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いじめられっ子、世にはばかる 〜英雄に憧れて〜  作者: 十三夜
第6章 豊穣神と使徒たち
284/456

語った後で……①


           ♢



「……って事で、私たち3人は生き残れたの。」




 足を組みながら椅子に腰掛け、自分たちが経験してきた長い長い歴史の解説を話し終え、エルフの娘はテーブルに置かれた紅茶のティーカップに口をつける。

 


「「 ……………。 」」



 魂のやり取りを終えてすぐ、大量の情報の中に身を置くこととなった者たちは、エルフの娘の話が一段落した事で、やっと身体の力を抜く事ができ、総じて深く息を吐き出した。



 流れのままに、森の女王の私室へと通され、チーム【アリウム】一向は、当事者の一人である森の女王アエテルニタスの口から、切々と語られる事となった。


 歪んだ歴史がどのように出来上がったのか、そして、今まで敵として考えていた混沌王ヒルコと悪なる神ウカ、他の使徒たちとの関係がどんなものであったのか。

 

 以前、氷狼フェンリルからも、作られた歴史について話を聞いていた。しかし、氷狼からは、混沌王ヒルコについては大した情報を明かされたわけでは無かったし、ましてや、作られた歴史の話について、今回初めて耳にすることになった者もいる。



 一同が感じているこの重たい空気は、悪なる神ウカが受けた理不尽な扱いに対してだけでなく、彼女に仕えた使徒たちの物語、三大神と呼ばれる神々のまるで人じみた関係など、今まで教えられたことのある歴史の裏側が、愛憎複雑に絡み合う物語であった為。


 その感覚は、初めて裏の歴史を知った者と、そうでない者に違いはなかった。

 そんなメンバーのこの話に対する知識量や気持ちの温度差など関係なく、なんとも言えないやりきれない気持ちにさせる物語。



 そう、森の女王であり、ハイエルフの長、アエテルニタスがみんなに語った真実の歴史物語は、皆の心を深く沈ませるものであったのだ。



「……あの、ドワーフ王はどうなったのですか?」


 考察のスキルを持つアメワが、紅茶のカップをテーブルに置いて一息ついた森の女王に質問した。



「――ワシなら、ほれ、この通り元気にやっとるぞ。」


 突然、奥の部屋から現れた車椅子の男が、森の女王が答えるより早く語り出した。

 チーム【アリウム】のメンバーは、思いもよらない方向から声をかけられ、一様に驚いた表情を車椅子の男へと向ける。


「ちょっと、ダンキル。驚かすなんて、ほんと意地が悪いんだから。これだから、穴倉爺は性格が悪いって言われるのよ!?」


 森の女王が呆れたように、両手を広げて戯けながら、車椅子の男に悪態をつく。



「ふんっ、性悪エルフに言われたくないわい……。だいたい、お前さんの話が長すぎるんじゃ。おかげで、その子らに挨拶するタイミングが無かったんじゃからの。」


 見たところ、足だけでなく、車椅子を動かす両腕も不自由な様子。苦労しながらこちらへ移動する様子を見かねて、聖職者であるソーンが車椅子の後ろに周り、移動を手伝う。



「おぅおぅ、人族の娘さん、ありがとよ。まったく、長く生きているだけの性悪エルフと違うて、心根の優しい娘っ子じゃ。助かったよ。」


 森の女王への悪口を散りばめながらも、ソーンに車椅子を押してもらって、森の女王の隣に落ちつく。

 そして、ソーンに改めて御礼を言うと、徐に自己紹介を始めた。



「――初めてお目にかかる。ワシが、元北西のダンジョンの管理者、ドワーフ王ダンキルじゃ。この通り、手足は麻痺が残ってしまっての。回復魔法も色々と試したが、完全には治らなんだ。ガッハッハッ!」


 自ら不自由な身体の説明をしながらも、そんなドワーフ王には悲壮感は感じない。それどころか、豪快に唾を飛ばしながら笑っている。



「まぁの。麻痺は残って、戦うことは難しくなったが、ほれ、お前さん達が今回の魂の封印に使った機械人形=ゴーレムはワシが作ったんじゃぞ。指先は器用に動かせんが、こう、魔力を上手く練り込んでだな――」


「何を言ってるの!? 機械人形=ゴーレムは、私のアイデアでしょ? ただちょっと、技術的に難しい部分の作り込みを頼んだだけじゃない! あんただけで作ったみたいな事、言わないでくれる!?」


「おぅおぅ、また性悪エルフの負けず嫌いが始まったかの。ほとんど全体的にワシの魔力操作で作り込んであるじゃろが! まったく、口だけ達者で無茶な指示ばかり出すくせに、良くそんな事が言えるわいっ!」


 ヒロたちチーム【アリウム】の面々を置き去りにして、口喧嘩を始めた2人。魂の封印作業の時のクールなイメージの森の女王とは明らかにテンションが違う。しかし、そんな喧嘩中の二人に対して、誰も仲裁に入ることはしなかった。

 先程の森の女王が語った物語を信じるならば、おそらくこの2人は、とくべつ()()()()はず。ならば、とりあえず、自分たちの考えをまとめるのが先決であろう。


 2人は、しばらく額を付き合わせて罵り合いを続けていたが、歴史学者ライトの現状確認の問いかけに深く頷いて肯定した。


「あなたが使徒の1人、ドワーフ王ダンキル様でしたか。まさか、森の女王アエテルニタス様と一緒に機会人形=ゴーレムの研究をなさっておられたとは、驚きました。」


「まぁの。ギルのように武器を振り回す事は出来なくなってしまったからな。この性悪エルフがウカ様とヒルコを助ける方法を考えついたとか言いだしたのでの。ま、手伝っておるのじゃ。」


「黙って聞いていれば、いけしゃあしゃあと……。狐面が使った火の魔法で全身大火傷。動く事すら出来なかったあんたを、そのくらい動けるまで面倒見てあげたのよ? それを感謝するならわかるけど、言うに事欠いて私の手伝いをしてるですって? そろそろ痴呆にでもなったのかしら? このボケ老人は。」


 なんでこうなるのか。

 せっかく話が進みかけたと思った所なのに、またしても罵り合いが始まってしまい、一同はまた、深くため息をつくことになっていた――

みなさん、評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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