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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第1章 ひとりぼっちの少年
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無口な重戦士、話す


「この子を【アイリス】の専属のポーターにしたい。みんな、なんとか認めてくれないか?」



 一週間ぶりにパーティーのメンバーが集まったというのに、開口一番、リーダーが驚く事を言い出した。


 すぐに反応したパーティーのヒーラーであるソーンが、その申し出に不満の意を示す。


「ちょっと、この子を専属のポーターにするなんて、どういう事? 私たちに相談もなく勝手に決めるなんて、どうかしてるわよ!?」


 正論である。


 我々【アイリス】は、ダンジョンの最奥を目指しているパーティーである。

 勿論、生活や装備の充実を計るために素材や魔石もある程度集めるが、それを中心に活動することは基本手にはやらないのだ。



――ましてや、ヴァンパイアと一緒に冒険などと……



 その少年は、白い髪に白い瞳、伝説として伝わる、悪なる神の眷属の一将、ヴァンパイアロードの特徴にそっくりだ。

 もし、それか、またはそれに近い存在だとしたら、パーティーは酷い危機に落ちいる可能性があり、生存率がかなり低いものになってしまうだろう……。



「――みんな、街の噂なんかに影響されすぎだ。ナナシはそんな存在じゃないよ。1人の普通の子供なんだ。」


 ケインは真剣な面持ちで語り続ける。



「みんな、どうにか認めてくれないか? 頼むよ。」


 深く頭を下げるケインの事を少年は悲しげな表情で見つめていた。そして、少年も同じく頭を下げた。



「なぁ、ケイン。お前は噂を信じるなと言うが、俺にはこの子の姿はどうしてもヴァンパイアに見える。だいたい、火の無い所に煙は立たん。この子が魔物の子供と噂されるには、やはり、それなりに理由があるはずだ。」


 冒険に不安要素はあってはならない。

 みんなが英雄になる前に、パーティーを全滅なんてさせるわけにはいかないのだ――



        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



 重戦士パーンは、パーティーのタンク役として、他のメンバーに攻撃が向かぬように、最前線にてパーティーの為の壁になるのが仕事である。


 生まれつき身体が大きかったパーンは、第一の才能に『不動』と言う攻撃に耐える為の才能を授かった。第二の才能も身体能力を上げるものであり、自然と冒険者になり、パーティーのタンク役についた。



――俺は仲間を護る盾。仲間は必ず俺が護る!



       ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



 パーンは【アイリス】に誘われる前、違うパーティーに所属していた。

 そのパーティーは、ダンジョンの最奥を目指しており、人数も10人と多い編成で、リーダーを中心に纏まりもよく、周辺からも大きな期待を寄せられてていた。


 彼等は順調に探索を繰り返し、ある日、この国の西にあるダンジョン=レッチェアームの地下30回にまで到達し、一つの部屋を見つけた。


 そこには、人の姿をした魔物がいた。

 人の姿で人語を話し、彼等に問いかけてきた。


 『君たちは、此処へ何をしに来たんだい。』


 突然の事に驚き、メンバーの誰もが返答できずにいると、その人の姿をした魔物は言葉を続けた。


『素材や魔石を手に入れるだけなら、上の階で充分だろ? さぁ、さっさとお帰りなさい。』


 丁寧だが、酷く冷たい声で言い放ち、部屋の奥へと戻ろうとする。



 「きっとこのダンジョンの主だ! 使徒に違いない!みんな、討ち取るぞっ!」


 リーダーが声をあげ、それに反応したメンバーがそれぞれの武器を手に魔物に突撃した。

 一瞬、反応が遅れた俺はパーティーの最前線に陣取るべく、慌てて盾を構え走り出そうとした――



『ウカ様の慈悲深い思いにも気付かず、ズカズカと土足でウカ様の眠りを汚す下郎共め!!なぜ、ウカ様はこんな者達の為に……!!』


 魔物がそう叫ぶや否や、突貫したメンバーが全員血を吹き出して倒れた。


 残ったメンバーは何が起きたかわからず、恐慌をきたし、我先と部屋の出口を目指し走り出す。

 俺も、前にでようと踏み出そうとした足を反転させ、必死に出口を目指す。

 無理だ、あんな化け物に勝てるわけない……



『ウカ様の慈悲を知らぬ愚かな者どもよ、さっさと帰るが良い。2度とウカ様の尊い思いを汚すなよ!!』


 人の姿をした化け物は追っては来なかった。

 見逃されたのだ……。



 なんとか、地上まで辿り着けたメンバー俺を含めて三人。俺は仲間を護れなかった……。


 その後、誰が言い出したのかパーティーは解散した――



       ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



「俺は反対だ。」



 無口なパーンが明確に反対の意見を唱えた為、ケインは閉口した。まさか、この男にはっきりと反対されるとは思っていなかったのだろう。


「冒険者パーティーに不安要素があってはならない」


――瞳の色は違えど、あの時の人語を話す魔物、ヴァンパイアロードに似た子供となど、一緒に冒険をするなど、考えられるわけがない……。



ウカ=悪しき神です。

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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