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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第1章 ひとりぼっちの少年
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剣士、落ち込む

 あの少年の行く宛などわかるはずもなく、俺はパーティーメンバーの待つ酒場へと向かった。


 『英雄の家』の扉を開けると、一番奥の馴染みの席で『アイリス』のメンバーは楽しげに酒を煽っていた。



「よぉ、遅かったな〜。こっちはすっかり出来上がってたよ。」


「何処に行ってたの?ケインが居ないから盛り上がらならなかったじゃないの。」



 すっかり顔を赤くしたライトとユウが、盛り上がってたのにも関わらず、俺に軽口をたたく。



「あぁ、すまなかったな。でも充分盛り上がってただろ?」


 なんとか不機嫌がバレないように、こちらも軽口で誤魔化した。

 なのに、運ばれて来たエールを見つめたまま、動きを止めてしまった。



「お前、あの魔物の少年に会いに行ってたんだろ?その面白くなさそうな顔からすると、あの少年になんかされたか?」


「ほんとに?なんであんな魔物の子供に構ってるのよ。あんなのに関わってもロクな事ないわよ。」



(パーンとソーンは、またナナシの事を魔物と言うのか……ナナシの事なんか噂でしか知らないはずなのに!)



 冷えかけていた頭が、また熱を帯びる。

 英雄に憧れ、みんなで一緒に英雄を目指して頑張ってきた。


――英雄はそんな言葉言わないだろ……。弱いものをイジメるなんて、そんなのおかしいだろ……。そんなのは、俺が目指した英雄の姿じゃない……。



「ごめん、みんな。一週間の休みの間、俺は別行動させてもらう。ちょっとやらなきゃならない事ができたんだ。しばらく、連絡取れないかもしれないが、よろしく頼むな。」



 頼んだエールを一気に飲み干し、勢いよく先に席を立つ。

 突然の俺の行動に口を開けたままの4人に食事代を預け、一週間後の昼に冒険者ギルドに集合という約束だけ言い残して、店を出た。



 今にも仲間に怒鳴り声をあげそうだった。



(いくら仲間でも、ナナシを魔物とか、冗談にもつかない話で盛り上がるのなんて……。とてもじゃないが一緒に酒なんて飲んでいられないだろ……。)



 仲間への信頼と仲間への失望が入り混じり、頭の中はぐちゃぐちゃだった。


 青白い月を見上げ、やりきれない思いを思うように言葉にする事ができず、誰にも聞こえないような小さな声で、俺は静かに唸り声をあげていた――


 


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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