英雄の種①
本日より、第4章スタートです!
少しずつ成長している主人公達を応援してください!
「お誕生日おめでとう、ナギ。」
今日は白髪に赤い瞳の少女、ナギの13歳の誕生日だ。
今、この場では、6人の仲間と5人の精霊がナギの誕生日を祝っていた。
「ありがとうヒロ兄。これで、やっと一緒に冒険にいけるわっ!」
13歳、そう俺も待ち焦がれすぎて、冒険者ギルドで嘘までついたこともある。そう、冒険者登録ができる年齢なのだ。
「ナギちゃん、冒険は遊びじゃないわよ。危険も伴うものなんだからね。でも、私もあなたと一緒に冒険に行けるのが楽しみだわ。ね、みんな。」
笑顔のソーンさんが、軽く戒める。
「そうよ。ナギ、遊びじゃ無いんだからね!」
ナギより少し前に13歳になり、すでに一緒に冒険に出ている、もう一人の仲間、こちらは黒髪に白い瞳の少女、ナミが軽口をたたく。
「ナミは、すっかりお姉さんしてるね〜。」
穏やかな表情で、ナミのお姉さんぶりにツッコミを入れるライトが俺の横に立った。博識なこの歴史学者は、何故かニヤニヤと微笑みを浮かべている。
『やっとあなたも大人の仲間入りねっ! 私が大人な魅力ってやつをしっかり教えてあげるわっ!』
確かに、生きている年月だけは、この中で一番長いであろう、おしゃべり妖精のベルだが、彼女の小さな身体からは、到底表現される事のない大人の魅力について語っている。まぁ、いつもの事だが、このおしゃべり妖精は、お笑いの才能があるようだ。
「まぁ、これでナギ1人を留守番させなくてもよくなるわけだし、何度かダンジョン=リンカーアームに潜って訓練したら、みんなで遠出してみようか。」
そう、今、俺たちは、チーム【アリウム】というより、【アリウム】ファミリーといった様相になっていた――
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ダンジョン=レッチェアームでの吸血鬼王との邂逅の後、レッチェタウンの冒険者ギルドに、今回の犠牲者の冒険者章を提出してから、すぐに新月村のナギの家へと向かった。
ナギの両親は、無事に戻ってきた自分たちの娘の姿を確認して、涙を流して喜んでいた。しかし、すぐにナギの家に駆けつけた村長曰く、白髪であり、村につく頃には瞳の色も赤く変わっていたナギの姿を見て、村人たちが、忌み子が戻ったとか、祟り持ちがやって来たなどと騒いでいるらしい。
その話を聞いたナギの両親は、俺にナギの事を預けたいと言い出した。ナギに何かの形で危害が加えられた際、自分たちでは、守ることができないと考えていたようだ。
俺は、ナギの両親からの頼みを承諾した。「何かあったら俺が守る」と決めていたから。ただ、ナギはまだ11歳。親と離れて暮らす寂しさは、相当なものだろう。ナギの心の負担を軽くしてあげたい。
「――私も一緒におります。どうか、安心してくださいね。」
その時、太陽神の聖職者であるソーンが、ナギの両親を安心させようとしたのか、優しく言葉をかけた。
あれ? ソーンさんも一緒にいるって、俺たちと一緒に住む事になってる感じだった?
「大丈夫ですよ。僕たち、大人もいるのですから、お父さんも、お母さんも僕たちにお任せください。」
あら? ライトさんもそういうつもりだったの?それなら、滅茶苦茶頼もしいけどね。
「――ナギちゃんは、ご両親と離れ離れになってしまうけど大丈夫?」
ナギには、新月村への道中、これまでの経緯を話していた。まだ幼い少女には、理解できない部分も多かったはずだが、自分が吸血鬼王の眷属になって、普通の人とは違うものになったという事は、なんとなく理解してくれたようだった。
「私は……寂しいけど、私のせいでお父さんとお母さんにまで何かされたら困るから、お兄ちゃん達と一緒に行かせてください。いいですか?」
新月村は、差別意識が強くある村だ。村人の俺に対する扱いを考えれば、ナギ本人だけでなく、その両親にも危険が及ぶ可能性はある。なにせ、祟りの対象と考えているのだから。
しっかりとそこを理解し、両親の事も慮れる。賢くて、優しい子だ。
俺たちは、早々に新月村を出ることにした。抱き合って別れを惜しむ家族を見守りながら、村長にナギの両親の事を頼む。あれだけ俺に冷たかった村長だったが、俺に真実を話してくれた事からも、俺や、俺の母に対して、何かしらの罪悪感を感じていたのかもしれない。俺の頼みに、しっかりと頷いてくるた。
「ナギちゃん。これからは僕を兄と思ってくれ。使徒の関係者同士、よろしくね。」
俺は、なるべくナギとの距離を縮めるべく、お互いの共通点を笑いに変えながら、道中話し続けた。この少女が、俺のような不幸な人生にならぬようにと願いながら――
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実は、その後、ナミの様子を聞く為に立ち寄った三日月村に、僕ら【アリウム】ファミリーは一軒家を借りている。
カヒコの両親とアメワが村長に掛け合ってくれて、空き家を都合してくれたのだ。度重なるゴブリンの襲撃に困っていた事もあり、優秀な冒険者が生活の拠点としてくれるという事は、村にしてみれば、大歓迎だったようだ、
もともと、新月村のような酷い扱いもされず、俺としても悪い感情も無かった為、ナギちゃんを預かる事もあり、ありがたくアメワ達のご厚意に甘えさせてもらった。
アメワは、まだ氷狼への蟠りは消えていない。
しかし、俺やナギ、ナミのこれまでの経緯を聴き、俺たちを気遣ってくれている。
俺たちが三日月村に到着した時、ナミの姿はフェンリルの眷属のそれへと変化していた。俺と同じ、白い瞳……。この少女も、必ず守ってみせる。
俺は、受け継いだ魔法剣を握りしめて、その前の持ち主、優しい剣士の顔を思い浮かべた。
あなたが、俺を救ったように、俺も彼女たちを救ってみせる。そう強く誓った――
現在の登場人物の年齢です。
ヒロ=アリウム 17歳
ベル 不明
アメワ 18歳
ライト 29歳
ソーン 23歳
ナミ 13歳
ナギ 13歳