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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第1章 ひとりぼっちの少年
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頑愚な聖職者、警戒する


 前回のダンジョンの長期探索から無事帰還したB級パーティー【アイリス】は、一週間の休養を取っていた。


 冒険者は、日銭を稼ぐ為に素材や魔石を集める短期探索を主に行う者と、ダンジョンの最奥を目指し長期にわたって探索する者とに分かれる。


 【アイリス】は、後者であり、太古の昔に封印された悪しき神の残光を発見し、これを完全に封印する事を目指している。


 これは、英雄を目指す冒険者の皆が目指す目標であり、これを成し遂げる事こそが善なる神々に使える聖職者達の目標でもあるのだ。


 よって、長期探索に挑む冒険者パーティーには、善なる神々を崇拝する為に、封印の才能を持つ聖職者が同行することが慣例となっている。



           ♢



 【アイリス】に所属するメンバーの1人、ソーンは、生まれながらに『封印』の才能を持つヒーラーであり、そして、善なる神々の1柱である太陽神を信奉する聖職者である。


 太陽神は、悪なる神の残光をダンジョンに封じた神の1人で、主たる三柱のうちの一柱である。

 その教えのひとつに『悪なる神の完全なる浄化』を目指すという目的が記されており、悪なる神の眷属を滅ぼすこともまた、その教義とされている。



 ソーンは、太陽神の信徒である両親に、繰り返しその教えを聴かされ、教義に沿って、厳しく育てられてきた。


 他の様々な価値観を知ることのないままに――

 


      ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽



 その日、その少年は、リーダーに連れてられて私達の前にやって来た……。


 白い髪、白い瞳、小柄な身体つき。


 腰には、手作りの木の棒と麻袋をさげ、所在無さげに手で動かしている。


 見るからに自信なさげなその少年は、前回のダンジョン探索からの帰還の途中、なぜか1人でうずくまっていたところに出会し、助けた少年だった。



           ♢



 その少年は、同行していた冒険者にダンジョンの裂け目へ突き落とされたという。だが、あの高さから落下して生きていられる者など存在するのだろうか?

 さらに驚くことに、その少年の身体には傷ひとつ無かった。


 そして、魔物が跋扈するダンジョンの中を独力で歩いて来たと言う。


 我々冒険者であっても、1人でダンジョンを歩くなんて事は、相当の実力があったとしても危険すぎて、とてもじゃないが、やろうとする者はほとんどいない。



 そんなことできる子供がいるの?


 いるわけないでしょ――



 少年の姿に困惑している私の横で、重戦士のパーンが「ヴァンパイアか?」と呟いた。


 そうだ、思い出した。

 街で噂されている、魔物の子供。

 嫌われ者の 化け物。



 私は、考えた。

 もしかして、この子は悪しき神の使徒なのではないのか。



――こんな場所を平気で歩ける人の子なんている訳ない。 


 リーダーはこの魔物の子を助けると言う。



――嘘でしょ? 魔物の子供かもしれないのに


 噂だけを信じて、少年を魔物の子供であると決めつけるわけにもいかず、結局、ダンジョンの外まで送り届けることになった。


 無事に少年を見送った後、最後まで警戒していた私はみんなに言ったのだ、


「あの子、街で魔物の子供って噂されてる子よ?助ける事なんてなかったのに…。」




        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽




「ちょっと、この子を専属のポーターにするなんて、どういう事? 私たちに相談もなく勝手に決めるなんて、どうかしてるわよ!?」



 パーティーのリーダーであるケインが、少年を連れてきて、『アイリス』専属のポーターにしたいと言い出したのだ。


 いったい、どう言うつもりでこんな事を言いだしたのか……。


 私は、魔物の子供と一緒に冒険なんて、絶対受け入れることはできない。


 そこから、五人の長い話し合いが始まった――



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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