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ダンジョン=インビジブルシーラ


「――バリアっ!」


 最前線にて、目に見えるほど魔力の込められた魔法障壁が現れる。

 その光の壁に武器となる蟻酸を弾かれ動揺する蟻の魔物に、先端を尖らせた石の砲弾が突き刺さった。


 鎧のような硬い皮膚を貫き、その身体から紫色の液体を溢れさせる。

 

「ギギギギっ!!!」


 鋭い顎を噛み鳴らし、近くにいる仲間を呼び寄せている。すでに攻撃色のフェロモンを撒き散らし、それに引き寄せられて近づいていた蟻の魔物たちが、さらに速度を上げて押し寄せて来る。



「――ヒロさんっ! 流石にあの数の蟻を押し留めるのは無理ですよっ!」


 額に脂汗を浮かべながら、歯を食いしばって光の魔法障壁を支える白髪の少年。ダンジョンの穴いっぱい。かなり広い範囲に障壁を広げている為、多数の蟻の魔物にジリジリと押し込められている。



「アリウム、頑張れっ! ニールっ!空中からブレスで蟻の中列を焼き払ってっ! サクヤはニールと一緒に行って! 炎の息吹でニールを援護してっ!」


 無精髭を生やす中年の男の頭に乗っていた小柄な竜は、男の指示に従って空中へ飛び上がると、火蜥蜴を背中に乗せ、光の壁を飛び越えて蟻の群れへと向かっていく。



「ハニヤスとミズハは全力で泥沼を! 蟻の動きを止めるよっ!」


 土小鬼と波の乙女は、2人で協力して光の壁の前に深い泥沼を広げていく。かなりの深さのその沼は、人の大きさ程もある蟻の魔物を次々と沈めていった。

 しかし、沈んでいくその蟻を足場に、後方からは次々と蟻が押し寄せてくる。



「ヒンナっ! フユキに変化っ! フユキっ!ヒンナと2人で氷塊っ!」


 傍に立っていた黒髪の少女は、一瞬で雪だるまに変身すると、隣にいた雪だるまと共に、氷の礫を作り出していく。その大小様々な大きさの氷塊は、勢いよく飛んでいき、壁に押し寄せた蟻の身体を貫いていった。


 さらに、蟻の列の中程にたどり着いた竜の子供と火蜥蜴は、炎のブレスを吐き出して、蟻の魔物たを一気に焼き尽くさんと飛び回る。



「ハニヤスっ! もう一度、石砲弾で攻撃をっ! ミズハは生き残っている蟻を窒息させてっ!」


 再び石の砲弾が蟻の魔物に降り注ぎ、雪だるまたちが生み出す氷の弾丸と合わせて、次々と蟻の魔物を撃ち抜いていく。身体を貫かれながらも、まだ攻撃の意思を捨てない蟻には、水の膜が覆い被さり、無酸素状態を作り出して意識を奪っていった。



「――アリウムっ! 魔力障壁を杭柵に変化っ! 蟻の前線を潰すよっ!」


 号令を受けると、白髪の少年は共に光の壁から大量の光の杭を生み出す。全力で壁を押しこんでいた蟻たちは、勢いを緩める事ができず、自らの力でその鋭い杭を身体に突き刺してしまう。

 最前線の蟻たちは奇声を上げながら、手足をバタバタさせながら生き絶えていった。



「ソーンさんっ! アリウムっ! 行くぞっ! 突貫っ!!!」


「「――はいっ!!」」


 中年の男は、鈍い銀色の剣を上段に構え、崩れた蟻の隊列の前衛を飛び越える。着地と同時に泥沼にハマっている二匹の蟻の首を刎ね飛ばした。


 その横には、その手に握る金属製の棍を振り下ろしながら、聖職者が魔法障壁を飛び越えてくる。

 


「我が聖なる力によって衝撃を!『インパルスっ!』」


 棍を振り下ろしたと同時に、聖職者が右手を前方にかざすと、聖なる光を帯びた衝撃波が蟻の腹部を破裂させた。

 衝撃波を受け倒れていく蟻の横から違う蟻が蟻酸を吐き出すが、そこにはすでに魔法障壁が展開され、蟻の群れに突入した二人は防御を気にすることもなく、それぞれの獲物を振り回しながら蟻を葬っていく。

 

 一瞬のうちに前衛の蟻は全滅し、また、目の前には竜と火蜥蜴が吐き出した炎に焼かれた蟻たちが、その身体を仰け反らせながら燃え尽きていた。



「アリウムっ! 炎の壁で後衛が進めないでいるうちに、炎の前にもう一度魔法障壁を張ってっ!」


 軍隊蟻と呼ばれるこの蟻の魔物の大群は、その中程までを一瞬のうちに葬られ、それに怒り狂う蟻たちは、炎に焼かれるのも厭わずに、火に包まれた蟻の死骸を乗り越えて殺到してきた。

 しかし、中年の男の指示により、新たにダンジョンの穴に張り直された魔法障壁に阻まれ、またもや蟻たちは自らの仲間同士でギュウギュウに押し詰められていた。


「――また蟻と力比べですか!? ヒロさんっ! 勘弁してくださいっ!」


「なははっ! アリウム、根性見せろっ! さぁ、みんなっ! もう一度だっ! 同じ工程を繰り返すっ! 行くぞっ!」


 白髪の少年の泣き言は軽く笑い飛ばし、もう一度、先ほどの工程を繰り返す。

 人と竜と精霊と、そして()()()()が加わって、流れるような連携で、見事に蟻の大群は蹴散らしていった。



            ♢


 ダンジョン=インビジブルシーラにて、虫の魔物たち相手に特訓を繰り返していたヒロたち一行は、それぞれのスキルのレベルも上がり、抜群の連携をみせていた。


 当初、身体や魔力を上手く使えず、自分の周りにしか障壁を張ることができなかったアリウムは、障壁の形を自由に変える事ができるようになり、また、離れた位置に障壁を出す事ができるようになっていた。そのおかげで、広範囲をカバーできるタンク役として、パーティーを守ってくれている。


 元々は回復の魔法中心だった聖職者のソーンは、得意の棍術で接近戦をカバーしながら、中距離攻撃用の聖魔法を覚えた事により、やはり自分の身を護りながらも、離れた位置の魔物を倒す事ができるようになった。優れた回復役であり、また、スキル【封印】という、対ヒルコ戦における重要な役割が待っている彼女は、元からパーティーにとって欠くことのできない存在であったが、ますますその能力を発揮し始めていた。


 先日までは、小さな身体だとしても飛ぶことが叶わなかった古竜の子ニールだったが、常に腹一杯の魔力を食べ続けた結果、ついにその小さな翼で空を駆ける事ができるようにまで進化していた。また、口から吐き出す高熱のドラゴンブレスは、立ちはだかるどんな敵をも燃やしつす。まだまだ、持久力に難があり、ハイカロリーを消費してしまうという課題があるが、いずれ親に負けない古竜の王へと育つだろう。



      ▼


アリウム ヒューマン


クラス  軽戦士


才能1  アンチ

    (反対、拒絶 対抗)


才能2  ダブル

    (2重、2倍)


スキル  障壁 LV95

     剣術 LV5

     投石 LV6

     採取 LV2


         ▲


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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