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それぞれの現在地①


 しばらくギルマスの部屋で待っていると、フィリアが荷物を抱えながら部屋に戻ってきた。



「………お待たせしました。才能判定用の石板をお持ちしました。では、順番に――」


「あ〜っ! はい!はい!は〜いっ! ウチが最初にやりま〜す!」

「何それ、ウチが最初にやりたいっ!」

「そこは先輩であり、年上であるウチが先。ちゃんとお姉さんを敬って、少し我慢しなさい。」

「年上って、半年だけでしょっ! ナミがお姉さんだなんて、冗談でしょ!?」


 普段、口で負けてばかりのナミが、年上、先輩ムーブでナギに対して謎のマウント。珍しく力技で押し切ったナミは、見事に? 最初に才能判定をする事になった。


「――ふふっ、2人は相変わらずね。それじゃ、ナミちゃん、石板に手を置いてね。」


 以前と変わらぬ2人の少女のやりとりのおかげでやっと表情が綻んだフィリア。

 まだ納得のいっていないナギを見事にスルーして、ナミを相手にテキパキと石板の操作を行う。


 ブンっと黒髪白瞳の少女の手から魔力が流されると、石板に才能判定の結果が表示された。



「あらぁ、すごい。ナミちゃんの獣体術ってスキル、レベルが30にもなってるわっ! 達人も達人、その歳でこんなレベル、ヒロ君以外に見た事ないわよっ!」


 フィリアは数々の冒険者たちの才能判定に立ち会ってきたベテラン受付嬢である。そんな彼女が驚きの声をあげた。


 確か俺がまだ冒険者になりたての頃、彼女に「レベル10で達人クラス」と言われた事があったな。

 つまり、ナミは獣体術についてはすでに達人の域を悠に超えている。よほどの相手でなければ、彼女が接近戦で遅れをとることはないだろう。



         ▼


クラス  魔獣使い

才能1  キーパー(動物飼育)

才能2  ◾️◾️◾️/パペット(糸操り)

スキル  飼育   LV5

     テイマー LV10

     操り人形 LV5

     獣体術  LV30


         ▲



「ナミ、凄いじゃないか。近接戦闘においては俺も敵わないかもしれないな。まあ、それでも独りで魔物の群れに飛び込んでいくのはやめてほしいけどな。」


「――ええっ! なんでよっ! ウチのスキルのレベルを見れば、ウチがその辺の相手に負ける訳ないことはわかるでしょうにっ!」

「………まったく、猪女はこれだから困るのよね〜。三日月村が襲われていた時も、ヒーロ兄の指示を待たずに魔物の群れに突っ込んでいったし。いくら腕っぷしが強くても、あんなんじゃあ周りが大変なのよ。」

「はあっ!? あの時はちょっとでも早く救援に向かわなきゃならなかったでしょうが!?」

「それでもよ。ウチらがフォローしてなきゃ、最悪ナミが魔物に囲まれて、村の入り口に辿り着く前に、殺られてたかもしれないのよ。」

「………だから、ウチの獣体術ならあんな魔物に負けるわけないんだってば。今回の才能判定が証明してるでしょ!」

「これだから脳筋猪女は困るのよ。いくら腕っぷしが強くても、数で押されたらあの時のヒロ兄みたいになるでしょうが。」

「………む。」


 ああ、ついさっき、いつもと違ってナギを口で負かしたと思ったら、すっかり逆襲をくらっているようだ。

 ナミの口からは、「む」という言葉しか聞こえてこない。



「【アンチバリア】なんていう無敵のスキルを持ってるヒロ兄が、それでも危なく死ぬところだったのよ? わかる!? 1人でなんでもできるなんて思ったらダメってこと。」

「………ぐぬぬ………。」


「ほんと、脳筋猪ガサツ女が突っ走るもんだから、ヒーロ兄も大変よ。勿論、ウチもね。」

「にゅ〜………。」


 なんかどんどん悪口の数が増えてない?

 可哀想に、やり込められたナミの口からは、とうとう言葉ですらない、変な唸り声しか発せられなくなってしまった。


 そろそろ助け船をだすか――


「――ナギ、いい加減にしろ。ナミの獣体術が凄いのは確かだろう? 意地悪ばかり言ってないで、ナミ()()()を敬いなさい。」


「はぁっ――!? ナミ姉さんっ!?」


「あははっ! ヒーロ兄の言う通りっ! ちょっとは姉さんを敬いなさい! ね、ヒーロ兄っ!」


 紅い瞳を大きく見開いて憤慨するナギ。

 俺からの特大の援護射撃が効きすぎて、ナミは一気に元気を取り戻す。


 あんまりにもナギがナミにキツく当たっていたから、ちょっとからかってしまった。

 そうしたら、想像以上の拒否反応。

 2人のライバル意識をますます刺激してしまったようだ。


「なんでウチが妹扱いなのよっ! 」

「悔しかったら半年早く生まれてみなさいな。」

「そんなこと今からできる訳ないでしょっ!」

「そうよ、だからウチがお姉さん。理解したなら姉さんを敬いなさい。」

「ムカ〜っ! ヒーロ兄が変な事言うから、猪脳筋ガサツ女が調子に乗っちゃったじゃない!」


 やば………、なんか火に油を注いで掻き回したら、大爆発してしまった。

 ちょっとからかったくらいのつもりだったのに、自分の浅はかさに腹がたつ。


 パシンッ!

 パシンッ!


 収集がつかなくなってしまい、睨み合いを続ける2人の少女が、急に額を抑えてうずくまった。

 フィリアが2人の額にデコピンを喰らわせたのだ。


「――もう、2人ともいい加減にしなさい。スキルのレベルが上がっても、全然成長してないわよ。そんなんじゃ、大人の女性になれないわよっ!」


 小さな頃から2人を知るフィリア。

 2人が「大人」という言葉に反応することをよく知っている。さすが「大人の女性」だよね。



「――ヒーロさんも2人の対抗心を煽るような言葉は慎んでくださいっ! あなたもいい大人なんですからっ!」


「………は、はい。すいませんでした………。」


 いい大人が、大人の女性に怒られる。

 身体を縮こまらせながら、俺は何度もあたまをさげた――

 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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