見習い冒険者、イロハを学ぶ
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次の日、ケインさんは、『アイリス』の仲間であるユウさんを紹介してくれた。
彼女はレンジャーというクラスについていて、素材探しや植物採集、地図作成など、冒険に必要な様々な分野に明るかった。
ケインさんだけでは、薬草のなどの知識はあまり教えられないとの事で、無理を言って来てもらったようだ。
「ケイン……、あなた、休みの間、私たちの前に顔を出さないと思ったら、魔物の……じゃない、この間の子供に御執心だったのね? みんなにバレたらなんて言われるやら……。」
呆れたような顔でケインさんと話すユウさん。なんとなく、俺に対してあまり良い印象では無さそうだ。
「悪いなユウ。俺じゃ教えられない分野なんだ。なんとかナナシを独り立ちさせてやりたい。……頼むよ……。」
「――はいはい。私はケインに頭を下げられて、断るような薄情者ではありませんからね。簡単な知識だけなら、教えてあげるよ。ナナシ君だっけ? 改めてよろしく頼むわね。」
俺は深く頭を下げた……が、お願いします、と言いきる前に、ユウさんはさっさと外へと歩いて行ってしまった。
「ほら、さっさと行くよ! ケインも早くっ!」
――なんか、あまり協力的じゃなさそうだけど、
教えて貰えるなら、なんとか覚えてみせる。
そう決意して、俺は小走りにユウさんの後を追いかけた。
♢
ユウさんの教えてくれる知識は実践的で、俺にとって、とてもありがたいものだった。
マッピングの方法のようにダンジョンの中で使う知識だけではなく、原っぱや森で見つけられる薬草や素材になる植物の種類や採取方法。火の起こし方や縄の結び方、簡単な罠の使用方法などの豊富なサバイバルの知識。そして、テントを張るべき場所の選定や、水の蒸留方法など、自分では全く知らなかった知識のオンパレードだった。
レンジャーという仕事がいかにパーティーの中で重要なものであるかを実感することができた。
どうしても、冒険者の中では戦闘に向いた派手な才能が重視されがちだが、パーティーにかならずレンジャーが居る意味がよくわかる。
おそらく、レンジャーが居なければ長期の探索などは、立ち行かなくなることだろう。
「何度も教えないからね。ケインの頼みじゃなかったら、こんな事したりしないんだからね。」
俺は必死にメモをとった。
俺が生きていく上で、必ず役に立つ知識である。
もう、二度とこんなチャンス無いかもしれない。
――知識はその者の武器である。
凄い良い言葉だ。ユウさんの豊富な知識量に圧倒された。この知識でパーティー支えてきたのだろう。俺のメモ帳は、あっという間に貴重なじょうほの宝庫になっていく。
それにしても、こんな風に言葉どおりの事を実践してきたケインさんは、やっぱり凄い人だ!
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