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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第8章 約束と願望、目的と目標
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転がる魔石


「………どうなってるんだ?」


 今回の旅と冒険、何度同じような言葉を口にしただろうか。

 

 地下9階。階段を下り、フロアへと足を踏み入れた先に広がる光景。そこには大量の魔石が散らばっていた。


「魔石……だよね?」

「魔石……だね。」


 ナギとナミは、拾い上げて確認している。

 確かにそれらは魔石で間違いない。

 

「これって、魔物が倒されたってことよね?」

「魔石が落ちてるってことはそうなるな。」


 光の柱の影響だろうか。

 しかし、このフロアに来るまでの間、どこにもこんな状態の場所は無かった。魔石どころか魔物の気配すら全く無く、あまりにも簡単にここまで来てしまったのだから。


「ダンジョン=ファーマスフーサには、たしか竜種の魔物が出るはずよね。」


「ああ。でも、フーサタウンでの出来事から想像するに、竜種の魔物の出現がほとんど無くなっていたんだと思うんだが………。」


「そうね。一攫千金や称号狙いの人たちがニールを見て狂乱していたのは、ダンジョン内の竜種が狩り尽くされたからでしょうね。」


「本来なら、古竜王たちがダンジョン内の魔物の数の調整とかしていたんだろうけど………。そこが上手くいかなかったんだろう。」



 アメワと会話をしながら、現状を整理してみる。

 

 卵強奪事件のせいで、焦った古竜王たちが劣等種(レッサー)のドラゴンを大量に出現させてしまい、そこに冒険者たちが殺到してしまったのがドラゴンフィーバーの始まりだ。

 俺たちがニールを古竜王のところまで連れ帰ったことにより、その騒ぎは治まったはずだ。

 

 しかし、その後、古竜王たちは極端に竜種の発生を抑えてしまったのだろう。

 夢のようなドラゴンフィーバーが終わり、街の景気も一気に冷え込んでしまったのだ。

 街の人々はあの熱狂を忘れることができず、再びドラゴンフィーバーが起こることを夢見続けていたのだろう。ニールを見る目は、まさに正気を失った狂人のそれであった。


 しかし、なんでそこまで竜種の出現量を減らしてしまったのだろうか。

 フーサタウンの様子は明らかにおかしかった。

 多少なりとも竜種が出現していれば、ドラゴンフィーバー前の街に戻るだけのことのはず。

 冒険者だって、他の街から殺到した連中が帰ったとしても、元からフーサタウンで活動していた冒険者たちが残り、また普段通りの日常になるだけなのだ。


 でも、そうはなっていない。

 何故か………。それは、地下8階までの間、1匹も魔物に出会わなかったことが答えではないだろうか。

 

 ランクの高い冒険者ならば、地下深く潜ることも可能だろう。だが、ランクの低い、実力もまだまだな冒険者は、浅い階での探索しかできない。

 そうなると、ドラゴンフィーバーを聞きつけて、有象無象集まった冒険者たちが楽に稼ごうと思えば、浅い階層で劣等種(レッサー)ドラゴンを相手に多勢で囲み倒す。安全で効率よく稼ぐにはこれが一番だろう。

 もしかしたら、街をあげて組織的に狩りをしていたのかもしれない。そうすれば、フーサの街は潤い、参加した冒険者たちも苦労少なく利益が得られる。

 

「………いずれにせよ、この階まで来なきゃ、ドラゴンと戦えなかったのかもな。深く潜るとリスクも大きくなる。それで景気も悪くなったのだろう。」


 

 それとは別に、地下9階のフロアに大量の魔石が転がっているのは何故だろうか。


 ダンジョン産の魔物は、倒せば魔石を落とす。

 これはこの世界の常識だ。

 ということは、だ。このフロアに至るまで全く発生していなかった魔物が、この階には居た事になる。

 しかも、大量に、だ。


 

「こんなにたくさんの魔物が倒されたの?」

「このダンジョンの魔物って竜種でしょ? それをこんな数倒せるって、どんな凄い冒険者なの?」


 ナギとナミが驚くのは当たり前だろう。

 それほどこの世界の竜種は強いのだ。

 最強種と呼ばれる古竜ほどではないにせよ、ドラゴンという魔物は、そう簡単に倒せる魔物ではない。

 だからこそ、上級種のドラゴンを倒せば【ドラゴンスレイヤー】なる称号を授かり、一生の誉れとされるのだ。

 


「………おかしいわ。だって、冒険者なら、魔物が落とした魔石を放って置くわけないもの。」


 アメワが指摘した通り、冒険者ならその功績の証拠に魔石を持ち帰るはず。それが討伐証明になり、財産となるのだ。


「うん。しかもこの大きさの魔石………、どう考えても劣等種(レッサー)じゃない。上級種の魔石だよな。」


 そうなのだ。目の前に大量に転がっている魔石はデカい。ゴブリンなどの魔石は小石程度だが、ここには拳よりも大きな魔石がゴロゴロ落ちている。

 これがドラゴンのものとして、もし劣等種(レッサー)ではここまで大きな魔石ではない。それほどの大きさの魔石なのだ。


「ウカ様の魔力核くらい大きいんじゃない?」

「あれは、分割されてあの大きさなはず。本来はもっと大きいと思うわよ。」



 俺の魂を封印し、機械人形に組み込まれたウカ神の魔力核。その大きさは成人の心臓くらいの大きさであり、まさにこのフロアに転がっている魔石も同じ位の大きさだ。

 実際には、魔力核と魔石はその在り方から別物である為、大きさだけで比べるものではないが、小石程度の魔石ですら燃料としてかなりの価値があるのだから、こんな大きな魔石がこれだけの量あるとなれば、その価値はまさにひと財産と言えるだろう。


 それなのに、魔石には手をつけないなんて。

 やはり、おかしい………。



「もしかしたら、使徒狙いの冒険者かしら? 魔石は邪魔だから、放置して先に進んでるとか?」


 この世界では、社会インフラを維持する為に、ダンジョン産の魔石を必要としている。だから冒険者は、魔石目的でダンジョン探索をするのだ。


 しかし、冒険者たちには違う目標がある。


『悪なる神の使徒を倒し、悪なる神を封じた魔力核を破壊する』。

 これこそ、英雄を目指す冒険者の最大の目標である――



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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