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姫と英雄④


           ♢



「さて……、これからどうしましょうか。」


 リンカータウンの冒険者ギルドの一室。

 グランドマスター代理となっているヒルダが、集まったメンバーに切り出した。

 

 部屋に集まっているのは、リンカータウンの冒険者ギルドのギルド長であるサム、受付嬢のフィリア。

 さらに、襲われた王女を救い、この街まで護衛してきたチーム【アリウム】の大人メンバー、魔術師ライト、聖職者ソーン、竜騎士ギース、長剣使いハルク。そして、絶対防御の英雄アリウム。

   

 アリウム自身は、英雄と呼ばれることに抵抗があるようだが、フィリア曰く、リンカータウンを魔物大行進(モンスターパレード)から救った人物として、すでに超がつく有名人なのだそうだ。

 そこに、アリウムに付き従う2人のチンピラ……もとい、冒険者が『絶対防御』なんていう二つ名をつけたらしい。


 『白髪、白瞳の魔物の子』、『化け物』などと言われ、石を投げつけられていた少年が――である。

 『名無しのナナシ』であった頃、散々罵り、蔑んだ街の住民が――だ。


 このリンカータウンという街は、どれだけの苦しみや悲しみを少年に与えただろう。

 そんな事があった事は、綺麗さっぱり忘れてしまったのか、この街の住人たちは、『絶対防御の英雄』と呼び、あの頃では考えられないほど、持ち上げられている………。



「しっかし、アリウムさんが、まさか冒険者ギルドのお偉いさんと知り合いだとは………、恐れ入りやす。」

「ああ、グランドマスター代理てことは、この国の冒険者ギルドのトップってことだろ?」


「………あの………、先代が後継を指名していなかったので、新しいグランドマスターが決まるまでの代理というだけです。」


「つか、グラマス代理ってことは、俺たちの事も知ってるってことだよな。」


「ええ。【デビルズヘブン】を抜け、国とギルドにアジトの場所の情報を提供してくれたチーム【ダリア】の方々でしたね。ご無事で良かった。」


「ああ、アリウムさんたちのおかげで命を拾うことができた。まあ、腕は一本無くしちまったがよ………。」

「………ヅーラもな………。」


「確か、あなた方は3人パーティーでしたね。」


「ヅーラは死んだよ。刺客に襲われて。アリウムさんたちが助けてくれなきゃ、俺たちもあの世行きだったろうぜ。」

「ああ、【絶対防御の英雄】殿がいなけりゃ、俺たちは此処には居ない。」

「ヅーラの為にも、【絶対防御の英雄】アリウム。俺たちは、このお方と一緒に【デビルズヘブン】を潰す。」


 チンピラ3人組の生き残りであるアークとニーン。

 二人は孤児院時代からの仲間を亡くしたにも関わらず、悲しむそぶりを見せない。その目にはハッキリと、この先の目標を見据えているようだ。



「――その……【絶対防御の英雄】ってのは、アリウム君のことなのよね? 」


 聞き慣れない二つ名を連呼され、ソーンが説明を求めた。

 それもそうだろう。今まで一緒に活動しながら、アリウムがそんな二つ名で呼ばれることなど無かったわけで、それなのに、リンカータウンでは、街の住民までがアリウムの事を【白髪の勇者】とか、【救国の英雄】とか、兎に角、この街の英雄として扱われているのだから。


 王女を馬鹿にしていた門番たちも、アリウムが姿を現した時は、まるで憧れの存在を見るように、目を輝かせていたのだ。大の大人だというのにも関わらずだ。

 


「ええ、ええ、その通りでさ。俺たちみたいなはみ出し者が心を入れ替えたのも、英雄殿のおかげなんでさ。あの魔物大行進(モンパレ)の時の兄ちゃんの活躍。俺たちの腐っていた性根は、あの時、生まれ変わったんでさ。」

「ああ、俺たちは英雄にはなれないが、世の中の為に死ぬことはできる。だから、ヅーラも後悔していないはずだ。」


 目の前にいるのは悪人面の二人だが、アリウムを憧れの目でみる大の大人の筆頭だ。

 【絶対防御の英雄】という二つ名も、彼らが散々喧伝しているらしい。

 熱にうなされたようにアリウムの凄さを語る2人だったが、それを面白くなさそうに見つめている人物がいた。

 冒険者ギルドの受付嬢、フィリアだ。



「――あの………、あなた方、ヒロ君………、じゃない、アリウム君に対して散々酷いことをしていましたよね!? 彼がポーターをしていた頃、ダンジョンの裂け目に突き落としたのもあなた方ですよね!? そんなあなた方がどの面下げてアリウム君と一緒に居ようとしてるんですか!」


 ファリアは受付嬢だ。

 冒険者と違い、体力も無ければ戦う力もない。

 しかし、白髪の少年がまだ冒険者になる前から彼の事を知っている。

 街の中で孤立し、散々虐められていたことも、目の前にいる悪人面の2人に散々嫌がらせを受け、命の危機にまで晒されたことも知っている。だって――

 

「私はリンカータウンの冒険者ギルドの受付嬢です。全部………、全部知っているのですよ?」


 突然の大声に、その場は静まり返った。

 おそらくこの場にいる中、彼女はただ一人のか弱い一般人である。

 そんな彼女が、浮かれるチンピラ冒険者に啖呵を切っている。

 

「それなのに、あなた方はよくもまあ、アリウム君を持ち上げて………。恥を知りなさいっ!」


 フィリアの一喝に、アークとニーンのニヤけてだらしない顔は、一気に強面の顔に変わった――

 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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