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機械人形、問いただす


 なんでこうなったんだろう………。

 まさかギルマスやフィリアさんにスパイと疑われるなんて。


「なんか、酷いことになっちゃったね………。」

「ギルマスもフィリアさんも、エントランスにいた冒険者たちも全員気絶させちゃったね。」


 なんとも形容し難い惨状に、ナギとナミも顔を引き攣らせている。


《 ご主人様を害そうとしたのです。この位の仕打ち、甘んじて受け入れるべきですわ。》


 日傘をクルクル回しながら、嘆きの妖精は澄まし顔だ。そんな彼女に、波の乙女と霜男も同調して頷いた。


「………俺もちょっと頭に血が昇っちまった………。でも、お前たち、ありがとな。」


 正直、精霊たちの連携は素晴らしかった。

 簡単な合図だけで、俺の考えた通りに動いてくれたし、3人の連携も素晴らしいものだったのだ。


《 ご主人様の【同調】の力ですね。ご主人様の考えが、私たちの頭に入って来ます。おそらく、私たちと長く行動していることで、その辺りの力もレベルが上がってるのでしょう。》

《 そりゃあ、久しぶりの才能判定が楽しみですね〜。》


 波の乙女が冷静に分析してくれた。

 なるほど、俺に授けられた才能が、こんな形でスキルアップしてるとは、嬉しいかぎりだ。

 ただ――


「――いや、でも、ギルマスたちをこんなにしちゃったし、才能判定してもらえるかどうか………。」


「そおだよね〜………。もしかしたら、冒険者登録もしてもらえないかも………。」

「え〜っ!? そんなの酷い………。」


《 ですです正当防衛です!! 》


 霜男が、コミカルな動きで抗議するが、ナギの言うように、疑いをかけられた状態では、冒険者登録などしてもらえる訳はない。


 どうしようか。


 冒険者ギルドとの関係が悪いと、ダンジョン=リンカーアームでの活動にも支障がでるであろうことは、容易に想像がつく。


 しかし、ギルマスって、あんな風に問答無用で襲ってくるような人だったか?

 フェンリルとも知り合いだし、森の女王の子供だし、俺の事をすでに知っていてもおかしくないのに。

 モヤモヤとした考えが、俺の頭の中をグルグルと回っていた――



           ♢



「………ん、んんん………。」


 俺がひたすら悩んでいると、さすがは長命種であるエルフの一族。誰よりも先にギルマスのサムが目を覚ました。



「――あのギルマスっ! あなたは確か、森の女王の御子息ですよねっ! 俺の事、森の女王から聞いていないんですか?」


 どうしても納得のいかない俺は、すぐさま疑問を解消するべくサムを問いただした。



「………んん………、なんの話だい? 君のことを聞いていないかって!? ていうか、あの人の事を知ってるってことは、君はナギさん、ナミさんの本当の仲間ってことなのか………。はぁ、また()()()は、私に何も知らせないで………。」


 苦しげに身体を起こしながら、サムは額に手を当てて大きなため息をついた。


「………あの人はいつもそうだ。フェンリルも何も連絡をよこさないし、どうしていつもいつも………。」


 ブツブツと苛立たしげに呟き続けるサム。

 どうやら、俺の事は全く伝えられていなかったらしい。それでも、ナギとナミが一緒にいたのに、俺が騙してるとかわけの訳の分からない事を言ってたしな。



「あの……、信じ難いとは思いますが、俺……ヒロです。アリウムの中にいたもう一人の人格なんです。」


「はあっ!?」


 そりゃそうだ。わかるよ。そういう反応になるさ。当たり前だよね。

 でも、ギルマスには俺たちがやろうとしていること。しっかり知っていてもらわなくてはならない。

 使徒たちに最も近い関係の彼は、俺たちの活動のサポートをしてもらわないとならないのだから。


 俺は魔物大行進(モンスターパレード)の後、俺たちが辿ってきた経緯を語ると、再び大きなため息をつくサム。


「なんだい!? あの後、そんな事になっていたのか。しかし、あの人は、やりっ放しで全く連絡をよこさないから………。フェンリルもフェンリルだ。一緒にいたなら私にちゃんと話てくれていれば………。」


 サムの言い分はもっともだろう。

 サムは歴史の裏を知る1人である。

 氷狼フェンリルとは長く協力体制を組んでいて、しかも、森の女王アエテルニタスの子なのだ。

 例え、通信技術が皆無であるこの世界だとしても、本来ならもっと事情を伝えられていて然るべきだろう。



「………すまないヒロ君。あの人たちは、いつもこうなんだよ。散々私を利用するくせに、肝心な事を伝えてよこさない………。まったく………。」


 またもやサムのブツブツタイムが始まった。

 察するに、このような事を何度も何度も繰り返されているのだろう。

 長命種たちのルーズさというか。時間に対する頓着の無さが周辺の関係者にはとんでもないストレスになるのだろうな。



「――俺たちも、まさかアリウムたちが王女と共に戦っているなんて全く知らなかったので、お互いに情報のやり取りが必要なようですね。」


 俺はサムに握手を求めながら声をかけた。

 予想外の乱闘騒ぎになってしまったが、ギルマスであるサムが事情を理解してくれた事でこの騒ぎも落ち着くだろう。

 

 ならば、これからの事だ。

 未来の話をしなくては。



「ギルマス、とりあえずこの騒動の収束をお願いします。それから――これから、混乱を避けるため、俺はヒーロと名乗ります――」

みなさんのリアクション、たいへん励みになります。ぜひ、みなさんの感想教えてください。よろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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