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焦りと願い①


         ▼△▼△▼△▼△▼



 アメワは魔術師であり、E級冒険者である。


 一緒に冒険者になった幼馴染の死を経験し、一度は冒険者を引退したのだが、ヒロとのゴブリン討伐を期に、また冒険者として復帰した経緯がある。


 ただ、積極的にはダンジョン探索に参加はしてこなかった。自分の魔術師としての実力に、それほどの自身が持てていないところがあるのだ……。



 今、チーム【アリウム】には、ベテラン魔術師でB級魔術師のライトがいる。同じ魔術師としての実力は天と地ほどの差があり、自分が得意とする火の魔法も、冒険者としての知識量も、豊富な経験を持つ彼と同じ役割ができるわけがない。

 そう考えると、自分がこのパーティーにいる意味を見出せなくなるのだ。



 一度は、自分とカヒコのとんでもない裏切り行為によって、深く、深く傷つけてしまったというのに、白髪の少年は、裏切った自分とカヒコを許し、その上、もう一度パーティーを組んでくれると言ってくれた。

 しかし、その後の突然のカヒコの死により、自分が冒険者を続ける気持ちを持てなくってしまった。重症のカヒコの為に奔走してくれた彼を、再び、彼を裏切る形になってしまったのだ。


 後から聞いた彼の生い立ちも、これまでの暮らしぶりも、あまりにも悲しく、壮絶な人生であった。何度も何度も悲しい思いを繰り返してきたであろうあの少年に、自分もその悲しみの一部を与えてしまった事が、悔やんでも悔やみきれない自分の心の傷となっている。


 そんな二度も彼を裏切った自分を、今も変わらずに仲間として扱ってくれる白髪の少年に報いたい。これ以上、彼に傷ついて欲しくない。


 その思いを、今では姉のように慕っている、太陽神に仕える聖職者、ソーンに相談した。すると、実はソーンも少年を傷つけ、悲しませた経験があると打ち明けてくれた。だから、自分も少年の為に何ができるか探しつづけているというのだ。


 ソーンのアドバイスを聞き、アメワはパーティーに足りない部分を探し始めた。

 チーム【アリウム】は、壁役兼アタッカーであるヒロ、斥候役であるベル、回復役であるソーン、魔術アタッカーであるライトとバランスが取れている。また、新しいメンバーのナミはアタッカー、ナギはレンジャーという道を選んだ。


 ならば、足りない役割はなんだろう――


 アメワが選んだのは、サポート役。

 バフやデバフなど、パーティーの立ち回りが良くなるように、自分はサポートに徹するのだ。

 


 ライトから借りた魔術書を読み込み、なんとか数種類の魔法を使えるようになった。絶対に、みんなの……、白髪の少年の役に立てるようになってみせる――


          ▼


クラス  付与術士


才能1  教育

    (指導、勉強)


才能2  思考

    (熟考、熟慮)


スキル  指導   LV5

     火魔法  LV3

     付与魔法 LV3

     魔力操作 LV5


          ▲



         ▼△▼△▼△▼△▼



 ベルはいつも悩んでいた。


 彼女は、今のパーティーにおいて、斥候役という重要な役割を担っている。普段はおしゃべりに夢中になる事もある彼女が、実は、ダンジョン探索の時には役割に集中している為、おしゃべりをしなくなる。


 この役割に着いた時、我ながらいいアイデアだったと思った。だって、この身体では魔物との戦闘では役に立てないし、元々、風の精霊=シルフだったはずなのに、精霊としての力は全く無い。


 何とかして、大好きな少年の役に立ちたくて、自分にできる事を一生懸命探した結果が、この斥候役というポジションなのだ。


 でも、この役割をこなしていても、戦闘が始まってしまえば、ほとんど少年の役には立てなくなってしまう。仲間の精霊に協力してもらって、ほんの少しだけ手伝える程度なのだ。


 そんな風にしか役に立てない自分の身体が、とんでもなく口惜しい……。精霊から今の状態に生まれ変われたからこそ、大好きな少年と出会うことができ、話をすることができ、寄り添うことができるのだけれども……。



――どうして、ヒロと同じ人の身体に生まれなかったのだろう……。 せめて、同じ大きさの身体であれば、もっと少年の為に、色々とやってあげられるのに……


 いつも自分の小さな身体に絶望している。


 才能判定も成功したことが無いため、未だに自分の力を確認できていない。せめて、何か役に立てる能力があればと、いつもチャレンジはしているのだが、魔力が少なすぎると言われて終わってしまう。


 新たに加わった新米冒険者の少女たちでさえ、自分たちの才能を理解しているのだ。


 あの少女たちは、おそらく少年の事が大好きだろう。それが恋とか、愛とか、そういった物かまではわからない。でも、少なくともそれに似た感情を持っているのはわかる。


 だって、私は少年を愛しているから。

 

 愛しているからこそ、彼に向けられる好意も悪意も感じることができる。


 あぁ、叶うことならば、この身をあの愛する少年と同じ大きさに……



 妖精は、叶うことのない望みを、空に浮かぶ大きな月に祈るのだ。そう、輪廻を司ると云われる、月の神に――




クラス  不明


才能1  不明

    (不明)


才能2  不明

    (不明)


スキル  不明   LV5



          ▲



         ▼△▼△▼△▼△



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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