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首都 キャピタル・ヘルツ


           ♢



『ほんと、久しぶりね! 2人だけで冒険するなんて!』


 おしゃべり妖精がご機嫌な様子で俺の肩に座ってはしゃいでいると、魔法のランタンから炎の舌が伸びて、妖精のお尻を叩いた。


『――っ!? ちょっと! 何すんのよ!』


 火蜥蜴=サラマンダーのサクヤが、魔法のランタンの中で、声もなく笑い転げている。

 それを見たおしゃべり妖精は、ランタンを蹴飛ばそうとするが、揺れるランタンにタイミングを合わせられず、豪快に空振りした。

 すると、水筒から顔を覗かせていた、波の乙女=ウンディーネのミズハと、麻袋から三角帽子だけを出している、土小鬼=ノームのハニヤスが、身体を震わせて笑い出した。


 俺には、それぞれの精霊たちの声は聴くことはできないが、俺の魔力を喰い続けている事で成長し、段々と表情や表現が豊かになってきたように思う。そのうち、彼らの声が聴けるようになればいいな。


 ベルさんも、フェンリルさんも、俺は精霊に好かれる体質だと言う。精霊たちにとって、俺の魔力が相当美味い? みたい。しかも、魔力総量がかなり大きく、常時【障壁】を張らなくなった事で、かなり魔力量に余裕ができているようだ。


 今、俺たちはこの国の首都、キャピタル・ヘルツへ向かっていた。今回の旅の目的は、ダンジョン=インビジブルシーラにいる、ハイエルフのアエテルニタスに会う事なのだが、魔術師のライトの勧めで、首都にある魔法大学により、魔力総量の検査をする事にしたのだ。

 ヒルコが居る、ダンジョン=ヘルツプロイベーレがある為、危険ではないかとの意見も出たが、氷狼曰く、


『一般の冒険者にちょっかい出す事はねぇ。そんな事したら、冒険者が寄り付かなくなるだろ。しかも、ヒルコ自体はウカ様から離れられない。』


と言うので、とりあえず安心して首都へ向かっていた。


 

            ♢



『さすが、この国の首都ね〜っ! デッカい門!』


 他の街では、門はあってもここまで大きくはない。しかも、ここの街は、街の四方を高い壁で覆ってあり、門では門番が街への出入りを厳重に管理しているようだ。


 俺は一瞬、白髪、白瞳の容貌で疑われないかと心配したが、ギルド章を見せれば、案外簡単に街に入れてくれた。流石首都、人族以外の亜人たちの数が多いため、俺の容姿ぐらいでは問題にはならないようだ。



「――人が多い……。」


 前世でも田舎の政令指定都市に住んでいた俺は、出張で東京を訪れた時を思い出した。あの頃、ある程度大きな街に住んでいるつもりでいた俺は、どちらを向いても人で溢れる街を歩いて、自分の住む街との規模の差に、かなり驚いたものだった。


 ライトに教わった魔法大学の場所は、街の北西側。この国でも、少し偉い方々が住む地域にある。それ程、身分の差は感じないこの国だが、流石に、この国を動かす人々が住むこの街は、所謂、住む場所に階級のような物が存在するらしい。


 最近俺は、この国には王様がいて、王政を敷いていることを知った。ただ、王家自体にはそれ程の影響力は無く、資金力のある商人や実業家、貴族などが実権を握っており、絶対君主制とは程遠いらしい。

 そういった富裕層の多い首都キャピタル・ヘルツでは、貧富の差も目立ち、街の東側にはスラム街も存在するそうだ。


 魔法大学の立地からわかる通り、魔法大学に通う学生や研究者、教授などの関係者は、ある程度の身分を持たないと関わりを持てないとの事。

 今回、俺はリンカータウンの冒険者ギルド長の紹介という事で、魔法大学を尋ねる事になっている。ライトさんの紹介ではダメななかと聞いたら、


「僕の名前を出したら、笑い者にされて、相手にもしてもらえないよ。」


 と、ライトさんが自虐的に言うので、素直にサムに紹介状を書いてもらった。いつかは、ライトの研究を世間に認めさせてやりたいものだ。何せ、本家本元、真実の歴史を聞いて書かれる論文なのだから。



           ♢



 街は大きいが、やはり中央にあるダンジョンの入り口を中心に広がっており、ダンジョンのある広場から八方にメイン通りが伸びている。

 北側は王城へと続く大通りであり、街の南門から真っ直ぐに伸びている。お城自体はそれほど大きなものではないが、立派な西洋のお屋敷と言った雰囲気だ。


 目的の魔法大学へ向かう為、北西に向かう道へ入ろうとすると、マントを被った3人の男がこちらに向かって走って来る。

 危なくぶつかりそうになる所を、すんでで避けて見送ると、すぐに後から来た、衛兵が集団で走りすぎて行った。さっきの3人組は犯罪者だったのだろうか。



『危ないわねっ! 気をつけなさいよっ!』


 避けた拍子に俺の頭から転がり落ちたおしゃべり妖精が叫ぶが、誰一人反応する者はいなかった。

ぷんぷん怒る妖精を宥め、気を取り直して魔法大学へと歩き出す。


 本来、自分自身が積んだ徳や経験、努力の量になどによって第三の才能が授けられると信じられている為、この世界では罪を重ねる者は少ない。しかし、スラム街が存在するくらいである。日々の生活に追われ、犯罪を犯さなくては生きて行けない者も多くいるのだろう。

 俺だって、あの優しい剣士に救われていなければ、どうなっていたかわからないのだから……。



 さて、魔法大学が見えて来た――




首都   キャピタル・ヘルツ

北の町  シーラタウン

東の町  リンカータウン

南の町  フーサタウン

西の町  レッチェタウン

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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