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リンカータウン防衛戦③


           ♢



「アメワ! さっき教えた作戦は覚えたよね!」


 急にかけられたヒロからの問いかけに、アメワは一瞬背中を飛び上がらせたが、すぐに頷いた。



「サムギルド長! 僕は前線に向かいます! ギルド長たちは、予定通り陣地を利用した防衛戦を行ってください!」


 サムは、ヒロの言葉に頷く。



「ギースさん! アメワとナミの事、よろしく頼みます! 上手く時間を稼ぎながら、安全を確保して戦ってください! 戦い方の指示はアメワが出します!」


「――承知っ!」


 竜騎士は、自らの槍を掲げて返事をした。



「――ナミっ! アメワの指示に従って、一人で突出したりするんじゃないぞ! ニールもお前に任せる! 仲間の命優先で戦うんだ! いいな!」



 ヒロの普段と違う、鬼気迫る物言いに、一瞬気圧されたナミだったが、すぐに立ち直ってヒロに向き合った。



「――ちょっと、ヒロ兄! どうするつもり? まさか、此処を私達に任せて、一人で前線に向かうつもり!? 無茶だって!!」


 ナミは半ば絶叫するように問いかけた。



「――僕だけなら、大丈夫! 俺の【障壁】の力は、ちょっとやそっとじゃ破られないっ! だから、安心して此処を守り抜いてくれ!」


 ヒロは、そう言うと、今度は陣地にいる冒険者全員に向かって言い放った。



「――僕は、B級冒険者ヒロっ! 鉄壁の防御を持つ冒険者だっ! みんな、俺が居る限り、魔物の有象無象に負けることはない! さあ、気合いを入れ直せっ!」


 そして、簡易砦をスルーしてこちらに向かってきている魔物の集団に向けて、左手を翳した。




「――サクヤ! ハニヤス! ミズハ! 一緒に戦ってくれ! いくぞ、【水蒸気爆発】っ!」



 ミズハが水球を飛ばし、俺が投げた石をサクヤとハニヤスが同時に変化させる。そして、真っ赤に熱を帯びた火山礫が水球にぶつかると、その水球が大爆発を起こした。




  ドド――ンっ!!




「――見よ! これが僕の極大魔法だっ! 僕はこれから前線に突撃する! みんな、この陣地は任せたぞっ!」


 盛大な爆音を轟かせ、特大の爆発は、こちらへと向かってきた魔物の集団を吹き飛ばした。その数は、100か、200か……。

 この際、正確な数字はどうでも良かった。

 

 そう、冒険者たちに、「戦える」と思わせる事が目的だったのだから。


 

「――突貫するっ!」



 ヒロは、右手に魔法剣を握り、それぞれの精霊たちに魔力を分け与えながら、自らの【障壁】に反発の意識を込める。

 分厚い鈍色の雲。この先行きの見えない戦いを表すような曇天の街道に向けて走り出した――




          ♢




 クレージュは、今まで殺到して来ていた魔物の意識が、後ろの爆発に惹きつけられたのを感じた。



「――大丈夫か!」


 隙をついて、副官に取り憑いたゴブリンを叩き落とし、副官を立ち上がらせる。

 魔物はまだまだ押し寄せているが、後方へと意識が向けられた分、自分たちへの圧力が減った。



「――すでに砦の中に魔物が入り込んでいる! それぞれ円陣の防御体制で魔物に対処せよっ! 大丈夫! まだまだやれるっ! 踏ん張れっ!」


 クレージュは、既に無くなった砦の有利を諦め、それぞれ防御力の高い陣形で時間を稼ぐ方針に切り替えた。意識が分散した魔物の群れならば、まだまだ耐えられるはず。そう判断したのだ。



(……あの大爆発、冒険者か? 我が身の力不足を嘆いている暇はないな。今は全力を尽くすのみ!)


 目の前の魔物を少しでも減らすこと、それこそがリンカータウンを護り通す一助になることを信じて――




           ♢




「ハニヤスっ! 散弾っ!」

 

 俺は足元から拾い上げた石を魔物の群れに向かって投げ放った。


 俺がまとめて投げた複数の石が、ハニヤスの力によって、細かく、そして広範囲に広がって魔物たちの身体に穴をを穿つ。


 二度、三度と【散弾】を繰り出しながら、俺は火蜥蜴に炎の舌を振り回させた。


 その炎の鞭とも言える、火蜥蜴の炎の舌は触れた魔物たちを一気に燃え上がらせる。火力を上げるために、かなりの魔力を火蜥蜴に持っていかれるが、広範囲の魔物を巻き込むこの攻撃は、乱戦においてかなり役に立つ。



「――サクヤ、俺の左側の魔物を頼んだっ!」


 火蜥蜴にそのまま能力を維持させたまま、俺は魔法剣を握りしめて突撃する。

 


「ミズハっ! 前方の魔物の群れの上に、ウォーターボールを浮かべておいて!」


 俺は、近寄ってきたコボルトを魔法剣で切り裂きながら、波の乙女に支持する。

 指示に従い、波の乙女は、砦に群がる魔物の頭上に水球を5つ浮かべた。



「サクヤっ! ハニヤスっ! 火山礫頼むっ!」


 俺がまとめて投げた石が真っ赤に燃え盛る。

 それをスキルで【操作】する。

 



  ドドドドドド―――ンっっ!!!




 火山礫が吸い込まれた5つの水球が、一気に爆発して、簡易砦の東側にいた魔物たちが一気に吹き飛んだ。



「――まだまだっ! みんな行くぞっ!」


 

 俺は掛け声と共に身体に纏った反発の【障壁】を両手で突き出す。すると、砦の東側にしつこく取り憑いていた魔物をまとめて突き飛ばした。



「ハニヤスっ! ミズハっ! 特別性の泥沼だっ! めちゃくちゃ深く頼むっ!」


 精霊2人に頼んで、砦の東側に泥沼の堀を作り出す。これで、砦の国軍も東側からの攻撃を考えないで済むはずだ。


 特別深く泥沼を作っているため、かなりの時間を要してしまう。すると、とうとう俺にも魔物が殺到し始めてしまった。


 俺は、一度だけ魔法剣を振るうが、あまりの魔物の数に剣を振り抜くくとができない。



「――膨らめっ!【障壁】っ!」


 俺は剣を降るのを諦め、【障壁】を膨らませた。これで魔物たちは俺に掴みかかることができない。

魔力はかなり消費するが、捕まれたら動けなくなる。この戦い、絶対に魔物たちに捕まってはいけない。



「――おおおおっっっ!!!」


 俺は雄叫びをあげ、押し寄せる魔物たちに、再び

反発の【障壁】を放った――



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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