ぼっち少年、おしゃべり妖精に感謝する
――リーン♪リーン♫
妖精のベルが飛び回ると、鈴の音がなっているように聞こえる。
しかし、それにしても喋る喋る……。もしかして、この妖精さんも僕と同じでひとりぼっちなのかな?
あーだの、こーだの、一つ終われば次のお話。
妖精さんに、一方的に話させてるのもなんなので、僕からも話を振ってみた。
「ベルさんはこの森に詳しいの?」
『はぁ? なんで私がこの森に詳しいと思うわけ!? もしかして、私を見張ってたのね! やっぱりストーカーなのね!? まったく、これだから人族は油断ならないのよっ!!』
「いやいやいや……僕はそんなんじゃないよ……。」
まったく想像力豊かな……。というか、全くこちらの話を聞いてくれてないよ……。
人族は妖精族を捕まえてあんな事やこんな事させるとか、私たちが可愛すぎるからストーカーが絶えないとか、あなたも私が可愛いから声かけたんでしょとか……。
1つのお話が、4つにも5つにもなって話を膨らんで返ってくる。
まぁ、賑やかで、騒がしい。
――でも
――なんだろ、これって楽しいかもっ!!
新しく生まれ変わってナナシとして生きてきた。でも、こんなに俺に対して分け隔てなく話しかけてくれた相手はいなかった。
いつも、一人。
悪口は言われても、楽しく会話することなんてなかったんだ。
「ふふっ。ベルさんと一緒だと楽しいね。」
つい、心の声が漏れてしまった。
『――っ!? はぁ!? あんたが全然喋らないから、私が気を遣ってあげてるんでしょ! 感謝しなさいっ!』
――リーン♫
何か妖精の気に触ってしまったのか、一際、高い羽の音を響かせ、さっさと先へ飛んでいってしまった。もっと話をしていたかったのに……。
『さっさと来なさい!人族は飛べないし、ノロマなんだからっ! ベリーの木はこの先よ!』
遠くからの大きな声にうながされ、慌てて走って妖精に追いつく。
すると、たくさんの花が咲いている素敵な場所が目の前に広がった。こんなに綺麗な場所が森の奥にあったなんて……。
『ここは、私のお気に入りの場所なんだから、他の人族に話したりしたら承知しないんだからっ!!』
そう言って、薄い胸を張ってドヤ顔で見下ろしてくる。
あんたは幸薄そうだし、無害な顔をしてるから、特別なんだからねって……なんか、サラッと悪口が混ざっているような?
でも、助かった……これで、なんとか食べ物にありつけそうだ――
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