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中年人形、創る


「ヒロさんっ! もう魔力が持ちませんよっ! なんとかしてくださいっ!」


 少年は全身に汗が滲み、身につけている服の色が変わっている。その白い髪も大量の汗のせいで額に張り付き、片膝をついて肩を荒く上下させていた。


 押し寄せる軍隊蟻の数が予想以上に多い。

 

 入れ替わり鋭い顎で障壁に噛みつき、蟻酸を吐きかけ、体当たりを繰り返す。


 ニールの強力なドラゴンブレスに焼かれ絶命するもの。

 サクヤの炎の鞭に薙ぎ払われ、その腹から下を切り離されるもの。

 ハニヤスが繰り出す石の弾丸に貫かれて、体液をぶちまけてその場に崩れ落ちるもの。

 ミズハの水球に覆われ、酸素を絶たれ窒息するもの。

 フユキとヒンナの作り出した氷の礫に手足を捥がれて身動きがとれなくなるもの。


 中年人形の使役する古竜と精霊の攻撃によって、次々に倒されていく軍隊蟻たち。しかし、後ろから押し寄せる軍隊蟻がその遺骸を後方へと運び片づけながら、何度も何度も突撃を繰り返してくる。


 幼い時から魔力渇枯を繰り返した事で、たとえ中年人形と魔力総量を分けあうことになってしまったとしても、充分に大量の魔力を持っているはずの白髪の少年なのだが、いよいよ障壁を維持する為の魔力が限界に近づいてきているようだった。




「OKっ! アリウム、変わろう! 休んでくれっ!」


 中年人形は障壁に手を触れて呟く。


「――共有。」


 すると今まで白髪の少年から障壁へと供給されていた魔力が、今度は中年人形から供給され始める。

 魔力の供給が途切れず、強度を保ったまま障壁は軍隊蟻の攻撃を跳ね返し続けた。



「……助かった……。もう限界……。」


 白髪の少年は、その場に仰向けに倒れ込む。

 完全に魔力を使い果たしたわけではない為、荒く息を吐いてはいるが、気を失ったりはしていなかった。



「アリウム、少し休んだら、また頼むぞ。俺もまだこの能力に慣れていないから、障壁を維持しながら他のことまでやれる余裕は無いんだ。しばらくは、防御一辺倒になっちゃうからな。」

 

「 ……はい……。」


 少年にとっては、なんとも過酷な宣告なのだが、自らが成長する為にも、魔力の枯渇を繰り返すこの行為は、やり切るしかない試練に違いないのだ。



「――アリウム君っ! しっかり休みなさいっ! しばらくは私に任せてちょうだいっ!」


 今までウォークライを唱えながら、メンバーのサポートに専念していたソーンが、波の乙女の前に空いていた障壁の狙撃口の前に立つ。


「我ら、敵を祓い、豊穣を護るものなりっ! 太陽神よ、闇を切り裂き、闇を穿つ力をっ! 『ホーリーレイっっ!!』」


 その手を四角に形造り、その胸の前に突き出す。

 

 

――キンっ!



 突き出したから光が溢れ出し、その光の球が一気に収束すると、一直線に軍隊蟻の群れを貫く――



「ひゅ〜。」


 中年人形は軍隊蟻を貫く光を見て、軽く口笛を吹く。その光はまるでレーザービーム。何というか、生まれ変わる前にアニメで見た、必殺技みたい。こんな魔法が使えるなんて、ソーンさんは凄すぎる。



            ♢



 実は、チーム分けをして、中年人形や白髪の少年たちと特訓をする前には、ソーンは攻撃に使える魔法は持っていなかった。だが、後衛で仲間を見守るだけでは自分の役割が限られてしまう。


 中年人形からは、いざというときの回復魔法こそが最高の貢献なのだと言ってくれるのだが、ソーンとしては、今以上にチームに貢献できる方法が欲しかったのだ。


 そこで、中年人形に相談しながら、自分の能力を発展させる為に、様々なイメージを膨らませ、新しい魔法の発想を考えだしていた。


 それこそが、聖なる光を収束し束ねることによって生まれた光線魔法『ホーリー・レイ』である。


 新しく覚えた神聖魔法。

 このスキルの中には、『ホーリー・ライト』という、神聖な光を扱い世界を照らす魔法がある。

 この神聖な光には物質的な力があり、他に干渉する力があった。これに気付いた中年人形から、聖なる光の形態変化についてのアイデアをもらい、試行錯誤した結果、新しい神聖魔法として生み出されたのが『ホーリー・レイ』であった。


 細く収束した光を束ね、さらにその束ねられた光を収束する事によって一本の強力な光線となり、その力は、分厚い岩に簡単に穴を穿つまでの威力を生み出すに至っていた。



「――ホーリー・レイっ!!」


 かなりの集中力を必要とするこの魔法なのだが、目の前に殺到する軍隊蟻の身体を貫き、しかもその貫いた光線は、10体の軍隊を貫いたとしても、さらにその光の筋を伸ばしていた。


 その回数、5回。

 穴を穿たれた軍隊蟻は、何歩か前進した後、その場に崩れ落ちる。殺到する軍隊蟻の圧力を確実に減らしてくれた。

  


            ♢



 その途轍もない威力の光線を見て、ますますヤル気を激らせたのが古竜の王の子、ニールである。

 

 普段、中年人形から魔力を吸収し、力の根源として使っているが、ニール自身は独立して存在する古竜=エンシェントドラゴンである。

 進取果敢な聖職者の放つ光の魔法の威力に触発されて、自らが放つドラゴンブレスにも力が入る。



 ゴーーーーーーっ!!!



 先刻までのドラゴンブレスに比べても、かなり威力を上げた炎の束が、ソーンの放った光線の斜線とは別の列を突き進んでくる軍隊蟻たちを丸こげにする。

 中年人形から吸い取った魔力を存分に練り込んだ炎は硬い攻殻に包まれた軍隊蟻を巻き込むと、数秒で蒸発させた。

 


           ♢



 絶対的な防御力の反面、自身には敵を屠る為に必要な攻撃手段を持たず、いつでも相手との我慢比べをしながら勝利してきた()()にとって、仲間の絶大な攻撃力は必要不可欠。

 しかし、機械人形=ゴーレムとして生まれ変わった彼は、今までとは違う能力を使いこなす訓練を重ねている。



『才能1 エンパシー』

『才能2 ダブル』

『才能3 ムービング』


 これらを使いこなして、自分自身が強くなって見せる――


 

 


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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