いじめられっ子、荷物持ちをする
少しずつ手直ししています。
僕は12歳らしい。らしいというのは、誰も僕の誕生日を知らないからだ。
冒険者になるには13歳になり、冒険者ギルドに登録しないと冒険者として仕事はできない事になっている。
「冒険者になって、早く孤児院から出てやるんだ。」
口癖のように繰り返す僕だけど、現実は甘く無い。街で石を投げられるだけでなく、実は孤児院の中でもいじめられている。
容姿のこともあるが、それに加えて、常に悩まされている頭痛のせいで、白を通り越して、いつも青い顔をしていた。
ただでさえ余裕のない環境の中で、いつでもしかめっ面して愛想のない僕に対し、孤児院の仲間だけではなく、孤児院を管理している大人達すらも、とても冷たかった。
もちろん、なんとかみんなと上手くやりたいとは思っていたけど、一度いじめの対象になってしまうと、その対象からはなかなか抜け出せないものだ。
だからこそ、早く冒険者になってこの環境から抜け出したい。そういう気持ちが大きかったんだ。
♢
世の中には、『ポーター』という仕事がある。
冒険者達が雇う荷物持ちのことだ。
ダンジョンに潜る冒険者達は、集めた素材や魔石などを運び出す為、ポーターと呼ばれる荷物持ちを雇うことが多い。
僕は、孤児院でも年長になっている為、アルバイトをして孤児院の経営を助けなくてはならなかったのだが、冒険者の近くにいられるこの仕事を喜んで選んだ。
13歳にならないと冒険者にはなれないが、冒険者に直接雇ってもらえれば、ダンジョンなどについて行くことができる。
なので僕は、いつも冒険者ギルドの前の広場で、荷物持ちのポーターを募集してる冒険者がいないか、声をかけていた。
冒険者にとっては、子供ならば安い賃金で雇える労働力になるし、冒険者を管理している冒険者ギルドとしても、若いうちから冒険者の見習いのような形で経験を詰ませることができる為、ポーターという仕事を容認していた。
「荷物持ちが必要な冒険者はいませんか? か、身体は小さいですが、力と体力には自信がありますよ!」
「ちょうどいい、お前、俺たちについてこいよ。日帰りの荷物持ちで、報酬は銅貨25枚でどうだ?」
ラッキーなことに、声を上げ始めて直ぐに、三人組の冒険者に声をかけてもらえた。
銅貨1枚でパンが2個は買えるのだ。日帰りの仕事で子供に払う報酬としては、この金額は、かなり美味しい報酬だ。
「ぜ、ぜひ、ご一緒させてくだい。よろしくお願いします。」
「おう、しっかり着いてこいよ。くくく……。」
僕は、自前の大きなリュックを背負い直し、三人の冒険者の後について、ダンジョンへと向かうことになったんだ――