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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第8章 約束と願望、目的と目標
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絶対防御の勇者②


 街道を歩きながら、アリウムは、自分のスキルについて考え続けている。


 ヒロの魂が離れたことで、自分には自身の才能のみが残ることとなった。

 アリウムの一番の強みは、なんといっても第一の才能【アンチ】に起因するスキル【障壁】。

 だいぶ前に石板で計測した際は、すでにレベルが99にまで上がっていて、その後も常に使い続けている事を考えれば、さらにレベルが上がっている可能性は高い。もっとも、レベルに上限が無ければという話になるが。


 アンチバリアと名付けたこの【障壁】が、自分が立ち回る際の中心となる。

 生まれた瞬間から発動していたらしいこの【障壁】。

 固い――という表現が正しいのかわからないが、全てのものを拒むこの力は、現在に至るまで、アリウムを常に守り続けた。

 

 とんでもない高さから突き落とされても、無数のオークに押しつぶされても、アリウム自身には傷をつける事なく、その身を守り抜く力。


 まさに絶対防御――


 しかし、このスキルは、防御にこそ絶対的な力を誇るが、相手に攻撃をする際には、基本的に役に立たない。

 常に専守防衛でいては、これからやろうとしている『デビルズヘブン』の壊滅作戦など、成し遂げることは難しいだろう。

 

 『攻撃手段を持つ』


 ダンジョン=インビジブルシーラでの特訓をしながら、常に考え続けていたことだ。

 頼りになる仲間たちが周りにいれば、自分は専守防衛で良いかもしれない。

 だが、もし、自分の代わりに敵を倒してくれる仲間がいなければ………。もし、そんな仲間がピンチに陥ってしまったら………。ただ守り続けるだけでは解決できないだろう。


 鬼ヶ島での戦いがそうだった気がする。

 自分は防御にかかりっきりで、ヒロのピンチには駆けつけられなかった。

 自分の代わりにヒロを救った鬼神王は、その身を盾にして死んだ。

 自分に巨木トレントを倒し切るような力があったならば、ヒロが窮地に追い込まれる事を防ぎ、鬼神王がその身を犠牲にする選択を防げたかもしれない。

 そう考えると、悔しくてしょうがないのだ。


 さらに、今、アリウムはヒロから離れ、アークとニーンと共に行動することを選んだ。


 つまり、いつだってそばに一緒に居てくれて、自分の進むべき道標になってくれていた『魂の片割れ』は居ないのだ。

 

 首都に行けば、頼もしい仲間たちと合流できるだろう。

 彼らなら、きっと自分に足りない部分を埋めてくれる。それでこそ仲間であり、自分も仲間たちの足りない部分を補う存在でありたいと思っている。


 しかし、そこに甘えるだけでは成長はない。

 自分の役割を増やす。

 それこそが、『英雄になれ』という大事な大事な仲間の期待に応える道の一つだと思った。

 


「もうちょっとでできそうなんだけど……。」


 ヒロと一心同体だった時、ヒロの才能とスキルを何度も体験した。


 彼の第三の才能【ムービング】とスキル【操作】。

 自分の持つ、障壁を変化させる能力と、これらを組み合わせる事ができれば、【障壁】というスキルも防御専用ではなくなる。そう考えて、練習を続けてきた。


 まずは【障壁】の形状変化を極める。

 【障壁】に弾力を与えたり、薄く引き伸ばしたり。さらに、圧縮して密度を高めたり。

 ヒロが科学と呼んでいた、不思議な知識も役に立つ。

 精霊たちの力を組み合わせて使うなんてこと、普通は思いつかないだろうし、その中でも【水蒸気爆発】なんていう凶悪な爆発を作り出した時は心底驚いた。

 ヒロ自身が言っていたように、こことは全く違う世界から来たのだろう。この世界のの常識では想像つかないような考え方は、アリウムに大きく影響を与えている。

 

 ただ、今の所は、先の戦いでやったように、【障壁】の塊を浮かべて落とすことしかできていない。

 これだって、重力とかいうヒロの知識の中から、取り入れようとした結果なのだが、まぁ、あれでは使える状況も限定的すぎて、役に立つ場面を作り出す事が難しい。

 やはり、スキル【操作】を使いこなし、【障壁】を武器として使えるようにしないと、自身の攻撃方法としては役に立たないだろう。


 だが、アリウムはそんな状況でも、まったく悲観していなかった。

 魂の片割れであるヒロが教えてくれたのだ。

 努力を続けていれば、望むスキルもいつかは見つけることができると。

 なんていっても、ヒロ自身が、その尊敬する優しい剣士の言葉を信じて努力を続けていたことを示してくれたのだ。


 幸いなことに、ヒロの持っていた第一の才能【エンパシー】とスキル【共有】は、アリウム自身にもヒロがやり続けた事を追体験させてくれていた。

 魂の奥に引き篭もり、全てを拒絶していた時、ヒロを通した全ての経験が、アリウムにも還元されていたのだ。

 そのおかげで、それらのスキルを何度も体験したアリウムには、同じように感覚が残っている。

 もちろん、見様見真似でスキルを使いこなせるわけはない。

 それこそ、実際に自分の身体、頭を使ってやり続けてこそ、自分のものとなるのだ。


 だからこそ、スキルを使う感覚を覚えているうちに、繰り返し練習するのみ。

 きっとスキルの種はアリウムに生まれている。

 あとは、水をやり、養分を与えて、スキルの花を咲かせるだけだ。

 

 そうさ、絶対に身につけてみせる――

 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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