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焦りと願い②


         ▼△▼△▼△▼△▼




 ナミは、悪なる神の使徒、氷狼フェンリルの眷属である。


 半年前に13歳になり、F級冒険者として登録が認められた。そのおかげでやっと、チーム『アリウム』に参加してダンジョンへと同行できるようになった。


 将来は、第1の才能【キーパー】(動物飼育)を生かして、家畜の世話をしながら、家の手伝いをしていこうと漠然と考えていた。元々、生き物が好きだったし、農家仕事も全然苦にならなかったから。


 兄弟はいない。近所に住み、姉のように慕っている元冒険者のアメワに読み書きを教わりながら、このまま大人になって、誰か良い人と結婚して、家の田畑や家畜を継いでいくんだろうと、漠然とそう思っていた。


 ところが、ある日、私は洞穴に住むゴブリンに攫われ、ヒルコの仮面なる物を被せられてしまった。

 その仮面は、悪なる神の使徒の1人であるヒルコが、他の使徒への嫌がらせ? の為に、第2の才能発現前の子供を支配して利用するという、理不尽極まりない代物だった。


 私自信には、画面を被せらている時の記憶はない。


 しかし、現実に、第2の才能をヒルコに上書きされ、本来の自分が進む道とは別の道へと無理矢理に歩かされている。

 さらに、ヒルコの支配から助ける為に、これまた悪なる神の使徒の1人、氷狼のフェンリルの眷属にされてしまうという、およそ普通の農家の娘が辿る事の無いような人生を歩むこととなってしまった。


 幸いな事に、私に読み書きを教えてくれていたアメワと、白髪の冒険者が、まだ完全に支配される前にゴブリンの洞穴から私を助け出してくれた。

 自分の家で目を覚ました時、両親は涙を流して喜んでくれた。眷属にしてくれた氷狼のおかげで娘が助かったと。


 しかし、眷属となった自分の容姿は、元の自分とはだいぶ変わってしまった。

 瞳の色はグレーに代わり(周りのみんなは白瞳と呼ぶけど…… )、肌は陽に焼けた褐色に近く、貧弱だったはずの身体は、まるで鍛えられた戦士のように、しなやかな筋肉質の身体に変化したのだ。


 おそらく、氷狼という獣人の因子が取り込まれ、人のそれとは全く違う存在になったのだろうと思った。


 人と違う容姿というのは、不安になるものである。村でただ一人、いや、世界を見回しても、白い瞳の人間なんてものは、そうは居るものではないだろう。村の人たちは優しかったが、私の中の不安はどんどん大きくなって行った。


 そんな私の事を、事ある毎に顔を出し、気遣ってくれる冒険者の少年がいた。私をゴブリンの元から助け出してくれた少年である。彼は、白髪で色白。そして、私と同じ白い瞳をしていた。


 アメワの話では、とても優しくて、信頼できる冒険者だという。私の事を命懸けで助けてくれたのだ。そこに疑問の余地などない。

 聞けば孤児院育ちで、街では酷い扱いを受けてきた悲しい過去を持つと言う。しかも、今現在でもその酷い扱いは続いているらしい。


 私も、悪意を感じる事はある。私を異様な物を見るような目で見られたりもするのだ。


 少年は、私が少年と同じような境遇にならないかと、とても心配してくれていた。いつも、気を配り、不当な悪意から守ろうとしてくれていたようだ。


「いつでも、君には家族も、友人も、それに僕もいるから、心配しないで。」そう言って私を励ましてくれていたのだ。


 ひとりぼっちじゃない。これは、とても私を安心させてくれた。使徒の眷属という、訳の分からない存在だとしても、こうやって私に寄り添ってくれる存在がいる。程なくして、私は彼を兄と呼ぶようになった。


 最初の頃は、少年と妖精だけで訪れていたのだが、ある時から、生意気な少女も一緒に来るようになった。

 彼女は、私と同じで使徒の眷属なのだそうだ。吸血鬼王ブラドの眷属。白い髪、赤い瞳で色白の可愛らしい少女。私と全く同じような経緯で眷属になり、歳は私が半年だけ年上みたい。


 色黒の私とは違って、なんとなく儚げに見える彼女は、とても口が悪かった。どちらかというと、話すのが苦手な私は、いつも口喧嘩で負けてしまう。

しかも、彼女は少年と一緒に暮らしているというのだ。


 いつからか、悪意からこの身を守ってくれる少年に憧れるようになっていた私は、この白髪、赤瞳の少女に嫉妬するようになった。



 だって、その子も私と同じような目で少年の姿を追い、兄と呼んで甘えるんだもの!



 私も負けずに甘えたいけど、いつも一歩出遅れて、その子に少年を独占されてしまう。

 アメワ姉は、彼女は親元から離れて寂しい思いをしてるのよと言うが、あれは絶対、私に見せつけようとしてる。私にはわかる。

今は、なんとか彼の側に居られるようになりたい。立派な冒険者となって、彼を支える存在になりたいと思っている。



 ずっと彼の隣にいたいの――



 その気持ちがどこから来るのか、まだ少女はわからないでいる。


 


       ▼△▼△▼△▼△▼




         ▼


クラス  魔獣使い


才能1  キーパー

    (動物飼育)


才能2  ◾️◾️◾️/パペット

    (糸操り)


スキル  飼育   LV1

     テイマー LV1

     操り人形 LV1

     獣体術  LV2


         ▲

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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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