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スパルタ方式


 ガサガサガサガサ――


 蟻の大群の足音が近づいてくる。

 自分たちのスキルを上げる為に、とにかく戦闘経験をこなす。しっかりと目的をもってダンジョンに挑んでいるのだが、それでもやはり、同じ作業を何度も何度も繰り返すというのは、かなり精神的に辛いものだ。



「 ……さて、次はどんな作戦でいこうか。」


 私の横で顎に手を置き、思案顔で作戦を練っている中年の男。


 以前に一緒に活動していたB級パーティーが崩壊してしまい、失意の中、自らの目標を見失っていた私。そんな私に、新しい目標を与えてくれて、再び冒険へと連れ出してくれた少年……だったはずの機械人形=ゴーレム……。


 今、私の目に映るその姿は、当時、私を連れ出してくれた少年の面影は全くもって皆無である。しかも、私が知っているその姿の少年は、今ノロノロと立ち上がり、目の前に光の障壁を作り出そうとしているのだ。

 しかし、その少年は、私の知っている中身とは、全く違う人物なのだ。まったくもって、不思議なことこの上ない。


 姿の変わった私の恩人は、伸びた黒い前髪が目を隠し、大人の男性よろしく、無精髭をだらしなく生やしている。

 長い期間、ダンジョンに潜って特訓を繰り返しているわけなのだから、その様相というのもしょうがないのだとは思うのだけど、元々私が抱いていた少年の姿の頃のイメージからは、まるっきり掛け離れてしまった彼の姿に、どうしても私の()()()が追いつけないでいるのだ。



――だって、まさか彼がこんなおじさんだったなんて……


 魂の移し替えが成功した後、魂に引きずられて現れたその姿は、私たちが見た事のない服を着た中年の男だった。

 姿が変わったところで、彼が彼なことには間違いないっ!………と、そうは言ったものの、やはり見た目の印象とは大事なもので、どうにも違和感を感じずにはいられなかった。


  

――しかも、本当の彼は、まさかの年上だったし……

 

 元の彼……、白髪の少年の彼は、今はアリウムと名を変え、まったく性格の違う人間となっている。

 また、これがなんともネガティブで、ハッキリとしない性格で……。これがまた、私の()()()を騒つかせる要因にもなっていた。


 どうにも、私の彼への()()()は、今のこの状況の中、とんでもなく大混乱を起こしている。だって、見た目が恩人だけど中身が違う人間と、外見はまるっきり別人だけど中身が恩人である機械人形だよ? どうやって自分の()()()を整理したら良いのか、混乱もするでしょう?



 どうしても彼について行きたくて、訓練のチーム分けの時、私は無理やり彼のチームに入った。


 ナギ、ナミの2人からは、かなりの長い時間抗議されたのだが、あれこれ理由をつけて、なんとか納得させたのだ。

 それなのに、今、自分の()()()がよくわからなくなっている。あの頃は、その()()()に確信が持て始めていたはずなのに……。



「……さんっ! ソーンさんっ!? 軍隊蟻の団体さんが来ましたよっ!」


「――あっ、ごめんなさいっ!」


 いけない、いけない。

 しっかりと集中しなくては。一匹一匹はそれ程の強さではないけれど、いちいち大群で押し寄せる軍隊蟻は、手を抜いて倒せる相手では無い。本来なら、こんな少人数で戦い相手などではないのだから。



「――集中します。ヒロ君、指示をっ!」


 無理矢理自分の()()()を仕舞い込み、目の前に迫る軍隊蟻との戦いに備える。



――なにはともあれ、私も強くならなくては。


 何も出来ない自分ではいたくない。必ず彼の役に立ってみせる。その為にこの場についてきているのだから――



           ♢



「ピギャーーーっ!!!」


 古竜王ゴズの子ニールは、巣穴な奥から這い出てくる軍隊蟻に向けて、大きく咆哮した。

 

 長命種の中でも最強と言われる古竜。

 彼らが放つド迫力の咆哮は、まだ子供の域を脱していない子竜のものとはいえ、敵を萎縮させるに充分な威力である。


 たとえ感情に乏しい虫系の魔物が相手だとしても、その心に恐怖を抱かせるにはこれ以上ない威力を発し、群れの先頭を駆けていた軍隊蟻は、その咆哮を受けて混乱を引き起こしている。



「――アリウム、障壁張ってっ!」


 我が主人と慕う機械人形=ゴーレムの号令に、白髪の少年がダンジョンいっぱいに障壁を張る。

 混乱を起こして同士討ちを起こしていた先頭を躱し、押し寄せた後続の軍隊蟻が、不意に発現した障壁に頭から勢いよくぶつかり、そのまま昏倒した。



「今回は壁を利用して、遠距離で応戦するよっ!」


 主人はそう宣言すると、彼の才能【共感】を利用して障壁の何箇所かに丸い穴を作り出した。あのスキルは、精霊や自分たちとの親和性を深めるだけではなく、彼との親和性の深い者のスキルにも干渉できるらしい。


 

「ニールっ! 真ん中の穴からブレスで攻撃してっ!」


 主人から指示が飛ぶ。

 自分以外の遠隔攻撃持ちにも、空いた穴からの遠隔攻撃を指示していた。

 これまでにも、同じ戦法でクイーンビーの大群を殲滅したことがあるが、あの時はドーム状の障壁の中から、クイーンビーを狙撃しまくる戦術であった。


 主人は、「トーチカ」とか言っていたが、元の主人の姿である白髪の少年のスキルがあるからこそ取れる作戦なんだそうだ。


 難しい事はわからないが、臨機応変に戦術を考え指示を出す我が主人は、大量の魔力で自分や精霊たちをフォローし、使役する能力に長けている。

 おかげで、安心して指示に従い、敵に向かうことができるのだ。凄い主人だ。



――ほんと、ついてきて良かった


 実父のように人族の言葉を扱えるようになって、早く主人と会話を交わしたい。そうして、もっともっと、主人と一緒に冒険にきょうじたいものだ。


 古竜の子供は、連続でドラゴンブレスを吐き出しながら、込み上げる喜びに、ますますヤル気をたぎらせるのであった――




         ▼


ニール  ドラゴン


クラス  エンシェントドラゴン


才能1  ドラゴンフォーム

    (古竜の力)


スキル  ブレス  LV10

     咆哮   LV10


          ▲



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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