そして確固たる自信を持って応える姿に、ケインですらも言葉がでない。



「いいかい、ケイン。僕らは探索組だ。ダンジョンの浅い階で日銭を稼ぐ冒険者達とは違う。

 ダンジョンの最奥を目指し、悪なる神の残光を封印し、その功績を持って英雄になりたいと、君はいつも僕らにそう語っていたじゃないか。

 ダンジョンの奥へ行けば行くほど、危険な魔物と戦わなくてはならないし、罠なんかもあるかもしれない。そんな所に、戦う力の無い少年を連れていくつもりなのかい?」


 ケインはライトの視線に耐えられなくなったのか、下を向いたまま顔をあげられない。



「それとも、そのナナシという少年のために、君は探索組を辞めて、素材集めをして暮らすとでも言うのかい? 僕は、そんな事は絶対に許さないよ。」


 普段は軽薄な優男なのだが、正論を繰り出し続けるライトからは、絶対に折れないという信念が感じられた――



        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



――ライトと言う男。この男は魔術師であり、また、歴史の研究者である。


 元々、魔術師大学の研究室で、神々の戦いに関する歴史を研究していたのだが、書物だけに傾倒する他の学者達とは違い、実際にダンジョンという古代から続く遺跡に直接赴き、経験したいと考えていた。


 そこで冒険者ギルドにて同行者を募った――


『ダンジョンの謎に一緒に挑んでくれる冒険者を募る――学者 兼 魔術師』


 この張り紙に反応してくれたのが、ケイン達だった。剣士であるケインに誘われたというレンジャーのユウ、重戦士のパーンの3人で活動していて、魔法職と聖職者を探しているという。


 それぞれ、英雄を目指す! と公言しているのだが、ケイン以外は他の目的があるように見えた。

 だが、こちらにとってもダンジョン探索に挑むパーティーを探していたわけで、まさに渡りに船。学者として、多少の伝手のあった太陽神の聖職者ソーンをライトが誘い、ここに冒険者パーティー【アイリス】は誕生した。


【アイリス】という名前は、【希望】を【信じる心】を持つパーティーという意味からライトが考えた。 ケイン達はこの名前の由来ににとても喜び、ライト自信も名前を認められて嬉しかった。


 五人のメンバーはバランスの良い編成を活かして、各地にある五ヶ所のダンジョンを探索し続けた。まずは、全てのダンジョンをある程度まで探索し、研究したいライトとの希望だった。また、そこには、情報をしっかり集めてからダンジョンの最奥に挑みたいと言う思いもあった。


 探索を続けるうちに、【アイリス】のパーティーとしての評価は上がり続け、それに伴い各人の等級がBランクになった。併せてパーティーランクもBランクになったのだ。



「ひととおり、ダンジョンも回ってパーティーも成長したし、そろそろ、一つずつダンジョンの最奥を目指して行きたい。」


 リーダーであるケインが、パーティー全員を前に切り出した。学者としてもダンジョンの秘密を解き明かしたい。ライトには異論はなかった。


 全会一致でダンジョンの最奥を目指す事は決まった。そして、先ずはリンカーアームというダンジョンの探索を始めようという事になる。



 この国は、悪しき神の倒れた身体でできていると伝えられており、そして悪しき神の力が溢れないように『瞳』『心臓』『右腕』『左腕』『脚』を、それぞれ封じ込めたと伝えられているダンジョンが5つ存在する。


 そのうちの一つ、「生者の魂を捕まえて離さない悪なる神の左腕」を封印していると伝わっているのがリンカーアーム=ダンジョンだ。

 このダンジョンの最奥を目指し、何度目かのアタックをしたその帰りに、件の白髪、白瞳の子供に出会ったのだ。



        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



「ケイン、君がダンジョンの最奥を目指して活動を始めようと決めたんじゃないのかい? パーティー全員で賛成して攻略を始めたばっかりだ。それなのに、君は戦う力の無い子供を連れて行きたいと言う。何故、そんな事を言い出すのか理解にくるしむよ……。」



――探索に足手纏いを連れて歩くなんて、いったい何を考えているんだ。


 ライトは苛立つ気持ちを努めて表情に出さずにケインに言った。


「態々、苦労を増やすようなものだよ。少年を専属ポーターにするなんてことは認められないよ。」


       

なるべく見やすい文章を心がけているつもりつですが、みなさんどうですか?ぜひ感想教えて下さい。

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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