ぼっち少年、冒険者ギルドを尋ねる
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【リンカーアーム】と呼ばれるダンジョンがある。このダンジョンを中心に人が集まり、街はどんどん大きくなっていった為、自然とその街の名前は【リンカーパーク】と呼ばれるようになった。
ダンジョンのある街には冒険者が集まる為、必ずその街には冒険者を管理、サポートする冒険者ギルドが存在する。ギルドが仲介して、魔石や素材の売り買いをする為だ。個人間での売買は、トラブル防止の為、基本的には国が禁止している。
なので、人も金も集まる街の中心になっていて、冒険者ギルドはかなりの力を持っているのだ。
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冒険者ギルドの扉の前に、白髪に白いの瞳の少年が落ち着かない様子で立っていた。
ベルトには、小石の詰まった麻袋を下げ、右手には、手頃な木の枝を選んだのであろう、60cm程の硬い木の棒を持っている。
ボロボロの服にボロボロのブーツと、いかにも貧相な格好の少年だが、覚悟を決めたのか、ギルドの頑丈そうな扉を押した。
ギルドの中は大勢の冒険者で溢れている。人族以外の種族もたくさん居るようだ。みんな、ダンジョン探索や冒険者ギルドからの様々な依頼をこなし、活発に活動しているのだ。
少年は、正面にある何ヶ所かのカウンターの中で、丁度空いていたカウンターの受付の女性に声をかけた。
「あ、あの……すいません、冒険者になりたいのですが?」
「はい? あなたがですか? 見たところ、まだ13歳にはなってらっしゃらないご様子ですが?」
こんな貧相な子供相手でも、とても丁寧に対応してくれる。
「じゅ、13歳です。ちゃんと、じょ、条件は満たしています。手続きを お、お願いします。」
ドキドキして言葉がちゃんと出てこない。だいたい人とまともに話すのも久しぶりなのだから。
「13歳というなら、二つ目の才能が授けられているはずですが、どんな才能ですか? 一応、ギルドでも確認できますが、どうしますか?」
――えっ!! そうだったのか!!
いっきに俺の顔が青ざめる。
――13歳にならないと冒険者になれないというのは、二つ目の才能が13歳になった時に授かるからなのか!!
「ご…ごめんなさい…まだです…まだ才能は授かっていません。し、失礼しました……。」
そんな知識、孤児院では教えてくれなかった。それとも俺にだけ教えてくれなかったのだろうか。
悔しさと恥ずかしさで涙が溢れそうになるのを必死に堪え、カウンターを後にしようとする。
「ちょっとまって! 冒険者登録はできないけど、素材や魔石の買取なんかは冒険者でなくてもできるから! もし、そういう事があったなら、ギルドに持ってきてみてね。」
小走りにギルドから去ろうと扉に手を掛けた俺に、その受付の女性は、態々、カウンターから飛び出してきて教えてくれた。
「――わ、わかりました? お、お、お気遣いいただきありがとうございました。嘘をつ、つこうとしてごめんなさい。」
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ギルド前にある水飲み場で水を飲む。
年齢ごまかし作戦は大失敗。冒険者になるには二つ目の才能を授からないとダメだったとは……
これからどうしようか、水飲み場の縁に腰をかけ、ボーっと考えこんでいた。
そこに声を掛けてきた冒険者がいた。
俺を騙してダンジョンの裂け目に突き落とした、あの時の三人組だった――