B級パーティー、子供を助ける
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(何あれはっ? 魔物かしら? 子供? )
斥候役を勤めるレンジャーのユウが、パーティーの後列に要警戒の合図を送る。
(嘘だろ!? こんな所に子供が1人でいるのか? ここはダンジョンの地下17階だぞ? )
ユウの合図に即座に反応した、B級パーティー『アイリス」のリーダー、ケインは剣の柄に手をかけて、警戒を強めた。
(白い魔物? アルビノのインプか? 新種の魔物だろうか――)
ケインは、即座にパーティーメンバーへ、戦闘体制をとるようにハンドサインで指示する。
階段の前でしゃがみ込んでいる魔物を取り囲むように5人は配置した。
それぞれ、いつでも魔物からの攻撃に対処できるように注意しながら――
「こんな所に子供?!どういう事?!」
目の良いレンジャーのユウが驚いて声をあげてしまった。そう、そこに座り込んでいたのは、白い髪の子供だった。
名前をナナシというそうだ。
ナナシという少年の話によれば、荷物持ちのポーターとして雇われたのに、雇い主の冒険者達に自分のリュックを奪われた上、ダンジョンの裂け目につき落とされたんだという。
――とんでもない高さだぞ?
とても信じられない話に動揺する。俺たちを騙しているのだろうか。
――どうやって助かった?
普通の人間では助かるはずかないのだ。しかし、嘘を言っているようには見えない。
――やはり魔物ではないのか?
俺たちが幻術にかけられた可能性も考えなくてはいけないか。だが、動物系の魔獣しか出ないこのダンジョンで幻術というのは、考えづらい。
ケインは色々と考えを巡らせていたが、ユウが上手く会話を進めて理由を聞きだすと、ナナシに授けられた第一の才能のおかげで助かったのだと言うのだ。
俄かには信じられない。あの高さを落とされても助かるような才能ってなんだ? 体力増幅系だとしても耐えられるわけがないし、空中に浮くことができる才能なんて聞いたことがない。
ナナシ本人も自分の才能についてまだよくわかっていないらしく、説明もあやふやだった。
よくよく聞けば、孤児院で生活しているそうで、余裕の無い孤児院では、才能について、名前以外は教えて貰えなかったそうだ。
お前の才能は、ただただ意味のわからない、役に立たない才能だろうと言われていたらしい。
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「いやぁ、ダンジョンに子供がいるとか、びっくりしたよ。魔物かと思った。」
「まったくだ。なんでこんな所に君はいるんだ? ほんとに魔物じゃないよな? ほんとはインプとかだったりしないよな?」
そんな話しをしながら、隊列の真ん中にナナシを配置しながらダンジョンの出口まで送り届けることにした。
魔物かもしれないとの警戒は怠る事はできない。 魔術師のライトは用心深く少年の様子を伺いながら歩いている。
でも、子供をこんなダンジョンの奥に置いていけるわけがない――
酷く顔を顰めて歩くナナシに携帯食を与え、励ましながら歩く。
なんとか出口が見えた。ナナシを出口まで無事に送り届けることができたのだ。
程なく、ナナシに別れを告げる。
何度も何度も頭を下げられ、御礼を言われた。
別れた後も何度も何度も振り向いては頭を下げていた。
「不思議なこともあるもんだな。まさかダンジョンで子供を拾うとは。」
あはは、とユウと笑いあっていた時、メンバーの1人、聖職者であるソーンが端正な顔をしかめながら言った。
「あの子、街で魔物の子供って噂されてる子よ?助ける事なんてなかったのに……。」
えっ、なんだって? どういうこと――