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神々のいじめ①


           ♢



『さて、お前たちの世界の常識ってのは、こんな感じだろ――



 遥か昔、善なる神々と悪なる神による激しい戦いがあった。その時、善なる神々は、なんとか悪なる神に勝利はしたが、身体を消滅させることまではできず、悪なる神の身体に厳重に封印を施すことにより、地上の生きとし生けるものに影響がでないようにした。


 しかし、封印されてもなお、悪なる神の力は衰えることはなく、封印されたにも関わらず、悪なる神の身体から魔力が溢れ続け、その魔力から凶悪な魔物が発生し続けた。


 考えた善なる神々は、この土地に五つのダンジョンを作り、その中に悪なる神の身体を分散して封じ込めることによって、地上に悪なる神の力が漏れ及ばないようにした。


 ダンジョン深くに封印された悪なる神の身体からは、その後も魔物が生まれ続けたが、ダンジョンに施された封印により、魔物たちはダンジョンから地上へ出ることは出来なかった。


 こうして、地上にはすでに溢れ出ていた魔物以外は魔物はいなくなり、人々はこの大地でなんとか暮らせるようになったのだ。



――この話を聞いて、何か疑問に思わないか?』



 氷狼は、この世界の常識と云われている、善なる神々の教えが書かれた教本の最初の章を読み上げ、この場にいる全員に問いかけた。


 この世界の常識に染まっている面々からは、どうにも、疑問が生まれにくいらしい。しかし、俺とライトにはあったのだ。なんとも不思議に思える点が。



「「――何故神々の戦いが起きたのかが、語られていない……。」」


『……そうだ。おかしいと思わないか? 理由もなしに神々が戦うなんて。理由なく戦いなど起きたりはしない。まして、この世の創造主たる神々だぞ?なのに、善なる神々の経典には、どこにもその理由が載せられてない……。』


 その理由を知らなくては、真実の歴史などわかるはずがない。なにせ、過程がなく、結果だけが記されているのだから。



『そこの太陽神の神官! どうだ、お前の信じる経典にはその理由が語られているか?』


 一瞬、氷狼から怒気が発せられた気がしたが、進取果敢な聖職者は、その怒気に怯むことなく、しっかりとした口調で応えた。



「経典には、その理由と思われる教えは載っていません。あなたの言う通りです。私も、吸血鬼の王の言葉を聴いて違和感を感じていましたが、まさか、最初も最初、書き出しからだとは――。」


『ブラドからも何か聞いていたか……。しかし、随分と物分かりの良い神官だな。善なる神々を盲目的に心棒しているわけてばなさそうだ。だが、これから話す事もお前は受け入れられるか?』


 その問いに、ソーンは、「覚悟はできている。だが、信じるか信じないかは自分で決める。」と、真剣な眼差しで返した。



『けっ……、上出来だ。』


 氷狼は、サムの淹れた紅茶を一口飲むと、また俺たち向き合って話し始めた。



『その理由を知るには、先ずは、神々がこの世の仕組みを作り、そこに様々な生き物が生活し始める頃の話まで遡らなくてはならない。


 この世の始まりの頃、世界は、竜族、獣族、エルフ族、巨人族、精霊族、鬼神族、ドワーフ族、etc……、これら様々な種族の末席に人族が存在していた。


 力の強い種族に囲まれ、種族としての力に劣る人族は、その頃、他の種族から蔑まれ、馬鹿にされ、家畜として喰われていたり、愛玩用の玩具や、ペットのような扱いをされていた。今とは全く逆の立場だな……。』


 今は、人族以外の種族の数は少なく、亜人として、蔑まれることも多い。ましてや、亜人族と人族のハーフともなると、一気に嫌悪の対象とされたりする。ナナシ=アリウムがあれだけいじめられたのも、大元はそこに原因があるのだろう。



『そんな人族を哀れに思った神々は、人族に変わる物として、家畜や穀物などが簡単に手に入れられるように世界の仕組みを変え、態々、人族を食料にしたり、玩具にしたりしなくてもよい状態に作り替えたのだ。


 世界の仕組みが変わり、神の恵みを簡単に享受できるようになった全ての種族は、神に感謝した。努力や苦労をしなくても、安穏として生きていけるのだ。こんなにありがたいことはない。


 しかし、人族以外の種族は、総じて強い力を持ち、そして長命である。神々によって作られた、何の努力もいらない世界は、その世界に生きる者達をどんどん堕落させていった。


 その命が長命なもの程、長命が故に、長い期間、堕落に晒されてしまう。それ故に、自らが何かをしようとする気持ちが無くなってしまい、ただ、神の恵みを享受するだけで、生きる意欲というものが薄れ、滅んでしまう種族が生まれ始めてしまったのだ。』


 そこまで話すと、氷狼は一度目を瞑ってから天井を見上げた。



『俺たち獣族や、ブラドの吸血鬼族なんかもその一つだ……。もっと加えれば、北のダンジョンにいるエルフ族、南のダンジョンにいる竜族もその一部だ。』


 苦しげに話す氷狼は、唸るように息を吐く。



『俺たち、ダンジョンの守護者とは、俺、ブラド、アエテルニタス、ゴズ……。みんな、意欲を無くした同胞が、自ら滅んで行くのをを止められなかった、それぞれの一族の王達だ――。』


 

          ♢




それぞれのダンジョンの使徒です。


リンカーアーム 氷狼 フェンリル

レッチェアーム 吸血鬼王 ブラド

インビジブルシーラ ハイエルフ アエテルニタス

ファーマスフーサ 古竜 ゴズ

ヘルツプロイベーレ カオススライム ヒルコ

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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