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機械人形、怒る


「ナギさん、ナミさん、その方は本当にあなた方のお仲間ですか? いつから? どこで知り合いました? ソーンさんやライト君が知っているというのは本当ですか?」


 実年齢をまったく感じさせない美男子が、矢継ぎ早に質問を繰り出す。

 カウンターの中にいたフィリアの左右には、いつの間にか弓矢を構えた冒険者がこちらに弓矢を向けている。


 周りを囲む冒険者たちは、それぞれ剣や槍、盾を構え、その後ろには魔術師らしき冒険者が詠唱を続けていた。



「ナギさん、ナミさん、あなた方、騙されていませんか?」


 ギルマスが厳しい表情のまま囲みの前に出た。



「そちらのような、覇気の無いの中年の男が、今更冒険者を目指すなどという話は聞いた事ありません。【デビルズヘブン】があなた方を利用して、王女陣営にスパイを紛れ込ませようとしてるのではありませんか?」


 なんと………、スパイ扱いとは。

 俺の本来の容姿は、ギルマスが言うように冴えない中年の男。だけど、たがらといって、おっさんが冒険者を目指してはいけないなんてのは、あまりに了見の狭い考えじゃないのか。

 

「あ、あの、おっさんが冒険者を目指すのはおかしなことですか?」


 思わず俺の口から出た言葉だが、まさにそれは本音である。

 この世界では、13歳で第2の才能を授かり、その才能によって自分の人生の道を選ぶのが常識だということは知っている。

 しかし、俺は努力によってなりたい者になれるという事も知っているのだ。

 だからこそ、年齢を理由に、冒険者になろうとする俺を、不審者として扱う旧知の知り合いたちに腹が立った。

 

「………ああ、おかしくは無いですね。不思議なだけです。でも、我々が違和感を感じている。それだけでも、あなたを疑う理由にはなる。」


 おいおいおい………。ギルマスってこんな石頭だったか? そんなイメージまったく無いんだが。

 


「何言ってるの? この人はヒーロ。私たちの仲間だってば!」

「そうよ! 何で疑われなきゃないの? 意味わかんないっ!」


「――お二人とも。申し訳ありませんが、今、この国は内戦状態。簡単に信用することはできないのです。」


 いや、その割には門番たちは簡単に街に入れたじゃないか。そんな緊張状態なんだとしたら、街に入れちゃダメじゃないのか?


「あの、ならなんで僕らを街に入れたんですか? リスクを排除するなら、まずはそこからでしょう?」


「人の行き来を制限などしたら国が貧しくなる。だが、あなたのようにおかしな行動を取る者を自由にさせておくことは出来ない。さあ、両手を頭つけてっ!、そして跪きなさいっ!」



 むかっ!


 ギルマスが命じてきたのは、まるで罪人に絶対服従させるポーズだ。争う気などなかった俺も、流石に頭に来た。

 こんな要求をするということは、対等に話をする気はないということだろう。


 ここで精霊剣は抜かない。


 武器を手にすれば、周りを囲む冒険者から矢が飛んでくるだろう。

 そうなれば、一緒にいるナギとナミが危険に晒される。

 しかし、さすがにスパイなどと一方的に言いがかりを受け続けるなんてこと、俺はもう我慢できなかった。


 俺は無言で水筒に魔力を流す――



《 ――ご主人様、承りました―― 》


 水筒から顔を出した波の乙女が両手を広げる。

 刹那、空中に5つの水球が浮かび、そのうちの2つがナギとナミの周りに壁を作った。

 以心伝心。

 波の乙女は、俺が考えた通り、ナギとナミの安全を第一に考えて行動してくれた。


「――水弾っ!」


 俺の号令が響くと、残る3つの水球がパンッと音を立てて弾ける。そして、小さな水の弾丸に姿を変えて周りの冒険者たちに向かって飛び出した。


「――フユキっ!」

《 ――はいなっ! 》


 リュックから顔を出した霜男が魔力を広げると、飛び出した水の弾丸が凍りの弾丸に変わる。

 

 パンパンパンパンッ!


 俺たちを囲む冒険者たちは、無数に別れた凍りの弾丸を浴び、次々と昏倒していく。

 撃ち抜くまでの威力はつけてはない。

 しかし、全身に氷の弾丸を浴びた冒険者たちは、しばらく動くことはできないだろう。



「――なんと! 精霊使いかっ!」


 さすがはギルマス。炎の精霊イフリートを召喚して氷の弾丸を無効化している。

 しかし、2人の精霊を同時に使役したことに相当驚いたのだろう。俺を驚愕の表情で睨みつけた。


「なぜ精霊を2人同時に……、そんな精霊使い、ヒロ君以外にもいるなんて………。」


 驚くギルマスの前に、いつの間にリュックから飛び出したのか、今度は傘にぶら下がった嘆きの妖精が現れる。



《 きいぃぃぃぃやあぁぁぁぁっっ!!! 》


 バンシーの叫び――よほどの精神耐性でもない限り、脳を震わすこの叫び声に耐えられる者はいないだろう。

 案の定、ギルマスを含め、冒険者ギルドのエントラホールにいた者たちは、白目を向いて気を失った。

 

「――ちょっと! いきなり驚くでしょうがっ!」

「もうっ! いくらミズハの水の障壁があっても、ヒンナの声は聞こえるんだからねっ!」

「ほんとよっ! あ〜あ、フィリアさんまで気絶してる。どうすんのよっ!」


「いやあ、ちょっと頭に来ちゃって………。でも、流石にあの態度は酷すぎだろ?」


 

 主人の意を汲み、完璧にクエストをこなした精霊たちは満足そうな顔をしている。

 しかし、俺は目の前に広がる状況と、俺を責める2人の少女の言葉に、さすがにやり過ぎたのかと冷や汗をかいていた。

みなさんのリアクション、たいへん励みになります。ぜひ、みなさんの感想教えてください。よろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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