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作戦会議


           ♢



 俺たちは、冒険者ギルドに帰り、グランドマスターの部屋に集まっていた。


「そうか、何も見つからなかったか……。」


 ギルはため息をついた。


「ただ、ヒロ様のおかげで、明日もまた魔術師大学に行けることになりました。」


 ヒルダが、俺の魔力総量が、測定機の限度を超えてしまった為に、研究の対象にされてしまった事をギルに話す。


「なんだと!? あの測定機で測りきれない魔力総量なんてありえるのか? 壊れていた訳ではないのか?」


 さすがのグランドマスターも驚きを隠せない。測定機の測定限度が、MP9,999らしいと話すと、馬鹿げた数値だと、大笑いしていた。


『そうよ、ヒロは凄いの!』


 何故かおしゃべり妖精が胸を張るが、自慢されて嬉しくないわけもなく、俺は頭を掻いた。


「それなら、明日も調査の為の時間稼ぎができそうだな。よろしく頼むぞ。」


 またおしゃべり妖精を探索に出すのは不安だが、俺よりも動きやすいのは確かだ。信用して任せよう。ベルもヒルダも、今日探索した部屋などの情報を共有して、明日の行き先を決めたようだ。


 明日の作戦を確かめあった後、ギルが少し困ったような表情で話し始めた。


「実はな、何やら、龍人族が動いているという情報が入っている。彼らにとって古竜の卵は信仰の対象のようなものだ。古竜に命令されて、取り返しに来たという事も考えられる。共闘したいところだが、あちらの動向が全くわからん。とりあえず、気をつけておいてくれ。」


 ヒルコを、共通の敵としているのなら、仲間にもなれるはず。なんとか動向が掴めるといいのだけれど……。



           ♢



 今、俺はギルに紹介してもらった宿のベッドに仰向けになり、考えを巡らせていた。


 MP9,999以上である事は間違いないようだ。これは、ナナシ=アリウムが産まれてから、ずっとスキルを発動させてしまっていた為に、魔力を使い続け、常に魔力が渇枯していた状態を引き起こしていた事が原因だろう。

 常に悩まされていた頭痛も魔力切れが原因と解れば納得がいくし、ダンジョンで崖から突き落とされた時などは、気を失ってしまう程だったのだ。それは、リアルにMPが0になっていたのだろう。


 これは、俺がスキルの発動を止める事が出来るようになるまで続いていたのだ。


 なんという苦労だろうか。

 なんという試練だろうか。


 俺自身は、5年前のあの日に、ヒロという存在として生まれたようなものだ。勿論、アリウムが育ってきた人生の記憶は俺の中にもある。あるのだが、実際に苦労したのはアリウムだ。

 今は、俺がヒロとしてこの人生を生きているが、アリウムも、この人格の奥底のどこかに残ったままなのだ。なんとかして、アリウムに人生を取り戻してもらいたい。


 でも、アリウムが自分の人生を取り戻すという事は、ヒロ自身はどうなるのか……。それを考えると怖くなる。だいたい、今のヒロという存在は本当にヒロなのか? 本当はヒロなんていう人間は存在していないのではないのか……。



 漠然とした恐怖に襲われ眠れなくなる――



 すると、り〜ん♪と羽をならして、優しい妖精が俺の胸の上に飛んでくる。そして、そのまま寝息をたて始めた。その一定のリズムを刻む寝息と、小さな妖精の身体の重みを感じると、何故かとても安心できた。そして、眠れないと思っていたのに、俺は自然と眠りに落ちていった――




        ▼△▼△▼△▼△▼




「……くそっ!? まだゴズ様の卵の行方はまだわからないのか……」


「……狐憑きの一向をあと一歩で捕まえる事ができたのに、この街の衛兵どもが邪魔をしたせいで、完全に見失ってしまった……」


「……しかし、この街のどこかに潜んでいるのは間違いない……」


「……この街は、ヒルコの本拠地みたいなものだからな。何処かに、狐憑きが隠れられる拠点があるのだろう……」


「……ゴズ様の卵から溢れる魔力が感じられないという事は、もしかして既に壊されてしまったのかも……」


「……馬鹿な事をいうな。だいたい、卵を壊すつもりなら、ここまで運んだりせず、フーサで壊しているだろう……」


「……確かに。何度も繰り返した問答だな、すまん……」


「……衛兵に阻まれたのが西の街区。あの辺りに隠れているのは間違い無いと思うのだが……」


「……まだ、卵が帰るまで時間があるはずだ。何としても探しだし、取り返さなくては……」


「……レッサードラゴンを解き放ち、街を混乱させてはどうだろう……」


「……それでは、一般の民が犠牲になってしまう。そんな事をしたら、我々がゴズ様に殺されてしまうぞ……」


「……しかし、どうやって探し出すのだ……」


「……諦めるな。卵の魔力を探知し続けるしかない。やるしかないのだ……」


 

 漆黒のマント姿の3人が、暗い夜の街の中に消えていく――

 


みなさん、評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします!

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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