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リンカータウン防衛戦①

200話まで来ることができました!




           ♢



 北の街道に作られた、簡易の砦。


 そこから見える魔物の群れ。


 永遠に続くかとも思える魔物たちの列。


 国軍500人の指揮官であるバロン・ド・クレージュは砦に作られた物見台から、その長い長い列を眺めていた。



「……どこでこんな数の魔物が発生したというのだ……。」


 彼が国軍の指揮官としてリンカータウンに赴任してから5年。散発のゴブリン騒動などはあったが、これほどの規模で地上に魔物が発生したことは無かった。


 いや、この国の歴史を調べても、こんな大規模な魔物の大群が押し寄せるなどという事件は起きた事などないだろう。


 この国は、他の大陸から離れた小大陸ともいえる立地の為、国同士の戦争などとは縁のない歴史を歩んできた。その為、軍隊の規模は小さく、練度もそれほど高くはない。


 正直なところ、この砦に詰めている国軍の士気はかなり低い。この大量の魔物の数に圧倒されて、すでに逃げ腰となっているのだ。

 


 クレージュ自身は、武門に秀でた人物であり、この国の政治を司どる貴族の一門である。故に、我が身の武の才能には自信を持ってはいるのだが、如何せん、部隊の実力が低い。大群を相手にどこまで対抗できるか、かなり怪しいと考えていた。


 しかし、街を護る任務を与えられている以上、援軍が来るまでなんとか護り切るしかないのだ。


「……相手は、5千はいるだろうか……。さて、此奴らをどう奮い立たせればよいか……。」



          ♢



「……おい、どうするよ……。」


「……どうするって、どういうことだよ。」


「……いやさ、どう考えてもあの魔物の大群相手に、これっぽっちの軍隊とハリボテみたいな砦で防げるわけないだろ。」


「……そんな事言ったって、俺たちがやらなかったら、街が滅んじまうじゃねぇか……。」


「……いやいや、俺たちが頑張ったところで、結果は見えてるだろ。全滅して終わりだよ……。」


「……だからって、国軍の兵士だぞ、俺たちは。」


「……このままじゃ、俺たち無駄死にするだけだって言ってんだよ。」


「…………。」

「…………。」

「…………。」

「…………。」



           ♢


           

「……そうか、それでどの位の兵士が逃亡したのだ?」


「……半分ほどは逃亡したかと……。」


「まったく、国に忠誠を尽くし、民の為に働くべき兵士が、護るべき民を放り出して逃げるとは……。情けない限りだ。」


 魔物の群れは、すぐそこまで来ている。

 逃げだした兵士に構っている暇は全くない。

 クレージュは、自らを奮い立たせるように、残る国軍の兵士に呼びかけた。



「――諸君、魔物の群れは直ぐそこまで近づいているっ! 相手は大群であり、正直、撃ち倒す想像はし難い! しかし、我々がここで踏ん張らなくては、戦う力の無い無垢の民が魔物の犠牲になるだろう! そう女、子供に至るまで全ての民がだっ! そんな事はあってはならない! 


 我々は、国に仕える兵士である! これは、偏に国の民に仕えているのと同義なのだ! 我々が民を護らずして、誰が彼等を護るというのだ! 諸君、奮い立てっ! 必ず守り通そうっ!


 直に首都の国軍本隊の救援部隊もやってくるはずだ! それまで、私と一緒に戦ってくれ――!」



「「「 うおぉぉぉっっっっ!!! 」」」


 さすが、この絶望的な状況でもこの場に残った兵士たち。腹の底まで響き渡るような雄叫びで、指揮官の呼びかけに応えた。



「――全員で弓の第一射を放ったのち、前列は槍襖により砦に近づく魔物の排除、中列、後列は、矢が無くなるまで弓を撃ちまくれ! 第一射用意っ!」


 兵士たちの声が止み、一瞬の静寂がこの場を支配する。



「ギャ、ギャ、ギャギャーーっ!!」


 砦まで、100メートル程の距離まで近づいた所で、魔物たちは一斉に咆哮を上げる。

 先頭は、素早さに勝るコボルト達。砦に籠る兵士の姿に気づくと一斉に走り出した。



「――相手はひ弱なゴブリンやコボルトだっ! 大した相手ではない! よく引きつけよっ!」


 砦まで約30メートル。



「――撃て〜っっっ!!」


 一斉に放たれた弓矢が、所狭しとひしめいている魔物の群れに降り注ぐ。

 外しようがないほどに密集した魔物たちは、降り注いだ弓矢に射抜かれ、バタバタと倒れていく。そして、倒れた魔物に躓いた魔物が将棋倒しになる。


 そこへ、第二射、第三射と矢は降り注いだ。

 放たれた弓矢は、そのほとんどが魔物たちを射抜いているが、しかし、後から後から湧き出てくる魔物の数は、やはり尋常ではなかった。倒れた魔物を踏み越えて、次々と後続の魔物が押し寄せてくる。



「――相手は貧弱な魔物ばかりだっ! 必ず凌げるっ! 撃って、撃って、撃ちまくれ〜っ!!」


 指揮官であるクレージュ自らも弓を構え、次々に矢を放つ。しかし、すでに先頭のコボルトの群れが砦へと取り付き始めていた。



「「 ガルルルっっ!!! 」」


 ある程度、高く積み上げた土嚢により、壁を超えられずにいるコボルトの群れに、武器を持ち替えた前列の部隊が、壁の上から槍を突き立てる。


 ここでも、隙間なく押し寄せる魔物たち相手に、槍を突き出せば刺さる状態。次々と魔物たちを刺し殺していく。


 だが、徐々に積み上がる魔物の死体が、押し寄せる魔物たちの足場となり、兵士たちの高さによる有利が無くなろうとしていた。



(チッ……、こんなに早く砦の有利が無くなろうとは……。やはり、数が多すぎる……。)


 クレージュは、心の中で舌打ちした。例え、逃げた兵士がそのまま一緒に戦っていようが、この大群を前にしては、ほとんど状況は変わらなかっただろう。



(しかし、もうしばらくは時間を稼げるかと思ったが、あまりにも我らが脆弱すぎた……。)


 すでに、前列の槍襖だけでは堪えきれず、中列、後列も槍を持ち、砦の壁を越えようとする魔物たちを迎えうっていた。


 そして、取り憑く砦から溢れた魔物が、砦の左右の柵を壊して、街へと向かい始めていた。



「――くそっ! 後ろの冒険者達よっ!頼んだぞっ!」


 すでに砦は、魔物の大波に呑み込まれ、街へと向かう魔物に対処などできない。少しでも魔物の数を減らす事が、今、クレージュたち国軍の兵士がやれる最低限であった――

    

なんと、200話まで書き進める事ができました!

今日で書き始めてから丁度3ヶ月です。皆さん、楽しんでいただけてますか?

誤字脱字も多く、お見苦しい点も多々あるかと思いますが、これからも楽しみながら作っていきます。

是非、感想など書いていただければ幸いです。今後もよろしくお願いいたします。

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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