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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第1章 ひとりぼっちの少年
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見習い冒険者、木の棒を振る

 

 ケインさんにお世話になるようになってから、今日で3日目。今日は、ケインさんが剣の振り方を教えてくれると言う。



 昨日の夜の事。


 ユウさんと別れ、ケインさんの部屋に帰ってからケインさんが話してくれた。



「俺たち『アイリス』は、この国にある5つのダンジョンを順番に回って功績を上げ、A級パーティーに昇格することを目指しているんだ。そして、実は、今はこの間の探索の後の休暇という形になっているんだ。だから、こうしてお前に付きっきりでいられるのもあと3日程しかない……。」



――それはそうさ。当たり前な事さ。


 目標をもって活動している冒険者の邪魔なんてできないよ。



――俺みたいなのが、B級冒険者とずっと居られるわけがないじゃないか。 


 俺はなんの取り柄もない子供なんだもの。



「――そうですか。わかってます。充分良くしていただいてます。これ以上は望むべくもありませんよ……。」


 勤めて明るく話はしたつもりだが、顔に落胆の色が出てしまった……。

 そりゃそうだよね……。だって、本当に離れたくないって思ってしまったんだもの……。




「――そこでだ。実は俺は、お前を『アイリス』の専属ポーターとしてみんなに推薦しようと考えているんだ。」



 えっ!? ほんとに?? そんなこと、期待して良いの!?



 今まで、ナナシは孤児院でいじめられ、街で疎まれて、ずっと一人で生きて来た。

 俺自信には俺だった前世の頃の家族との記憶があるが、ナナシとしては家族の記憶なんか全く無かった。


 そんなナナシを……俺をパーティーに同行させてくれる? しかも専属で?

 

 こんな嬉しい事があるだろうか!!


 仲間と一緒に冒険できるなんて夢のようだよ!



「――ただな、この前話したように、【アイリス】の俺以外のメンバーは、少しお前に対して偏見があるんだ……。だから、推薦すり理由をしっかり固める為に、お前には、自分の身を自分で守れるようになって欲しい。」



――偏見……か……。



「ナナシには第一の才能があるから、防御面は大丈夫だと思うが、それにばかり頼っていては成長できないだろう。だから、最低限の戦う力をつけて欲しい。ナナシは木刀をもっていたよな?短い時間だけど剣の使い方を教えていこうと思う。」



――ケインさんに剣の使い方を教われる。こんなありがたい話は2度とないかもしれない! しかも、ケインさんとまだまだ、一緒に居られるかもしれないんだっ!




 俺の期待は膨らんだ。――しかし、その一方で、上手くいかなかった時の不安もまた膨らんでいたんだ……




        ▲▽ ▲▽ ▲▽ ▲▽




「お前まだ身体ができてないから、お前の持っていた木の棒はちょうどいい。振り負けしないように、しっかり基本の型を繰り返してみろ。」


 ケインさんが見本をみせてくれる。

 最小限の動きで、剣を振り切っている。

 経験も才能もない俺がみても感じことができる。

 

――あぁ、俺もあんな風に俺も剣が振ることができたら……


 上段からの袈裟斬り

 中段からの薙ぎ払い

 下段からの逆袈裟斬り

 正面からの付き


 これを左右対象、正面付きの順序に繰り返す。


 剣など持ったこともなかった俺は、10回も繰り返すと腕が鉛のように重くなり、まともに振れなくなってしまう。


「はぁっ、はぁっ、むぐぐ……。」


 あっという間に限界が来てしまった。


「なんだナナシ、もう限界か? そんなんじゃ魔物を倒すことなんてできないぞ? ほらっ! もう少し頑張れっ!」


 もう一度初めから基本の型を繰り返す。

 すでに限界を超えていて、誰でも容易に棒を捕まえられるような速さだ。

 


――こんな風に応援されてことなんて、いつ以来だろう。



 棒を握る力も限界になっているが、まだまだ頑張れる! いや、頑張る!


「よし、それくらいでやめておけ。もう腕も上がらないだろ? これは基本の基本だ。 ナナシ、強くなりたいなら、しっかりと身につけるんだぞ!」



 その日から、棒振りが僕の日課になった。



 




コツコツ開始!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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