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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第8章 約束と願望、目的と目標
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新鮮な旅路


           ♢


 

 俺たちは今、ウカ神の使徒の一人、古竜王ゴズに会うために、南の町フーサタウンにあるダンジョン=ファーマスフーサに向かっている。


 北に位置するダンジョン=インビジブルシーラから南に位置するダンジョン=ファーマスフーサに向かう為、かなり距離がある。

 

 この世界に4人だけ残るエンシェントドラゴンの王。最強種と呼ばれ、強靭で巨大なその身体はまさに最強。


 そんな古竜王たちだが、森の女王曰く、今回の方針について反対されることは無いと言う。


「アイツら、今この後におよんでも世の中に無関心だからな。古竜は元から数の少ないし、4体から減ったわけでわないから、我々の意見に反対することはないだろうよ。」


 世の中に無関心……。それならなんでウカ神の【試練】のダンジョンプロジェクトに賛同し、使徒としてダンジョンの管理者になったのだろう。

 俺はそんな疑問を持ちつつ、森の女王から預かった顔無し人形を渡すべく、街道を歩いていた。

 


「ヒロ兄っ! ねぇ、ヒロ兄ってば!」

 

 色々と考えながら歩いていると、ナミが何やら不満気に騒ぎたてている。

 どうやら、何度も話しかけているのに、俺が全然反応しないことに腹を立てたようだ。


「あぁ、ごめんごめんっ!」


「まったく、何度も声かけてるのに上の空なんだから。せっかく久しぶりのデートなのにっ!」


 健康的な小麦色の肌をマントで隠そうともしないナミは、筋肉質でスラリと体型の整った身体つき。 ショートカットの黒髪に白い瞳の彼女は、しばらく見ないうちにだいぶ大人びたように見える。この年代の女の子が成長するのは早い。それがたとえ、使徒の眷属だとしても。



「――ちょっと、なにがデートなのよっ! うちが斥候で最前を歩いていることをいいことに、好き勝手やらないでっ!」


 パーティーの最前列。レンジャーという職業を選んだナギは、その仕事を全うするべくパーティーの先導役をこなしている。

 ナミに向かって叫んでいるこの少女も、やはり急に大人びてきていた。

 白い肌を日の光から隠すように、ナギとお揃いのマントで身体をすっかりと覆っている為、その身体の線は伺えない。しかし、白髪と赤い瞳は、大人になりかけの少女とは思えないほどにミステリアスな魅力を放っている。

 

 ただ、身体こそ成長したが、その会話はまだまだ子供。先程から他愛もない話をあーだこーだとやりあっている。

 正直言って、うるさい――



「あなたたち、リンカータウンでの魔物の行進(モンスターパレード)以来、そこかしこに魔物が潜んでいるんだから、もう少し緊張感をもちなさいっ!」


 口喧嘩が始まる度に2人の少女を嗜めている、こちらはすっかり大人の女性でなったアメワ。

 幼馴染のカヒコが死んでから、失意で塞ぎ込む毎日を過ごしていたが、長くパーティーのみんなと一緒に活動するようになってからは、すっかりと立ち直っているようだ。

 その綺麗な立ち姿と黒髪をポニーテールにまとめた横顔は、中年のおっさんの俺が見惚れてしまうほど綺麗になった。

 元々、綺麗な少女であったが、カヒコのことを引きずってか、暗い表情でいることもしばしばで、心配していたのだが、そんな雰囲気もなくなり、ナミとナギのお姉さんポジションにすっかり馴染んでいる。

 

 

「アメワさん、大丈夫ですよ。僕がちゃんと見てますから。」


 最前を歩くナギのすぐ後ろにいるのは、ここのところのスパルタ訓練で、すっかり自信をつけた様子のアリウム。

 白髪、白い瞳、白い肌で線の細さは相変わらずだが、話す言葉に澱みがなくなった。

 誰からも蔑まれ、虐められ続けて自分の殻に閉じこもっていた少年だったが、俺という枷を取り除いてからというもの、しっかりと自分という存在を表に出せるようになった。

 

 俺という異物が紛れ込んだせいで、彼の人生は大きく変わってしまった。願わくは、この変化が良いものだったと思いたい。


「アリウム兄、うち一人じゃ頼りないとでも言うの!?」


 何気ない一言に、赤い瞳の少女からの口撃が飛ぶ。さらに、そこに白い瞳の少女からも口撃が飛んできた。


「ちょっと、アリウム兄!? アリウム兄こそ、相変わらずのヒョロ男で頼りないわよ。まったく、うちを見習って筋トレ位しなさいよね。」


「えーーっ! なんで二人して!? ヒロさんが機械人形に移ってから、僕に対する態度酷くないですか!?」


 攻撃の対象が自分へと移り、いつの間にか少女たちから口撃の集中放火をうけ、俺に助けを求めるアリウム。

 しかし、すまん……。こちらに矛先をむけないでくれ。俺に助けを求められても無理なものは無理。自業自得、口は災いの素……。甘んじて口撃を受けてもらおう。

 


「――ピピ〜っ!」


 突然、ナミの頭の上で寝ていたニールから警戒を告げる声が響く。


「――前からコボルトの群れっ! おそらく12匹。警戒してっ!」


 古竜に先を越されるも、しっかりその後の索敵をこなすナギ。その声に反応して、それぞれが愛用の武器を構える。

 


「――みんな、コボルトとはいえ数も多いっ! 油断しないようにっ!」


 俺が号令をかけると、すぐにパーティー全体が戦闘体勢に入る。

 壁役のアリウムが前に出ると、索敵役のナギはその後ろでショートソードを構えた。

 

「みんな、頼むぞ。」


 俺が左、ナミが右に。アメワはナギのすぐ後ろにそれぞれ配置につく。ニールはその小さな羽で飛び上がった。


 久しぶりのメンバーでの実戦。

 みんな冒険者としてどのくらい成長したのだろうか。

 

「さぁ、やってやろうっ!」


 俺は大声で叫んだ――


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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