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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第8章 約束と願望、目的と目標
391/456

神鳴り


          ♢



「――くそっ!? あのドラゴンの子供どこ行きやがった!?」


「あのドラゴンの子供なら、高く売れるぞ!?」


「近くに居るはずだよ!? あんたたち、なんとか見つけ出しなさいよ!?」


「魔物がドラゴンを連れていたって!? フーサタウンを襲いに来たのか!?」


「紅い目の女!? そりゃ、ヴァンパイアじゃないのかい!?」


「てことは何かい!? レッチェアームの魔物がフーサに来たってことかい!?」


「白髪に白瞳だとよ………。」


「そりゃあ、化け物じゃねえか!? ヤバいな。」


「怖いねぇ………。」


「ああ、恐ろしい………。」


「子供だって殺せばドラゴンスレイヤーだろうよ!?」


「人に慣れたドラゴンがいたらしいぞ!? しかも劣等種(レッサー)じゃないそうだ!?」


「竜騎士が捨てたのかね〜!?なら、あたしが貰ってもいいさね!?」


「何言ってんだ!? ありゃあ俺のもんだ!」


「ドラゴンを探せっ!」


「魔物を探せっ!」


「化け物を探せっ!」


「探せっ!」


「探せっ!」


「探せっ!」


「探せっ!」  


「――!」


「――!」




            ♢




 狂気が狂気を呼び、フーサタウンは興奮の坩堝と化していた。

 ある者は一攫千金のチャンスと喜び、

 ある者は魔物の襲来に恐怖した。

 ある者は名誉を欲し、

 ある者は化け物を退治しろと怒鳴り散らした。

 

 様々な感情が渦巻き、それぞれが自身の欲望を満たそうと走り回る者。


 噂が恐怖が恐怖を呼び、逃げ回る者と打ち払おうと必死な者。


 日は落ち、夜の闇が街を包み込んでも、人々の心は浮き足立ち、正とも負とも、どちらともつかない喧騒が街に響き渡る。


 それはまるで自分たち以外の存在は、全て自分たちのために存在し、自分たちを脅かす存在は、全て存在を否定するような傲慢な振る舞い。


 自分を許すのは自分。

 他人に自分の行為の賛否を問うことはない。

 ただ、『欲』に忠実であり、

 さらに、『生』に忠実である。

 ただ、『欲』に狂っているが、

 さらに、『生』に執着しているのだ。


 まさに混乱。

 フーサタウンの人々は、『欲』と『生』てが交錯し、恐ろしいほどに興奮していた――




 ピカッ―――




        ♢ ♢ ♢


         ♢ ♢

    

          ♢

   



 人々の【欲】が渦巻く街の中心。

 ダンジョン=ファーマスフーサの入り口がある広場の真ん中に、突然、一本の光の柱が立ち上がった。


 街を往き交う人々は、自分たちのやる事に夢中。

 それでもあまりに明るく眩い光に、誰もが視線を奪われる。


「――なんだ………」


 光を見た住人が言葉を言いかけ、まだその言葉が完成しない内に、光の柱は猛烈に光を膨れ上がらせ、その勢いのまま、一気に街全体を覆いつくしてゆく。


 あっという間に人も建物も、膨らみ続ける真っ白な光に飲み込まれていく。




 ドドドドーーーーーーーーン!!!!!!




 光が膨れ上がってからやや遅れて、その光を追いかけるように今度は爆音が響き渡った。

 しかし、皆ことごとく光の中に飲み込まれていて、その爆音を聞く暇など無かった。いや、全く感じる事さえ無かったのだ。

 


 光は街の全てを一瞬で真っ白な世界に閉じ込め、そして、膨れ上がった光は少しずつ夜の闇に吸収されていく。

 爆音が街中に広がり、それを合図に、光の中に閉じ込められていた世界に色が戻り始める。




 ゴゴゴゴゴゴーーーーーー………………




 完全に色が戻った時、フッと音が消える。

 あまりにも急激に音が消えた為、逆にキンッと金属をぶつけ合ったかのような甲高い音が鳴っているように感じられた。


 沈黙――世界から音が消えた。


 しかし、その刹那、光の柱が立ち上がった場所を中心にして、今度は猛烈な爆風が巻き起こった。


 それは嵐などといった生優しいものではない。

 規模も強さも測ることもできないほどの力の本流が、光の柱が立ち上がった場所を中心にして広がっていく。


 その暴力的な力を遮るものは須らく消滅するか、吹き飛ばされていく。

 まさに、大気すら拡散してしまうのではないかと思えるほどの衝撃が360度、街の全方位に向かって伝播していった。



 光が消え、爆音と爆風が通り過ぎ、街が静かすぎる夜を取り戻すと、そこには街だったことを表す物は無くなり、あるのはただただ瓦礫のみが残されていた。


 狂気に包まれ、不思議な興奮に包まれていた。

 そこに居た『欲』と『生』に執着していた者たちは、自分たちの身に何が起きたのかすら気付くこともできず、ただなされるがまま光に飲み込まれた。


 その日、その時、フーサタウンという街は消え去り、そこに居たはずの生きとし生けるもの全てと、そこにあったはずの構造物は、一瞬で破壊尽くされ、消え去っていた――




           ♢

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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