B級パーティーの本音
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「あの子、街で魔物の子供って噂されてる子よ?助ける事なんてなかったのに…。」
【アイリス】の唯一のヒーラーである聖職者のソーンが、ナナシが何度も振り返り頭を下げながら離れていく姿を横目に見ながら、パーティーのリーダーである俺に声をかけてきた。
――えっ!あの少年のどこが魔物だって?!
俺は驚いてソーンの顔を伺った。
「白い髪に、白い瞳、まるで伝説のヴァンパイアのようだ。魔物の子供と言われるのもよくわかる。」
タンク役を務める、普段から無口な重戦士のパーンが、ソーンの言葉の後に呟いた。
――いやいや、あんな少年つかまえてヴァンパイヤとか?! そりゃありえないだろ!
「まあね、ダンジョンの裂け目から落とされて助かった挙句、あれだけの魔物がいるダンジョンを、一人丸腰で歩いていていたなんて、かなりヤバい感じだよね。」
魔術師のライトが軽くナナシを馬鹿にしたような感じでパーンの言葉に続いた。
――お前、結構ナナシと喋ってじゃないか?!
それに、一つ目の才能のおかげでなんとかなったんだって、ナナシが言ってたの聞いてただろっ?!
「え〜、マジか〜……。そんな嫌な感じはしなかったけどな〜……。でも、みんなが言うならそうなのかもね〜。」
弓使いでレンジャーのユウは、メンバーの言葉に無条件に同意してしまい、自分の意見は決して言わない。
――だいたいにして、一番最初にナナシを見つけて、助けに向かったのお前だろ?!
「――ちょっと、みんな何言ってるんだよ! 確かにダンジョンで出会った時はびっくりしたけど、そんな意味不明な噂されて、街中でイジメにあってるかもしれない子供に対して、なんで大人のお前たちが追い討ちかけるような事を言うんだ? 子供を守り育てるのが俺たちみたいな大人の役目だろ? なんで――、」
俺の言葉を遮るように、ソーンが口を挟む。
「だから、ダンジョンを出るまでは我慢してたじゃない? 本当なら、魔物は排除対象でしょ? ましてや、パーンが言うようなヴァンパイアだったら大変なことだわ。まぁ、噂だけではあの子を裁けないから見逃したけど?」
――よくわからない噂や、ちょっと人と違う見た目だと言うだけで、簡単に人を判断して蔑むなんて……、俺の仲間はこんな事を平気で言ってしまう奴等だったか?
今まで信頼していっしょに困難を乗り越えてきた仲間たちに、ケインはそうとは口に出せずに言葉を飲み込んだ。
これを言ったら、自分が仲間から非難されるような気がしたから……。
でも、
――みんな一緒に英雄になろうって誓ったのに。弱いものイジメなんて、英雄を目指す奴がすることじゃない!
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