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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第6章 豊穣神と使徒たち
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中年人形、新しい目標を持つ


「なぁ、嬢ちゃんたち。そんなに心配することはないぞ。」


「そうね。あなた達は、今回の作戦にとって重要な役割を持つんだから。だから、嫌でもヒロ君の手伝いをしてもらう事になると思うわ。」


 自分たちの願いが聞き届けられたと判断したのか、余裕を取り戻した2人の使徒が口論を続ける少女たちの間に入った。



「さっきも話したけど、今回のヒロ君の魂の封印作業、ほんとに見事だったと思う。」

「ふん、散々罵声を浴びせて皆を困らせていた奴が言う台詞ではないがな。」

「ダンキルっ! もう、話の腰を折らないで。その辺りは私も反省してるからっ!」


 仲が良いのか悪いのか。

 2人の会話はなんとも掴みづらい。



「……さっき、確証は無いと言ったけど、実は一つ、ヒルコが残していったヒントがあるの。」


 どういう事か。

 騒然としていた面々の視線が自然と森の女王へと集まった。



「どういう事なんですか?」


 先程、自分の質問にしっかりとした回答を得られなかったライトが、再度、問い直す。


「……ごめんなさいね、魔術師君。説明しづらくて……。まず、仮面に表情があった事は話したわよね。」


 森の女王の説明によれば、狐憑きが被っていた仮面には表情があった。これについては先程も教えられている。


「スライムであるヒルコは、実は、言葉を発する事ができない代わりに念話を使う事ができたの。これは、私のような精霊使いが精霊と会話する時に使われる技術なの。つまり、私とヒルコは念話しで話す事ができたの……。」


( 精霊使いは、念話で精霊と話す事ができるのか……。俺もいつかは使えるようになるだろうか。いつも俺を助けてくれる精霊たちと、自由に話してみたい……。)



「狐憑きたち。彼らはヒルコの分身体である狐の仮面を取り付けられたことによって、その身体を支配されていた。悲しい顔をした仮面をつけた狐憑きは、「分身を繰り返す。」という言葉を念話で伝えてきたの。ただそれだけ、簡単な会話だけだったけど、ヒルコが何かをする為に分身を作り出している、それだけは感じとれたの……。これこそ私の推論でしか無い。でも、あの優しいヒルコが考えもなく私たちを襲うなんて考えられないから。」



 希望――なのだろうか。

 2人の使徒からは、苦しみの感情を読み取る事ができた。確証は無い、しかし、確信はある。この言葉が意味するものは、そういう事なのだろう。



「もう一つ、何故か狐憑きたちの姿は、ウカ様の姿を模したものだったの。狐の仮面は狐神を連想させ、巫女姿はウカ様の正装。わざわざウカ様の姿に似せている事も、意味があると思っているの。」


「ヒルコが、ウカ様の悪評を拡げる為にやった事だとは思いませんか? 実際、フェンリル様もブラド様も、狐憑きの行動に対して怒りを露わにしていましたし、世の中の常識では、ウカ様は悪なる神。悪いものの象徴ですから。」


「……確かに、そうかもしれない……。でも、私たちを助けた狐憑きがいた事も、忘れてはいけないと思うの……。」



 確かに、仲間であるはずの使徒を襲っておいて、それとは違う狐憑きは救おうと行動しているなんて、正反対の行動をしているなど不思議なことこの上ない。


「つまり、悪い狐憑きと悪い狐憑きが居る事こそが、ヒルコが完全な悪なる存在ではない証明だと言う事ですか……。」


 思考の回転が速いライトが呟く。

 まさに、それこそが2人の使徒がかつての仲間を信じたい理由なのだろう。



「――わかりました。いずれにせよ、善か悪かは、実際にヒルコと対峙して判断しましょう!」


 ヒロの宣言により、今後の方針の一つが決まった。仲間たちから反対の意見はでない。

 質問したライトも、和かに頷いている。



「ありがとう。そこでなんだけど――」


 森の女王が、部屋奥の倉庫から、ヒロの魂を封印したものと同じ機械人形=ゴーレムを持ってきて、改めて説明を始めた。


「ヒルコは、混沌王と呼ばれりカオススライム。実態はあるけど、決まった形を持たないの。しかも、分裂を繰り返すわけだから、もし、滅しようとするならば、ヒルコの全てを一気に滅しなくてはならない。それは、かなり難しいと思うの。」


 ポンっ、と機械人形を叩くと、そのまま作戦を伝えてきた。



「だから、この機械人形に、ヒルコの魂を封印して、スライムの身体からヒルコの自我を切り離す。そうすれば、分裂を繰り返すことは出来なくなるはずよ。」


 カオススライム。

 唯一無二の存在。

 どうにかして、その存在に勝利しようと考えるならば、何百年もこの事について考え続けてきた彼女たちの案に乗るのが一番であろう。

 だいたいにして、他に妙案など思いつきもしない訳だし。



「なるほど、魂を封印する為の機械人形を作り出した理由は、使徒の魂を乗り移す事だけではなく、ヒルコやウカ様の魂を乗り移す事も含まれていたのですね。」


 納得したという風に、腕を組んだまま話すライトに向けて、森の女王は、我が意を得たりとばかりに満面の笑みを浮かべた。



「ふふっ、魔術師君の考察力には舌を巻くわ。そう、私たちは、再びウカ様と仲間同士で過ごしたいだけ。本当は、それこそが私たちの願い――」


 

 だからこそ、今回の魂の封印作業に参加した全員に、ウカとヒルコの魂の封印という大事を引き受けてもらいたい。それこそが、二人を助けて欲しいという、使徒等の願いを叶える事になる。


「だから、どうしても、このチーム全員にもっと力をつけてもらいたい。そして、この作戦を必ずやり遂げてもらいたいの。」



 フンっ、と鼻をならすドワーフ王。しかし、森の女王が話しを終え、今日、何度目になるのか、頭を下げると、一緒になって頭を深々と下げていた。

みなさん、評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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