表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第1章 ひとりぼっちの少年
32/455

落ち込む少年、優しさにふれる


 ケインさんは三人組と俺の間に身体をねじ込み、掴まれていた俺の腕を自由にしてくれた。



「さて。という訳なんだ。――そちらさんは引いてもらえるかな?」


 ケインさんは三人組の方へ振り返り、そのまま自分の背中に俺の身体を隠した。



「おいおい、俺たちが先にその魔物の小僧と話しているんだ。脇から横入りするんじゃねぇよ!」


「なんなんだ、あんた? こいつは俺たちのパーティーで冒険者のイロハを教える予定なんだよ。あっちにいけよ!」



 戦士風の男がケインさんに殴りかかろうとしたが、魔術師風の男が冷静にその手を押さえて止めさせる。


「おい、あいつの首から下げてる冒険者証を見てみろ! B級冒険者だ。退くぞっ。」



 冒険者にはランクがあり、功績を積み上げ実力を認められるとそのランクが上がっていく。AからFまでの6段階あり、B級というのは上から2番目のランク。つまり、ケインさんは相当な実力者ということになる。


 三人組も、ダンジョンで見せていた戦闘技量を思えば、かなりの実力はあったはずだが、それでも、Bランクという高ランク冒険者には、とてもじゃないが叶うことはないようだ。


 魔術師風の男は三人組のリーダーなのだろう。彼は自分たちとケインさんの実力の差を冷静に判断し、退くことにしたのだ。実に強かな男である。



「おいっ!白髪頭っ!次は俺たちがまた雇ってやるから、逃げ出すんじゃねぇぞ!」


「B級の旦那、今回はお譲りしますよ。では。」



 ケインさんは、三人組が街の裏通りへと完全に姿が見えなくなるまで、僕をその背の後ろに隠してくれていた。



           ♢



「いやぁ、探したんだぞナナシ! 会えて良かった。」

 ケインさんは、俺の肩を抱きながら話す。



――えっ!? 俺を探していた? 何故?



 なんで、俺を探していたんだろう? 俺を探していた理由が見つからない。この人も俺を騙して利用しようとしてるとか? それとも……



「なぁ、ナナシ。お前、孤児院を飛び出したんだって? 何処か行く宛てでもあるのか?」


 何故かケインさんは僕が孤児院を飛び出した事まで知っている。どうして……



 俺が何も話せないでいると、ケインさんは俺の格好を見て話を続けた。



「もしかして冒険者になりたいのか?」


 その言葉を聴いて、年齢制限で冒険者になれなかった事を思い出し、急に涙が溢れた。泣くつもりなんかなかったのに……。


 ケインさんは、俺の涙に何かを察したのか、僕にこう言った。



「なぁ、ナナシ。とりあえず、俺と冒険に行こうぜ。荷物持ちのポーターならお前の十八番だろ? さぁ、俺と一緒に行こう!」



 俺は拭いても拭いても溢れてくる涙を隠しながら、声も出さずにただ何度も頷いた――



 


 


楽しんで頂けましたら、ブックマークや評価をしていただけると励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ