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精霊の進化①

明けましておめでとうございます!

とうとう300話。

ブックマークや評価など、とても励みになっております!

おかげさまで楽しみながら書いていますので、今後もお付き合いよろしくお願いします!


「ハニヤスっ! ストーンバレットっ!」


 三角帽子を被った小人。土の精霊である土小鬼=ノームのハニヤスは、契約主の指示に無言で応じる。いつも、お腹いっぱいに魔力を分けてくれて、しかも家族同然に大事にしてくれる主人の期待には、全力で応えたい。


 土小鬼は、周囲に小石を作り出して浮かべると、その小石の形を整えた。先を尖らせて貫通力をあげたその石の弾丸は、一斉に最前列にいる軍隊蟻に向けて撃ち出されると、硬い軍隊蟻の外皮を撃ち抜いて、2列目、3列目の蟻の身体をも貫いた。



「ハニヤス、いいぞっ! 石の形状変化がますます上手くなったなっ!」


 主人の褒め言葉に、普段帽子に隠れた口元が緩む。当初は、ただの『石礫』を飛ばす事しか出来なかった土小鬼であったが、主人と一緒に練習を繰り返すたび、自分の精霊としての力が増していくのを感じている。



 精霊――主人から魔力を貰わなくては、この世界に徴現し続けることはできず、力を行使することもできない。契約がなければ、ただ自然の中にあり続けて、自然の動きを手助けするのみの存在。


 しかし、彼は今、契約者と共にあり、契約者の為に働くことができるのだ。



「ハニヤスっ! そのまま撃ち続けてっ!」


 主人からの簡単な指示が、高い信頼を感じる。

 ある程度の裁量を任せてくれるのだ。この信頼に応えなくては、精霊の名が廃るってものだ。



《 よっしゃ! やったるでっ! 》


 恥ずかしがりの自分が、口角を上げて笑いながら叫んでいる。今までに感じたことがないくらいに力が湧いてきている。主人には聞こえる事はないだろうが、今、叫ばずにはいられないのだ。


 次々と石の弾丸を作り出しながら、叫んでいると、主人が和かに自分の姿を見ていることにきづいた。


《 あれ? ご主人様、どうしたの? 》


 ふと思った事が、そのまま口から漏れた。

 すると、明らかに主人が自分の言葉に反応している。


「ハニヤスっ! 君の言葉が聞こえるよっ! やった! ハニヤスの言葉がわかるっ!」


 優しい魂の持ち主であり、自分の信頼をあずけている。

 そんな主人が、自分の言葉を聞き取ってくれた?



《 ほんとに!? 》


「ハニヤスさん! 私にもあなたの声が聞こえたわっ! あなた、すごいじゃないっ!」


 主人の後ろで魔法の歌を歌い続けていた聖職者が、自分の声が聞こえると言って笑っている。



「すごいぞ、ハニヤスっ! 君は僕らと会話できるようになったんだっ! これって進化なのか!?」

 

 石の弾丸を撃ち続けながら、土小鬼は自分がただの精霊から上位の精霊へと進化したことを自覚した。今までと比べものにならない程に力が湧いてくるのだ。



《 ご主人様っ! これからもっと役に立つ事ができるよっ! よっしゃ、やったるでーーっ! 》


 もう一度、土小鬼は気合いを入れて叫んだ。



           ♢



 俺の中から、グゥッと魔力を持っていかれた感覚がある。

 おそらく魔力の流れた先は、土小鬼=ノームのハニヤス。突然、彼の叫び声が響き、初めて彼の声を聞いた後、今までの倍以上の数の石の弾丸が生み出された。



「やっちゃえ、ハニヤスっ! 打ちまくれっ! 」


 心なしか、ハニヤスの身体も大きくなったようだ。元は顔全体が三角帽子に隠れていたが、今は口元が見え、口角が上がり、白い歯が見えている。


 なんとなく恥ずかしがり屋なイメージだったのに、急に自信満々の姿に見えるようになった。


 以前、氷狼フェンリルから、魔力を与え続ければ精霊たちも上位の存在へと成長すると言われた事を思い出す。

 実は、ベルさんに紹介されるまで全然気が付かなかったのだが、俺が持ち歩いていた小石を入れた麻袋にいつの間にか住みつき、俺の魔力に一番長く触れていたのが、土小鬼=ノームのハニヤスだったらしい。


 俺も、広範囲に攻撃できるハニヤスの能力を好んで使っていたこともあり、おそらく真っ先に彼が進化したのだろう。


 敵を倒す力が足りない俺にとって、俺の代わりに大きな力で敵を倒してくれる精霊が、強く成長してくれる事はとてもありがたい。



「みんな、ハニヤスが弾幕で軍隊蟻の数を減らしてくれるっ! 弾幕をすり抜けてくる蟻を倒すぞっ!」


 ハニヤスは、まるでガトリング銃のように石の弾丸を撃ちまくっている。すごい殲滅力だ。

 正直、この弾幕をすり抜けて飛び出してくる軍隊蟻は、数匹だけ。殆どの軍隊蟻は、ハニヤスが倒してしまった。



「……すごい……。」


 ソーンの口から驚きの言葉が漏れた。

 かつて、リンカータウンの冒険者ギルドのマスタであるハンド=サムが使役していた炎の魔神=イフリートは上位精霊の一人である。その力にはまだ届かないだろうが、それでも上位精霊に近い力を発揮したように感じる。



「ひゃ〜……、まさか、僕が参戦する前に軍隊蟻の残党を殲滅しちゃうなんて……。」


 後方で魔力の回復に努めていたアリウムは、対軍隊蟻の第三幕が、あっという間に終わった事に驚きを隠せずにいた。



「なにはともかく、ハニヤスのおかげで出張ってきていた軍隊蟻を殲滅できたね。これ以上、軍隊蟻を倒しちゃうと、群れが回復できなくなるから、今日はもう帰ろうか。」


 一幕、二幕の苦労が嘘のように、第三幕を終わらせた中年人形の一行は、森の女王とドワーフ王の待つ、使徒の部屋へ向かい歩きはじめた――

みなさん、評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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