剣士、探し回る
30話まで書くことができました。読んで頂いている皆さんに感謝です。
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「ナナシ……、いったい何処に行ったんだ……。」
B級パーティー『アイリス』は、リンカーパークを拠点に長く活動している。だから、ケインは街の事にはそれなりに詳しい。
それなのに、街の何処を探しても、あの少年を探し出すことが出来なかった。
メンバーと別れた次の日から、かなりの場所を歩き回っているが、手掛かりですら全く掴めなていない。
もしかしてと、街の住人にも聞き込みをしてみたが、「あんたはあの魔物の子供と知り合いなのか」とか、「魔物の子供なんかいなくなった方が良いんだ」とか、そんな事ばかり言われ続ける始末で……
「ナナシ、お前、この街で、ほんとに辛い生活してたんだな〜……。」
街の人々からのあまりに酷い言われように、改めてナナシという少年の不幸な境遇に涙が溢れそうになる。
もしかして、街の外に出てしまったのだろうか。街の外にだって、ダンジョンほどでは無いが魔物は存在している。
少年1人で生きていくには危険が多いところだし、ただ生活するにしたって、過酷な環境には間違いない。
「明日からは街の外を探してみるか。」
なんとなくそう決めた後、ふと、少年が荷物運びのポーターをしていた事を思いだした。
流しのポーターは、大概、冒険者ギルドの前の広場で出待ちをしていて、ダンジョンへ向かう冒険者達と直接交渉する。
とりあえず聞き込みも兼ねて、冒険者ギルドにいってみるか。
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冒険者ギルドへ向かった俺は、ギルド前広場に着いた。ちょっと水でも飲んでいくか。
水飲み場に向かうと、冒険者らしき3人組に囲まれた、白髪の少年が見えた。
――居たっ!!!
見つけた! ナナシが居たっ! なんて声をかけたらいい? いったい俺は何をしたいんだ?
とりあえず、話をしてみないと何も始まらないよな。無理矢理自分を納得させ、少年に向かって右手を挙げて、彼の名前を呼ぼうとした。
――ん?
あの三人組、何かナナシの事を脅していないか?
ナナシがめちゃくちゃ嫌がってるんじゃないか?
もしかして――、あいつらがナナシをダンジョンの裂け目に落とした連中じゃないだろうな!?
その考えが浮かんだ途端、ギュッと胸が締め付けらる思いがして、俺は少年の元へ向かう足を早めた。
(冗談じゃないっ! これ以上、ナナシにひどい事をさせてたまるかっ!!)
ナナシの腕を掴み、引っ張りこもうとしている三人の冒険者と、一人の白髪の少年の間に無理やりに身体をねじ込む。
「――よっ、ナナシ。 元気だったか? 今日は俺の冒険に付き合ってもらいたくてな。丁度、ポーターを探していたんだ。君に頼めるかい?」
細い身体を縮み込ませて、引っ張られまいと踏ん張っている少年の肩に、左手をそっと置き、なるべく優しい声で話しかけた。
そして、俺なりの会心の笑顔を作り、少年に向かって、右手の親指を立てた。
――俺は、君の味方だ!
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