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ギルドマスター


 今日はナミ、ナギの訓練を兼ねてダンジョンに潜るために、リンカータウンへやってきている。


 チーム【アリウム】全員で冒険者ギルドへ来るのは久しぶりな為、俺たちを見かけた街の住民たちは、珍しいものでも見つけたような表情でこちらを目で追っていた。


 一番前を、相棒の珍しい妖精を肩に乗せた、街の嫌われ者である白髪の少年が歩き、その両隣では、黒いマントを頭から被った2人の少女が少年の背負うリュックの端を掴んでいる。そして、その後ろに太陽神の聖職者、学者然とした魔術師、黒髪の魔術師が続くという、その不思議な組み合わせは、誰が見ても、やはり目立つパーティーなのである。

 一番の原因は、街で有名な魔物の子供が、パーティーの先頭を歩いているという点なのだが、正直に言って、それは街の住人にとっての、嘲笑の的以外の何者でもないのであった。



――魔物の子供が仲間を作ったってよ!?



 そう言って笑う連中は知らないのだ。このパーティーが、すでに、C級という高いランクの冒険者パーティーだということを……。



           ♢



『まったく、いつ来ても感じ悪い街よねっ!』


 おしゃべり妖精の言葉に、俺は皆んなに頭を下げた。俺はこういう事には慣れているが、他のみんなは違うだろうから。


「ごめんな、みんな。僕が街で嫌われてるばっかりに、みんなにまで嫌な思いをさせちゃって……。」


「――何言ってるの、ヒロ兄。ヒロ兄は何も悪い事してないでしょ! ヒロ兄が謝る事なんか、これっぽちも無いわ!」


 ナギが憤り、ナミも同意する。2人はリュックから手を離して、涙を浮かべながら今度はヒロの服の裾を掴んだ。



「そうだよ、ヒロ君。胸を張って歩きなさい。私たちは全く気にならないから。」

 

 ソーンは、力強い言葉でヒロを叱咤するが、内心では、街の住人の彼への理不尽な態度に強い怒りを感じている。そして、あの街の住人と同じ事をしていた自分を何度でも恥じてしまうのだ。

 すると、ライトがそんなソーンの気持ちに気づいたのか、ポンっと肩を叩く。そのおかげで、強張った顔と肩の力を抜くことができた。きっと彼も同じ気持ちなのだろう。

 ソーンは、ヒロ達を守る決意と、ありがとうの合図を込めてライトの背中をポンっと叩き返した。



「――大丈夫よ、ヒロ君。私たちはみんな、あなたと共にいるから。」


 アメワの発した言葉に、パーティー全員が笑顔で頷いた――



           ♢



 リンカータウンの冒険者ギルドに着くと、受付のカウンターは何故か閑散としていた。


「フィリアさん、こんにちは。珍しいですね。ギルドがこんなに空いてるなんて。」


 いつも俺たちの担当をしてくれるフィリアに挨拶する。


「あら、【アリウム】のみなさん、いらっしゃい。なんか、ダンジョン=ファーマスフーサで、上級ドラゴンが発見されたんですって。使徒以外に上級ドラゴンが発見されるのは20年ぶりみたいよ。」


 ドラゴン。この世界においても、最強の存在の一角だ。これを倒せば冒険者ギルドからドラゴンスレイヤーの称号が授けられる。しかも、ドラゴンが残す魔石は、一つでも相当なの価値があるのだそうだ。それこそ人生のしばらくは遊んで暮らせるくらいに。


「しかも、一匹じゃなくて複数発見されているんですって。みんな一攫千金を求めて、ファーマスフーサに行ってるのよ。」


 言うまでもなく、ドラゴンは危険な魔物である。それでもドラゴンに挑むという冒険者たちは、やはり夢追い人ということなのだろうか。



「でも、ヒロ君達は行っちゃダメよ。とんでもなく危険だから。余程の実力でも、倒せるかどうかわからない相手よ。」


 フィリアさんは、しっかりとアドバイスをしてくれる。こうやって、身の丈にあったクエストを紹介してくれる信頼できる職員なのだ。


「わかってますよ。僕たちは、ナミとナギの訓練も兼ねて、ダンジョン=リンカーアームに潜ります。登録よろしくお願いします。」


 にこりと笑うフィリアさんにダンジョン探索の登録をお願いした。今の俺たちは、まずは力をつけなくてはならないのだ。さっきの街の人々の好奇の目に晒されても胸を張って歩けるように……。



           ♢



「やぁ、ヒロ君。ちょっといいかな。」



 ダンジョン探索の受付を済ませた俺たちに、不意に声をかける者がいた。


「あぁ、サムギルド長。お久しぶりです。」


「やぁ、久しぶりだね。ちょっと話があるんだ。僕の部屋に来てもらえるかい。」


 サムギルド長は、年齢不詳の色男である。ライトよりも若くみえるその男は、男性とも女性とも見える。ギルドマスターと知らずにいれば、前世のアイドルと見紛うような美貌の持ち主である。

 俺は相当モテるんだろうな、なんて嫉妬する気持ちが現れないではないのだが、そんな色男が、丁寧だが意見を挟ませない雰囲気で俺たちを自分の部屋へと案内したのだった。


 ドアを開け、パーティーメンバー全員が部屋の中に入ると、奥のソファーから声がかけられた。



『――よぉ。久しぶりだな。ジヌの息子。』



 なんと、そこにはダンジョン=リンカーアームの守護者、悪なる神の使徒の一人、氷狼のフェンリルが座っていたのだった――


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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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