表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
313/456

残され


 ダンジョンの奥に少女!?いや少年だろうか?

 まさかの展開に俺はフリーズ……。


 管理者であるはずのドワーフ王は、森の女王アエテルニタスと共にいて、俺たちにこのダンジョンの解放を指示している。そんな二人からは、この場所はダンジョン外の魔物に襲われ、乗っ取られたとしか聞いていないし、他に管理者が居るなどという情報は貰っていない。


 ということは、目の前にいる()()()()()()()()は、ダンジョン外から侵入した魔物か?


 それとも、このダンジョンを襲った魔物たちを扇動していたという狐憑きだろうか。しかし、ぱっと見たところ、狐の仮面は被ってはいないようだ。

 膝立ちで目の前にある()()に向かって、一心不乱に赤い槌を振るっているその存在は、どう見ても人に見える。



カーン………、カーン………、カンッ!?



 ()()()()()()()()は、チラリと俺たちを横目で見ると、どかっと胡座をかいてその場に座り、叩きつけていた赤い槌を下ろした。


 精霊たちは、まるで警戒心を持っておらず、また、目の前の()()()()()()()()も、俺たちに対して全く警戒していないようだ。

 それどころか、ホラー映画よろしく、突然襲いかかってくるかもしれない――と、警戒していた俺が馬鹿馬鹿しくなるほどに、目の前の存在は笑顔を見せている。



「――ほぉ、懐かしい気配がすると思っていたら、こんなにも多種類の精霊たちに会えるとはの! 何百年ぶりじゃろうの!」


 目の前の存在は、和かに笑顔をこちらに向けて話始めた。そして、赤い槌を脇に置き、膝を叩いて立ちあがろうとするが、片膝を立てた途端にバランスを崩してその場で転がってしまった。


 ドタンっ! カラカランっ!


 転んだ拍子に、脇に置かれたこちらに向かって転がってきた。

 突然転んだ目の前の子供に驚かされ、俺は直前まで警戒していたのも忘れて駆け寄ってしまう。

 しかし、途中に転がっていた赤い槌を手に取ろうとして、今度はその槌のあまりの重さに驚かされた。持ち上げようとしたが、持ち上げられず、俺はその重さに引っ張られて転がってしまったのだ。


 仰向けに転がった俺を見て、精霊たちは、心配するような表情を見せた後、声もなく笑い始めた。



「おお、おお、すまんの。それは普通の人の身では持てんのじゃ。ところで火傷せんかったかの?」


 胡座をかいて座りなおし、赤い髪の子供は笑いながら俺を心配している。

 火傷?――言われてみれば、槌の重さに驚いて気付かなかったが、槌を握った右手から、軽く煙が立っている。機械人形の身でなければ、重度の火傷を負っていたことだろう。



「――うん? お主、不思議な存在だの。人族かと思ったが、何やら違うとみえる。まぁ、それだけの精霊を連れて歩いている所をみれば、悪人ではなさそうじゃがの。」


 人のような何かは、「よっこらしょ」とまるで年寄りのようにフラフラと立ち上がると、ゆっくりと俺の前まで来て、赤い槌を拾いあげた。

 俺では重すぎてとても持ち上げる事が出来なかった槌を軽々と持ち上げ、ついでのように俺の脇を抱え上げると、ヒョイと持ち上げて立たせてしまった。


 俺よりも頭二つ分ほど背の低いというのに、その力の強さたるやなんたることだ。


(――えっ!? えっ!? )


 動揺する俺をまるで気にせずに、俺を引き摺りながら元の位置に戻ると、人のような何かは、またどかっと胡座をかいて座り込む。


「ほれっ! お前も座れっ! ほれ、ほれっ!」


 呆然と立ちすくむ俺を自分の隣をポンポンと叩きながら自分の隣に座ることを促す。俺は、言われるがままに指し示された場所に胡座をかいた。


「お前、魔物ではないようじゃな。まぁ、聖なる槌音が鳴り響くこの場所に、魔物が来れる訳もないがの。しかし……、人族でもなく、精霊でもない。お前は何者じゃ?」


 空いている左手で顎を摩りながら、俺をじっと見つめている。対する俺は探るような視線にビクビクしながら、所在無く視線を漂わせた。

 それもしょうがないだろう。目の前にいる何かは、やはり少女であり、腰布だけを身につけ、胸をはだけさせているのだ。健康な(……機械人形に健康とかあるのかはわからないが……)男子なら、年齢に関わらず刺激的な姿である。


 俺はたまらず背中のリュックから、昔、ナミとナギとお揃いで買ったマントを取り出し、目の前の彼女に羽織らせた。



「おっ!? なんじゃ!? おお、おぉ、何じゃ、お前さん、優しい男じゃの。」


 赤い髪の少女は、自分の姿格好に、まったく頓着していなかったのか、突然の俺の行動に驚いているようだ。いやいや、身体は機械人形だけど、男の俺には刺激が強すぎる……。


「……ふむ、悪い男ではないようじゃの。そんなに固くなるな。別にお前さんに危害を加える気は無い。安心せよ。」



 固くなるなと言われても、目の前にほぼ裸の怪力少女が胡座をかいて座っているのだ。正直言って、落ち着きようが無い。悪い存在では無さそうだが、俺たちにとって、味方であるとも言い切れない。


「……君は……、いや、あなたは人なのか? 何故、ダンジョンの奥地にいる?」


 俺は、なんとも言えない恐怖を感じながらも、声を絞り出して少女に問うた。

 彼女は、ニコニコしながら俺の問いに答える。



「――ん? ワシか? ワシは、鍛治を司る女神ブリジットじゃ。まぁ、女神と言われていたが、元々火の精霊なんじゃがの――」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ