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機械人形①


―――!?



 少年のリュックから這い出し、上半身が出たところで、その機械人形=ゴーレムがリュックから転げ落ちた。


 体長60cmほどのその人形は、奇妙な動きで立ち上がり、テクテクと食卓のテーブルへと近づいてくると、今度は、テーブルの足を嬉々と登り始めた。


 上手く身体を操れないのか、なかなかテーブルの上に登れないでいる人形を、近くで見守っていた竜騎士が、そっとその身体を持ち上げてテーブルの上へと立たせた。


 突然声を発した人形に、その場の誰もが驚きを隠せずにいる。人形は、まるで自分を誇示するかのように、両手を腰に添えて胸を張って立っていた。


 その顔には、目のような窪みが2つと、鼻のような盛り上がりが1つ。周りを見回してから、少年を正面に見据え、口は無いのに、なぜかまた声を発した。



『――やあ、皆さん初めまして。私は、アエテルニタス。ダンジョン=インビジブルシーラの使徒だよ――』


 聞こえる声は、所々、何か雑音が混じっている。

 そして、その声の主を名乗るアエテルニタスという名前が、その場にいる全員を驚かせた。



「アエテルニタスとは、あの悪なる神の使徒、ハイエルフのアエテルニタスですか!? 」


 思わず、悪なる神という単語を出してしまい、ソーンはハッとして口を塞ぐ。

 氷狼フェンリル、吸血鬼王ブラドと出会い、悪なる神と呼ばれていた存在が、実は豊穣神ウタであると教えられ、自分の凝り固まっていた考えを改めたはずであったのに、長年教え込まれ、頭に刷り込まれた太陽神の教えの影響が、まだまだ抜けきれていない自分に気づき、気持ちが落ちこんだ。


 しかし、ダンジョン=インビジブルシーラの使徒は、大袈裟に笑い飛ばした。


『――あはははっ! そうそう、悪なる神の使徒、ハイエルフのアエテルニタスとは私の事だよ――』


 

 おそらく女性であろうと想像できるその声は、悪意の混じった悪なる神の使徒という呼び名に対して、全く気になどしていないようだった。



『――いやいや、ほんと、サムがこちらに人を送るっていうから、ずっと待ってたんだけどさ。なかなかダンジョン=インビジブルシーラまで来てくれないからさ。ちょっと様子を見にきてみたんだよ――』 


 軽妙な調子で言葉を紡ぐ機械人形。

 ヒロが、今、目の前で話している、この使徒の元へ向かう予定であったことは、みんな承知している。だがしかし、その本人とこうやって話しているという現実に、誰もが対応できていなかった。



『――そしたら、なんだい? なんか面白い事になってるじゃないか――』



 アメワは、使徒と名乗る機械人形から発せられる、いかにもさっきまでの仲間のやり取りを馬鹿にしたような発言に腹が立った。


「何も面白いことなどありませんが? 我々は真剣に仲間の心配をしているのです! 」


 つい声を荒げてしまったことに、一瞬後悔したが、周りを見れば、他の仲間も腹を立てている事は一目瞭然。アメワに続けとばかりに、機械人形に反論しようと立ち上がる。しかし、



『――あぁ、ごめんよ。君たちを馬鹿にしてるわけではないんだ。この通り、謝るから席についておくれ。すまなかった――』


 ペコリと頭を下げる機械人形。その滑稽な動きに毒気を抜かれ、立ち上がった面々は渋々席に座り直す。ただし、ナミはその牙を剥き出しにし、ナギは赤い瞳を細めたままで、明らかに敵意を消そうとはしていなかった。



『――まぁ、お嬢ちゃんたちも、そんな怖い顔をしないでさ。面白いってのは、そこの白髪の少年の有り様が、ってことさ――』


 ムッとしたまま、テーブルに両手をついて睨む二人をお構いなしに、機械人形は話し続ける。



『――そこの少年、二人の精神が混在しているんだろ? そんな珍しいこと、神世の時代から生きている私でさえ聞いた事がないんだ。こんな面白い人物が居たなんて、まさに大発見だと思わないかい――』


 表情など無いはずなのに、何故か顔が紅潮して見えるかのような機械人形は、まさに興奮しているようだった。



『――しかも、さっき少年が話していた内容。これがまた面白いっ! そこの魔術師君もそう思わないかい?――』


 急に話を振られたライトは、何が面白いのかわからず、逆に機械人形に問うた。


「……若輩者のため、アエテルニタス様のお考えが理解しきれず申し訳ありません。良ければ、何がどう面白いのかご教授いただけないでしょうか。」


 冷静に機会人形と話すライト。機械人形は、少しガッカリしたような素振りをしながら、テーブルの上で胡座をかいた。



『――なんだ、魔術師君は研究者ではないのかい? つまらないな〜……。君なら話が合いそうだと思ったけど、残念だ――』


 なんとも人を馬鹿にした様な態度なのだが、先程からのやり取りから考えるに悪気はないのだろう。ライトは笑みを崩さずに、機械人形に話を促した。



『――まぁ、しょうがない。実は私は研究者でね。今は長い事、機械人形=ゴーレムを研究している。君たちの目の前で喋っている機械人形も、私が作ったものなんだ。こうやって、遠隔で操作する事もできるんだよ。なかなか面白いだろ?――』


 サムギルド長からは、この機会人形がアエテルニタスの元へ案内してくれると言われていたが、こういう事だったのか。


 そして、アエテルニタスから、この機械人形を研究する意味が語られる。


『――私は、ダンジョンから完全には離れる事ができない使徒を機械人形に()()事によって、自由に動けるようにしてね。そうする事によって、みんなでヒルコをなんとか出来ないかと考えているんだ――』


みなさん、評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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