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冒険者の洗礼


 最近、俺は新しい【障壁】の使い方を模索している。

 

 全身に障壁を纏うのはいつもの事として、実は障壁を攻撃手段として使えないかと色々と試しているのだ。理不尽に絡んで来たんだ。少し実験に付き合ってもらうか。


「あの、ほんとに僕と喧嘩するつもりですか?」


「はぁ!? 喧嘩? 魔物退治だよ!?」



 一応、確認したからね。みんな聞いたでしょ?

 一人相手に6人で囲んでるんだ。まさか、俺が悪いなんて事にはなるまい……ならなきゃいいけど……。



 俺は、掌に特殊な【障壁】をイメージする。初めて【障壁】という物に気づいたあの時のイメージ。「跳ね返す」威力を掌だけに込める。掌底の威力を高め、自分と敵との距離を広げる為の攻撃だが、今回はこれを使ってみる。


 相手は酔っ払いの低級冒険者だろう。正直、怖さは感じない。

 俺は、向かってくる冒険者の一撃を硬化のイメージをこめた【障壁】が張ってある頭で受けとめ、動きの止まった男の鳩尾に掌底を叩きこんだ。



「グゲっ……!?」


 踏みつけられたカエルのような声をだしながら、後で腰に手をやりニヤニヤしていた冒険者にぶつかる。一応、2人まとめて吹き飛ばすつもりだったけど、ちょっと威力が足りなかったな。



「おいおい、飲み過ぎたのか? こんなヒョロヒョロのガキに吹き飛ばされるなんてよ。」


 鳩尾に一撃を食らった冒険者は、白目を剥いて倒れたままだ。しかし、酒のせいだと思っている他のメンバーは、まだニヤニヤしたままだ。

 あくまで、やられたらやり返す事にして、カウンターを狙う。その方が周りの印象も違うと思うし、なんといっても、あちらの拳は全く効かないのだからね。


 もう一つ試しているのが、【障壁】に身体を支える役割りを持たせるというもの。

 2×4工法という建築工法がある。別名を壁工法と言い、柱の代わりに壁で建物を支える。柱が全体を覆っている為、地震に強いというものだ。

 俺の身体能力自体はそれ程高い訳ではない。その為、衝撃を受けると、ダメージは無いが、身体がその衝撃に耐えられず、吹き飛ばされてしまう。

 以前は亀のポーズで耐える事により、身体を支えていたが、それでは相手になされるがままになってしまう為、耐え続ける事しかできなくなってしまっていた。

 しかし、【障壁】で身体を支える事により、横からの衝撃に強くなる。それで反撃のチャンスを伺うのだ。さっきのカウンターも、一撃を貰うつもりで【障壁】を使ったので、身体を動かされずに掌底を返すことができたのだ。



「ゲフっ……!?」


 俺の右から殴りかかってきた冒険者を、やはり拳を頭で受けて、カウンターの掌底を放つ。今回は反発の意識をさっきよりも強くこめると、その冒険者は、酒場のテーブルに背中からぶち当たる。



「こ、この! 何だこいつ!? ふざけんな!」


 後ろから掴み掛かろうとした男におしゃべり妖精が反応する。


『ヒロ! 後ろ!!』、 「サンキュ!」


 阿吽の呼吸で振り向いて、今度は頭突きを喰らわす。怯んだところで、また鳩尾に掌底を放つ。

 ギルドの受付カウンターにぶつかると、そのまま白目を剥いて気絶した。激しくカウンターにぶつかった為、見物を決め込んでいた受付嬢たちが驚いて固まる。


「このやろ!」 

「一斉にいくぞ!」

「おうっ!」


 抵抗されて冷静になったのか、残りの3人が同時につかみかかってきた。


 ここで、もう一つの【障壁】の変化。

 全身の【障壁】を膨張させるイメージ。風船のように丸く膨らませて、掴み所を無くす。相手に掴ませない。


「なんだ!? 掴めない??」


 よし! 怯んだ今がチャンス!

 俺は、続け様に鳩尾を狙って掌底を繰り出す。


 3人ともその場に疼くまって、胃の中身をぶちまけた。手加減成功。反発の意識を利用した掌底はかなり使えそうだ。


 6人の冒険者が、酔っていたとはいえ、1人の少年にボコボコにされたのだ。周りにいた冒険者達も呆気にとられたのか、言葉を失っている。



「――凄いな、あんた!」


 騒ぎを聞きつけたのか、受付カウンターの後ろから、大柄な身体で、頭に2本の角がある初老の男が姿を見せた。ギルドのお偉いさんだろうか。



「まったく……。大方、そっちの酔っ払いが絡んで返り討ちになったんだろ。兄ちゃん、すまなかったな。 おいっ! お前らっ! そこ掃除してさっさと帰れ!」


 初老の男は、俺にぶち飛ばされた男の頭を足で小突いて起こすと、吐いて汚した床を掃除させる。



「おら、ちゃんと謝れ。これに懲りたら、C級の冒険者様に喧嘩なんか売るんじゃねえぞ。」

 

 俺が、展開についていけず、ボケっと立ち尽くしていると、無理やり6人の冒険者達に頭を下げさせて、そのままギルドから帰らせてしまった。一方的に絡まれた俺は、なんか釈然としない。



「すまんな兄ちゃん。俺の顔に免じて勘弁してくれや。」


 俺の不満を感じ取ったのか、初老の男は改めて自らも頭をさげる。



「――俺はこのギルドのギルド長、グランドマスターのギルだ。迷惑かけたな。」

 


 あちゃ〜、まさかのギルドの最高責任者でした。


 

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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