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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第8章 約束と願望、目的と目標
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夢の後①


 フーサタウン――


 ここにあるダンジョンにて、竜種の魔物が活発化し、ドラゴンという最強種目当てに多くの冒険者が集まっていたが、まさにドラゴンフィーバーともいえるような時期が終わり、街は今、閑散としていた。



「やっとフーサタウンに着いたわね。」


 アリウムと別れ、旅路はなんとなく静かな終盤になりそうだったが、アメワのおかげでナギとナミは明るさを取り戻していた。

 ふだんは姦しい2人の少女なのだが、俺があっさりとアリウムの別行動を認めた為、微妙な空気になりかけてしまった。

 中年男の寒いギャグではまったく盛り上げることもできず、どうしようかと思案していたが、アメワが上手く盛り上げてくれたおかげで、微妙な空気を取り払ってくれていた。



「………なんか、随分と静かね。」

「ほんと、結構大きな街なのに、全然人が歩いてないとか、なんか薄気味が悪いかも……。」

「ちょっと寒気がするわね。寒いのはヒロ君のギャグだけで充分なんだけど。」

「…………。」



 アメワの手厳しい呟きは置いておき、3人がそう感じるほどに、フーサタウンからは人が消えていた。

 メイン通りを歩いていても、すれ違う者もおらず、昼時だというのに、炊煙すら立っていない。

 

「………お店も閉まってるね。」

「お昼時だってのに、屋台も出ていないし……。」

「まぁ、さすがに全ての店が閉まってるなんてことはないでしょ。もう少し先まで歩きましょ。」


 

 フーサタウンへと到着した俺たちは、まずは腹ごしらえとメイン通りに来たのだが、まったく当てが外れてしまった。

 以前、この街を訪れた時は、ドラゴンスレイヤーを目指す大勢の冒険者たちの熱気で溢れていたというのに、竜種の活動が沈静化してしまえば、こんなにも寂れてしまうのか。


 

「――あっ! あそこの店やってるみたいよっ!」

「やった! もうお腹ペコペコ……、早く行こっ!」

「ちょっと!? 2人だけで行かないの!」


 ナギとナミがやっとみつけた食事処へ走り出す。アメワが慌てて2人を追うが、食欲に逆らえない少女たちはアメワの言葉に耳を貸さない。

 店は酒場のようで、閑散とした街の中、それなりに客で賑わっているようだ。



 カランカランッ――


 目的の店から2人の冒険者が出てきた。

 少女たちは気付いていないが、その冒険者たは走ってくる少女たちを見て驚いている。

 そして少女たちとのすれ違い様、2人の冒険者が突然叫び声をあげた。


「――おいっ! お前ら止まれっ!」


 突然の呼びかけに驚いて振り返ると、二人組がナミに向かって飛びかかってきた。


「――きゃっ!?」


 まったく警戒していなかったナミが2人に腕を掴まれ、隣にいたナギは突き飛ばされて悲鳴をあげた。


「あなたたちっ! 何をするのっ!」


 アメワが咄嗟に男たちとナミの間に割り込もうとするが、相手も冒険者。しかも、戦士風の2人はガタイも良く、簡単に払いのけられてしまった。



「――おいっ! なんだお前らっ!」


 少し距離が空いてしまっていた俺は剣に手をかけながら叫ぶ。


「うるせぇっ! おいっ! 女っ!こっちに来いっ!」


 戦士風の男が声を上げると、その騒ぎに引き寄せられたのか、酒場からゾロゾロと冒険者が飛び出してきた。



「―――!?」


 突然の出来事に俺たちは混乱する。

 ナミは腕を後ろ手に締め上げられ動けないでいて、苦痛に顔を歪ませている。

 アメワは体勢を崩しなからも、突き飛ばされたナギに駆け寄り男たちを睨みつけていた。


 

「おい、女っ! このドラゴンの子供、どっから攫ってきたっ!」

「なんと、こいつ人に慣れていやがる。」

「竜人族が飼ってる騎乗用のレッサードラゴンとも違うようだぞっ!」


 理不尽にナミたちを囲む男たち。

 何やらニールを見て勝手に騒ぎ始めている。

 それに対して、ナミの頭の上で男たちを威嚇しているニール。

 男たちはそんなニールを見て益々盛り上っているようだ。



「なんだなんだ、このチビドラゴン、一丁前に俺たちを威嚇してるぞ。」

「お前ら、どうやってドラゴンの子供を手懐けた?」 

「いやいや、そんなことはいい。このドラゴンの子供、俺たちによこしやがれっ!」


「――ふざけんなっ! 何を勝手なこと言ってんのよっ! ニールを渡すわけないでしょ!?」


「いいから寄越せって言ってんだろっ!」


 あっという間に20人ほどの人だかり。

 ナミの絶叫など関係なしに、周りに集まった冒険者たちがナミの頭の上にいるニールを奪おうと、吾先に手を伸ばしてきた。



『――◼️⚫︎▼●◾️▲ッッッッッ!!』


 それまでは身を固めて、ただの威嚇しかしていなかったニール。

 しかし、男たちの手が自分の身体に触れた瞬間、怒りの咆哮を挙げた。

 それは人の心に恐怖を植え付け身体を竦ませる【竜の咆哮】。まだ子供とはいえ、ニールは古竜=エンシェントドラゴン。その力は、程度の低い精神防御など、簡単にぶち抜いていく。


「―――!?」


 バタバタと倒れる冒険者たち。

 しかし、先程まで人影の無かったフーサタウンのメインストリートだったというのに、どこに隠れていたのか、わらわらと冒険者が現れた。



「おい、ドラゴンの子供だっ!」

「見ろっ! 人に飼われているドラゴンだっ!」

「なんだなんだ! アイツら、どこでドラゴンの子供なんか見つけたんだっ!」

「俺たちにも見つけた場所を教えろっ!」

「いや、俺にそのドラゴンの子供を寄越せっ!」


 次々に現れる冒険者たち。

 勝手な言葉を吐きながら、ナミとニールを囲むようにして近づいてくる。



「――なんなんだ、一体っ!?」


 ニールの【竜の咆哮】を至近距離で浴び、ナミの腕を掴んでいた冒険者とその仲間は昏倒した。

 その隙に、俺はナミたちの側に割り込み精霊剣を構える。

 さらに、リュックから嘆きの妖精=バンシーのヒンナを下すと、正面に向かって対峙させた。



「ヒンナ、頼むっ!」


 嘆きの妖精は大きく息を吸い込むと、一気に吐き出した。



《 きぃゃゃゃーーーー!!!! 》



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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