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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第8章 約束と願望、目的と目標
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悪なる神と冒険者①


「いや、だって……。使徒からの招待がなければ、そう簡単に使徒に会うのも、魔力核の所に行き着くのも、難しいんじゃないの?」

「そうだよ。だから歴史上、使徒を倒して魔力核を壊した英雄はいないんでしょ?」


 魔石が散らばる9階フロアを歩きながら、ナギとナミが疑問を口にする。

 確かに、氷狼フェンリルも吸血鬼王ブラドも、そんなことを言っていたと思う。古竜王ゴズに会った時も、竜人族であるギースの案内のおかげで簡単に会えただけだ。


「でも、ケインさん達は吸血鬼王の元に辿り着いていたし、鬼神王やドワーフ王は、狐憑きの襲撃によってダンジョンを奪われて、ウカ神の魔力核は壊されている――」


 使徒の招待がなければ使徒の部屋に辿り着かないということはないのだ。ただ困難になるだけ。

 ダンジョン深く隠された使徒の部屋は、探し続けていれば、やがて見つけられるようにできている。

 それこそが、【試練】のダンジョンとしての在り方。

 


「――だから、ちゃんとした実力者であれば、使徒の部屋には辿り着けるようになっているはずだ。」


 大量の上級種のドラゴンを倒せる実力者。

 ならば、すでに古竜王たちの元に辿り着いついてもおかしくない。



「――もしかしたら、すでに古竜王と戦っているかもしれない。」


 ニールの目が細められる。

 言葉はなくとも、ニールのイライラが感じとれた。


「ニールの為にも、早く古竜王の所に行って、何が起きているのか確かめなくちゃな。」


 パーティー全員の歩く速さが自然と上がった。

 漠然とした不安が俺たちを包んでいる。

 謎の光の柱、魔物が出現しないダンジョン、そして、フロアに散らばる大量の魔石………。どれを取って謎ばかり。

 

( ほんと………どうなってるんだよ………。)


 またこの言葉を使ってしまう。

 だが、これこそが本音。

 精霊剣を握る手に力が入る。

 

「ニール、あんたの親たちと、なんか連絡取れないの?」


 ナミがニールに話しかけるが、ニールは首を横に振るだけだ。まぁ、連絡が取れるなら、こんな風にダンジョンを深く潜らなくて済んでいるのはわかっている。以前に来た時は、地下一階の段階で使徒の部屋に招待されたのだから。


 ということは、だ。

 古竜王たちは、俺たちの来訪に気づいていない。もしくは、気づいていても、簡単に招待できない事情があることになる。


「確か、ハルクは地下30階まで降りても使徒の部屋には辿り着けなかったと言っていたはずだ。まずは、急いで地下30階を目指す。」


 急ぎたい。しかし、ここはダンジョン。たとえ魔物が出現しないとしても、迷路のような通路は、下に向かう階段を探すのにも時間がかかる。

 焦る気持ちをなんとか抑え、一歩一歩進んでいく。



           ♢



「………ここも、魔石が散らばってる。」


 先頭を歩くナギがため息をつく。

 やっと地下25階まで降りてきたのだが、相変わらず魔物は出現せず、床に大量の魔石が転がっていた。

 

 正確に数を数えたわけでわないが、100個はゆうに超えている。

 その転がっている魔石の数だけ魔物が死んでいるということになるのだが、竜種相手にそんなことができるものなのか?


 俺たちは竜種と戦った事はない。

 しかし、4体の古竜たちと会った時の圧倒的な存在感を思えば、最強種と呼ばれることに何の疑問も持ちはしないのだ。

 それほどの力を感じたし、冒険者たちが目標とするのも納得できる。


 しかし、おそらく上級種の竜種相手に問題なく倒して歩ける冒険者がいる。

 もしかしたら、この世界の英雄と呼ばれるほどの実力の持ち主が。


「やっぱり古竜王を倒すのが目的かしら?」

「それってめっちゃやばいんじゃない?」

「だよね。敵になる可能性もあるし?」


 彼女たちの言う通りだろう。

 どんな輩がドラゴンを倒しまくっているのか、まったくわからないのだ。最低限、相手が敵じゃないと確認できるまでは、油断せずに進むべきだろう。


「古竜王からの連絡もないし、油断できないな。みんな、最大限、注意しながら進もう。」


 

 俺はもともとは、ニールがいれば古竜王からすぐに部屋へ招待されると思っていた。

 それが、光の柱が街を吹き飛ばし、ダンジョンの中は魔石だらけで不思議な状態。結局は自分たちで古竜王の部屋を探す羽目に………。



「――ん!?」


「どうしたの? ヒロ君。」


 俺は突然震えが止まらなくなった。

 アメワが不思議そうに俺の顔を覗きこむ。

 

「…………。」


 震えのせいで、精霊剣がカタカタと音を立てる。

 あまりに狼狽する俺の姿に、少女たちが首を傾げた。

 


「…………もしかして、あの光の柱を生み出したのも、今、ダンジョンでドラゴンたちを倒しまくっている奴だったりして………。」


 あまりにも桁外れの現象だった為、今の今まで結びつけて考えることをしなかった。

 しかし、だ。

 よくよく考えてみると、街を吹き飛ばすほどの力の持ち主ならば、簡単に竜種を倒しまくることができる事も納得できてしまう。


 もしそうだとしたら――



「「…………。」」


 俺の口にした唐突にも思える疑問。

 パーティーメンバー全員にとって、その疑問に対して納得できるものがあっだのだろう。歩みを進めていたメンバーの足が止まった。



「………そんな………。あんな大災害みたいな事を人が起こしたというの?」


 そんな事はない、とは言えずに、メンバー全員が頭を抱えることになった。



 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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