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探索


        ▼△▼△▼△▼△▼



 おしゃべり妖精は、4階の鍵の掛かっている怪しい部屋に潜り込んでいた。ドアの下に空いていた、狭い隙間に羽を引っ掛けながら、無理矢理忍び込んだのだ。


 しかして、そこは大学の薬品庫のようであった。

 目的の古竜の卵や、卵を強奪した狐憑きのメンバーなどは、全く見当たらない。

 

 おしゃべり妖精は、せっかく忍び込んだのに無駄足だったかと、傷のついた羽をさすった。



 ふと、棚を見渡すと、そこにはかなりの数の薬品の瓶が並んでいる。部屋の入り口が厳重に鍵をかけられている割に、中の棚は無造作に解放されている。中央には薬品の整理に使うのか、大きめのテーブルが置かれ、白い布が被せられていた。


 おそらく目的の物は、地下に行った蜘蛛人族の方にあるのだろうと、少し悔しかったが、元来、外の世界への興味が強かったおしゃべり妖精は、せっかくだし、面白い物は無いかと棚を見てまわる事にしたのだ。



『何よこれ? ポーションなの?』


 小さな灯取りの窓しかないこの部屋は、部屋の四方に薬品棚がぎっちりと置かれている。薄暗くてよく見えないが、おしゃべり妖精は、ドアの正面にある【ポーション】との表示が貼られている棚に立った。


 上級ポーション、スタミナポーション、魔力回復ポーション、筋力増強ポーション、植物活性ポーション、魔物避けポーションなんてものもある……。


 様々な種類が置いてある中、【危険物・廃棄予定】と書かれた箱を見つけた。箱の淵に降り立って、その中を、覗いてみると、そこには、どんな実験で作られたのか、それとも偶然できてしまったのか、毒々しい色をした、いかにも危険そうに見える薬品が集めらていた。



『まったく、こんな危ないものを無造作に置いてるのね。嫌だ、嫌だ。』


 流石のおしゃべり妖精も、こんな危険物に興味はない。他の棚の様子を見ようと、箱の淵から飛び立とうとした時、不意にさっきドアの隙間を無理矢理潜った時に傷ついた羽が痛んだ。



『――うそっ!? きゃっ!?』



 羽の痛みでバランスを崩すと、そのまま箱ごとひっくり返ってしまったのだ。

 派手な音を立てて、中の瓶が割れる。箱の中は、さながら割れた瓶から流れ出した薬品の流壺、様々な謎の薬品が混ざり合い、おしゃべり妖精はその中に落ちてしまった。



『くぅ〜……、嫌〜……、助けて、ヒロ……。』


 

 薬品を頭から被った妖精は、全身の痺れと、身体を溶かすような痛みに身体を震わせた。



――あぁ、私はこのまま溶けて無くなってしまうのか……。妖精は、愛する白髪の少年の顔を思い浮かべながら、涙をこぼした――



 すると、混ざり合った薬品に、妖精の涙が反応して、そこからまた変化が始まったのだ。妖精の落ちた薬品の液溜まりは、七色に光りだし、気を失っている妖精の身体を徐々に変化させていく……。



           ♢



 どの位の時間が過ぎたであろうか。

 目を開けると、いつもと見える景色が違う。

 広く見えていた部屋が狭くみえる。

 全ての物が小さく見える。

 身体の痛みは無くなっているし、痺れもない。


 身体を起こすと、いつも自分が着ている服を着ていない。何故か彼女は裸であった。


 薬品で服が溶けてしまったのか。こんな状態では白髪の少年に会えないなと、辺りを見回し、服の代わりになるものを探そうと、その場に立ち上がる。


 すると、飛んでいる訳でもないのに、自分の視界がとても高い位置にある事に気づいた。


 棚に置いてあるポーションに手を伸ばす。


 先ほどまで、自分の背丈と同じ大きさだったポーションの瓶が、片手で持てるのだ。


 おしゃべり妖精は、その時初めて、自分の身に何が起きたかを理解した。



――私、身体が大きくなってる!?


 


        ▼△▼△▼△▼△▼




「――って訳よ! どぉっ! 驚いた?」



 妖精の身体が人の大きさになる薬って、どんな薬だよ……。ていうか、やっぱりおしゃべり妖精を1人で探索させるべきじゃなかった。

 でも、なんか、とんでもない失敗をしたはずなのに、本人はあっけらかんと、しかも大きな身体になれたことを喜んでいる。



「ベルさんにとって、原因不明でも、身体が大きくなったことは嬉しいことなの?」


 俺は、判断がつかず妖精に問いかけてみた。


「当たり前じゃない! これであなたと並んで歩けるんだもの! ヒロは嬉しくないの? 私と腕を組んで歩けるのよ!」


 そう言って、俺の腕を取る妖精。いや、もう妖精ではないのか?



「ほぇ〜、お前さんと居ると飽きないの〜。そんな別嬪さん、何処に隠しておった? ここに来た時は居なかったじゃろ?」


 老人は不思議そうに大きくなったベルを見ている。まさか、この女性がリュックに隠れて忍びこんだ妖精だとは想像つくまい。



「すいません、この子が、大学内を見学中に、何か薬品の瓶を壊してしまったようで……。」


「それは、ワシもその子の話を聞いておったから解っとるよ。しかし、4階の薬品庫には鍵がかかっていたはずなんじゃが……。」


 

 どう考えても言い訳なんか思いつかない。俺が頭を抱えて悩んでいるというのに、大きくなった妖精はニコニコしてるし……。


 すると今度は、側に座っていた機械人形=ゴーレムのヒルダが急に立ち上がった。



「ヒロ様、古竜の卵と、ローブの集団を見つけました! 古竜の卵に魔力を注いでいて、今にも卵が孵りそうです。急がなくては手遅れになってしまうかもしれませんっ!」


 おおう!


 怒涛の情報ラッシュで頭がパンクしそうだ……。


 でも、最優先は古竜の卵の奪還。やるしかないか!


 


    

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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