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グランドマスター


『グランドマスター?』


「おう、妖精族じゃねえか。珍しいな。」


「こちらは、この国の冒険者ギルド全てを統括する方です。グランドマスターとは、5人いるギルドマスターのまとめ役という事ですよ。」


 いつの間にか、グランドマスターを名乗る男の横に眼鏡美人が控えて説明してくれた。秘書かなんかかな? 



『へぇ〜。あんた、偉い人なのね! ていうか、ギルドの中で同業者に襲われるって、どうなってるのよ!? あんな風に集団でイジメるのが首都の冒険者ギルド流とでも言うわけ!?』


「――あぁ、面目ねえな。俺の指導がなってないばかりに、迷惑かけちまった。兄ちゃん、嬢ちゃん、すまなかった。」


 グランマスターを名乗る男は、妖精の指摘に再び頭を下げる。ギルドという組織のトップというわりに、偉ぶる様子もない。



「大丈夫です。頭を上げてください。僕はこういうの慣れてますので。」


「そう言ってもらえると助かる。兄ちゃんたちは、ヘルツのギルドは初めてか? ここらじゃ見ない顔だ。」


「白髪に白瞳で妖精とコンビだなんて、一度見たら忘れねぇからな。」と大声で、笑い始めた。


「――グラマス、こちらはおそらく、チーム【アリウム】のヒロさんと、リーダーのベルさんかと。」


 眼鏡美人が、サラッと俺たちの情報を伝える。会ったこともないのに、この人メチャメチャ仕事できそう。しかも、おしゃべり妖精をリーダーと呼ぶとは、かなりの情報通すぎるだろ……。



「ほお、あの変わり者ばかり集めたと言うパーティーか――、ガハハ、すまねぇ、俺もこんなナリで苦労したからな、気を悪くしないでくれ。」


 グランドマスターと名乗る男は、赤ら顔に2本の角、よく見れば犬歯が口からはみ出していて、まるで牙のようだ。筋骨隆々の身体で、人族ではないという事は、一目でわかる。


「俺は鬼神族ってヤツだ。見たことねぇだろ? ほとんど絶滅したような種族だからな。まぁ、ここじゃなんだ。俺の部屋に来てくれ。茶でも淹れよう。なんかギルドに用事があったんだろ? 侘びもかねて、話を聞こうじゃねえか。」



 グラマスの部屋へ向かう途中、ふと後ろを振り向くと、眼鏡美人の秘書さんに、カウンターの受付嬢達が怒られていた。そりゃ、酔っ払いの冒険者が寄ってたかって冒険者1人を取り囲んでいるのに、一緒になって顛末を楽しんでいるなんて、ギルド職員として終わってるよね。せめて止めるなり、人を呼ぶなりするべきだよな。

 まぁ、罪を憎んで人を憎まず。せいぜい反省して心を入れ替えてくれ。


  

           ♢



 グラマスの部屋に入ると、大きな応接セットが置いてあり、そこに座るように言われた。鬼神族の男は自らの手の大きさに似合わないティーカップにお茶を注いで、俺とベルの前に置く。



「改めて済まなかった。俺はグランドマスターのギル。鬼神族だ。」


 そう言って、大きな右手を差し出す。俺は気後れしながら右手を出して握手した。肉厚の掌は、俺の手なんて簡単に握り潰せそうだ。


「兄ちゃんは、人以外の種族が混じってるのか? 白髪に白瞳なんて、そうはいないだろ。」


 俺は、孤児院出身で自分の身の上の情報はよくわからないとだけ答えた。親が使徒の眷属だとか言っても、何のことやらわからないだろうし。



「……そうか、その容姿で孤児院育ちか。苦労しただろう。だからこその変人パーティーか。なかなかのメンバー集めたらしいじゃねえか。サムの奴が自慢してたぜ。」


 サムギルド長が自慢? なんの話だ?



「サムがな、不幸な生い立ちに負けず、しっかり生きてる奴が居るってよ。笑いながら俺に言うんだよ。」


 え、サムギルド長となんか、それ程話した事ないのに……。


「俺も、あいつも、滅びゆく種族の末裔だからよ。亜人だの、魔物混じりだの、色々と言われ続けてきたのよ。知ってるか、サムの奴、あんな見た目で俺より大分歳上なんだぜ。」


 ガハハと牙を剥き出しにして笑うギル。かなり怖い顔なはずだが、不思議と人好きする笑顔である。


「なんだ、その様子だと、アイツがエルフという事も知っておるのか。アイツが自分の種族を教えるなんて、よほど信用されてると見える……。」



 年齢の話に全く驚かない俺を見て、すぐにそう判断するなんて、見た目と違って、かなり頭の回る男のようだ。さっきの喧嘩のあと始末を、あんなにサラッと終わらせてしまった事からも、色々と得心がいく。グランドマスターになるほどの人物なだけはあるという事か。



「――もしかして、狐の事も聞いておるのか?」


「――!?」


「……なるほど、やはりそうか。という事は、兄ちゃんの容姿は眷属の関係者という事か……。なら、ヒルコの件にも首を突っ込んでいることになるな……。」



 俺は一言も話していないのに、俺の表情だけで色々と推し量られてしまった。流石に、おしゃべり妖精も驚いている。2人で口を半開きにして、固まってしまった。



「…………。」


 あまりに次々と言い当てられる為、何も話すことができずにいると、ギルはまたガハハと笑い出した。


「――すまん、すまん。俺とサムは古い付き合いでな。昔、一緒に冒険者パーティーを組んでいたのだ。だから、アイツの性格はよくわかっているんだよ。道理で兄ちゃん達の話をよくするわけだわい。」


 はぁ、という事は、ギルさんも真実の歴史を知る者という事なのか……。サムギルド長、ちゃんと教えてくれてればいいのに……。



 まさかの出会いに、驚きを隠せない俺と妖精の顔を見て、ギルはまた大声で笑うのだった――

 


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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