表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/456

操り人形


           ♢


 俺たちは、前を飛び続ける嘆きの妖精の後に続いて走り続けた。もうすぐ地下30階に辿り着く。その間、一匹も魔物に出会うことはなかった。



〈……オウサマノヘヤ、モウスグ。オネガイ、オウサマヲタスケテ……。〉


 それぞれ、武器を握る手に力が入る。



『あったわ! あそこ! 大きな扉があるっ!』


 叫ぶ妖精が指す方向に、開け放たれた大きな扉が目の前に現れた。全員で中に飛びこむ。そこには、驚く事に、自分たちの探し人が、全員揃っていた。


 

「ケインさん!」


 なんとそこには、右腕を落とされ血まみれのヴァンパイアロードと、それと対峙している優しい剣士と無口な盾使い。その後ろには、剣士を慕う弓使いと狐の仮面の少女が立っている。


 その周りには、倒された魔物が残した魔石が多数転がっており、さらに4体の冒険者の死体が転がっている。激しい戦闘が繰り広げられていたのだろう、その死体は穴だらけで、元の姿をほとんど留めてはいなかった。



『ちょっとちょっと!? これはどうなってるの!? ヒロ、どちらの味方をすればいの!?』


 助けを求めるべく会いにきたヴィンパイアロードと助けるべき相手である、狐の仮面を被せられた少女とケイン、ユウ、パーンの3人。その者達が戦っているのだ。さすがのライトとソーンも動揺を隠せない。



 その時、目も虚に吸血鬼王と対峙している剣士が、唸るように言葉を絞り出した。


「な……な……し……、俺を、た…おせ……。」



「―――っ!」



 剣士は、確かに俺の元の名を呼んだ。

 やる事は決めた!

 ケインさん達を助けて、ヴァンパイアロードも助けて、仮面の少女も助ける!俺は欲張りなんだ!


 

「みんな助ける!!」


 俺は叫んだと同時に、障壁に魔力を集中して、吸血鬼王と優しい剣士の間に飛び込んだ。もう、みんな傷つけてたくない!


「ハニヤス!ミズハ! 目の前に泥沼!」


 俺の声に反応した精霊達が、すぐさまケイン達4人の足元に泥沼を作り出す。泥に足をとられた4人は身動きが取れない。


「フユキ! 泥沼に氷結!凍らせて!!」


 続け様に足元の泥沼を凍らせて完全に足を固定させた。しかし、その場から弓使いの弓が連続で俺を襲う。


「ミズハ! 三人に水球! 気絶させる!!」


 放たれた矢を、障壁に任せて弾き飛ばす。

 波の乙女の水球は、全て三人の顔に張り付いたが、三人とも平気で動き回っている。どうして?呼吸していないのか?


 矢を跳ね返した障壁に、目の前にいた優しい剣士の魔法剣が叩きこまれた。足を動かせないというのに、かなりの衝撃を感じる。

 でも、俺の障壁は破られない! 伊達に70なんてレベルになっていない。魔法剣も耐えられるようだ。



『まったく――、逃げろと伝えたというのに……。フェンリルの使いよ、狐の仮面を壊せ! あれがヒルコの分身体を操っている!』


 そう言って吸血鬼王は、自分の周りに展開させた血の弾丸を一斉に狐の仮面にとばした。しかし、血の弾丸は、無理やり氷の沼から足を引き抜き、足を血に染めたパーンがその盾と身体を投げ出して防ぐ。本人は、身体中に穴を空けたが、狐の仮面の少女には、かすり傷一つつかなかった。

 

 さらに、倒れていたはずの二人の魔術師から、炎の矢が吸血鬼王に放たれる。到底動けるようには見えない魔術師たちは、穴だらけの身体を起こして連続して魔法を詠唱し続けている。

 そして、その炎の矢は、今度はケインとユウの足元を吹き飛ばした。



「なんなのあれ!? なんで動けるの!?」


「ともかく、狐の仮面を狙わなくてはならないようだよ。やるしかない!」


 一呼吸遅れてと戦いに参加した二人が、狐の仮面の少女に殺到する。しかし、そこにも傷だらけのパーンが立ちはだかった。


「パーン! あなた、操られてるの!?」


「ソーン下がって! 『世に顕在する万能なるマナよ、彼の者らを安らかなる眠りに誘えっ、スリープ』!』


 ライトも仲間の動きを止める事に注力することにしたようだ。しかし、ケインら三人とも水球を顔に張り付かせ、眠りの魔法をその身に受けながら、全く関係なく動き続ける。パーンなどは、全身から血を吹き出しながらもだ。


 どうする?

 どうしたらいい?

 睡眠の魔法は聞かない。呼吸を止めても関係ない。ケインさん達は、人ではないのか?



『白髪の少年よ、こいつらはもう死体と同じだ。よく見てみろ。狐の仮面の少女から、細い糸が繋がっているだろう。ヒルコは、あの糸を使ってこいつらを操っている。所謂、操り人形ってところだ。』


 糸?


 見えるか? 


 いや、なんとしてもその糸を断ち切らなくては!


『ヒルコの分身体は、第二の才能発言前の子供に寄生して、第二の才能を乗っ取り、そこに『パペット』という才能を書き込み、自由に操ってしまうのだ。』


 第二の才能を乗っ取る?


 そんな事できるのか?


『しかし、ダンジョン=ヘルツプロイベーレから離れられないヒルコは、あの狐の仮面を使って遠距離で操るのだ。』


 だから、村の少女たちを狙っていたのか。


『故に、この状況を止めようとするなら、まずは操り糸を切断し、狐の仮面の破壊すること。これしかない。できるか?』


 吸血鬼王は、片方の膝をつき、息も絶え絶えになっている。できるかだって?


 やるしかないだろ!




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ