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ダンジョン=レッチェアーム


「じゃあ、行こうか。」


 ライトさんの声に、おしゃべり妖精は直ぐに反応して騒ぎ出す。


『こら〜っ! リーダーは私だって言ってるでしょ!? 号令は私がかけるの!』


 姦しい妖精の声に、異端の歴史学者は苦笑いしながら両手を左右に広げる。進取の聖職者も、どうぞどうぞと、おしゃべり妖精に号令を促した。


「じゃあ、ベルさんお願い。」


 定位置である俺の頭に腰を降ろすと、右手の人差し指を前に突き出したおしゃべり妖精が、大きな声で号令をかける。


『さぁ、行くわよ! 新生チーム『アリウム』出発っ!!』


 満足気なおしゃべり妖精の様子に、俺が契約している精霊達も呆れたような雰囲気だったが、そんな事など気にする素振りもみせず、おしゃべり妖精は喋り続ける。


『あなたたち! 私に遅れるんじゃ無いわよ!』


 俺の頭の上にいるのに、いかにも先頭を行くかのようなおしゃべり妖精の言葉に、初めてのパーティーでのダンジョン探索という事で緊張していたメンバー全員、すっかり表情が緩んでいる。


(もしかして、ベルさんはリーダーの才能あるのかも……。)


 いやいや、それはないかと1人ごちながら、俺は改めてダンジョンの入り口へと足を踏み出した。



           ♢



 ダンジョン=レッチェアームは、首都の西側、レッチェタウンの中央広場に入り口がある。

 守護者であるヴァンパイアロードの影響なのか、このダンジョンには不死者=アンデット系のモンスターが発生する。ゆえに、浄化の力や炎の魔法で燃やし尽くすなどの攻撃手段が必要となる。


 今回、一緒に探索してくれるソーンには浄化の力、ライトには炎魔法があり、俺には火蜥蜴=サラマンダーのサクヤがいるので、みんなが不死者に対抗する手段を持っていることになる。


 異端の歴史学者曰く、パーティー全員が対応できるという事は、稀な事なのだそうで、少人数のパーティーである事を差し引いても、探索にかなり有利になるとの事だった。


 俺を先頭に、俺の頭の上に索敵役のおしゃべり妖精、真ん中に攻撃範囲の広い歴史学者兼魔術師、最後尾に棍術にも長けたヒーラーの聖職者の隊列でダンジョンを進む。俺と一緒に戦ってくれる精霊達もヤル気満々の様子だった。



            ♢



「フユキ、ヴァンパイアロードとの繋ぎは取れるかい?」


 フェンリルさんに言われた通り、ダンジョンに入ってすぐに、霜男を精霊箱から出した。


〈…………。〉


 そのまんま雪だるまの姿である氷の精霊、霜男は、真っ黒な黒い目をパチパチさせて、首をかしげる。どうやら、ヴァンパイアロード側からの反応が無いらしく、横一文字の口がへの字に曲がる。



「まだ、ダンジョンの入り口すぐだし、私たちが部屋を見つけたのは地下30階よ。しばらく、フユキに交信してもらいながら、ダンジョンを進むしかないんじゃない?」


 それしか無いか。フェンリルさんに呼ばれた時は、案内の魔物がすぐに現れ、部屋は地下一階に出現したので、今回もそうなるのではないかと思っていたが、ちょっと勝手が違うようだ。



「――そうですね。反応があるまでは、進むしかなさそうですね。」


 俺は簡単に考えていた認識を改め、気合いを入れ直す。とにかく、ヴァンパイアロードに会えるまで進むしかないのだ。


(ケインさん、無事だと良いのだけど……。)


 奇跡でもなんでもいい。一縷の望みにすがりながら、ダンジョンを進み始めた。



           ♢



『前方っ! スケルトン3匹! 武器無しよ!』


 おしゃべり妖精の声が響く。相変わらず目が良くて助かる。その声に反応した俺は、土小鬼に【散弾】を使う指示をだす。

 俺の投げた小石は、細かい石の礫となって広がり、前方のスケルトン3匹を見事に粉々にした。


 経験豊富な魔術師の提案で、スケルトンは消滅させることなく、物理攻撃でバラバラにしてしまう方法を取っている。浅い階に発生する魔物相手のうちは、体力、魔力を節約して進もうという作戦だ。



「いやぁ、ベルさんは目がいいねぇ。助かるよ。」


 地下5階まで、ほとんどスケルトンしか出現していない為、土小鬼の【散弾】だけで魔物を屠っている。


「しかし、君の魔力量も大概だな。例の【障壁】も張り続けているんだろ?」


 ダンジョンに入ってからずっと、俺は【障壁】を維持しながら、火蜥蜴、土小鬼、波の乙女、霜男の五人の精霊達は姿を表し続けている。

 この状況を見ている魔術師は、かなりの魔力消費になっているだろうと分析していた。



「どういう訓練をしたら、それだけの魔力を貯めることができるのやら……。ぜひ、魔術師大学にある、魔力総量計を試してみてもらいたいもんだ。」


 まぁ、今の僕では大学に門前払いされるだろうけど、と最後は自虐ネタで話を締めていた。

 しかし、そんな便利な機械もあるのか、是非試してみたいな〜。いつか、魔術師大学にいってみようか。ライトさんの研究も成就させてあげたいし。



『ちょっと、何ぼぉ〜っとしてんのよ! 前方、スケルトン三匹! 武器無し2匹と棒持ち一匹よ! 油断しないでね!』


 叫ぶ妖精に頭を叩かれながら、土小鬼に魔力を渡す。慣れた様子で俺の投げた小石を【散弾】に作り変えた。今回のスケルトン達も粉々である。


 スケルトンを倒した攻撃に、ライトが賛辞をそえて拍手してくれている。こういうのって、嬉しくなっちゃうよね。

 一緒にパーティーを組んだばかりだが、俺に関わってくれた人には、是非とも幸せになってもらいたい。そう思いながら、後ろを歩く聖職者を伺い、また、三日月村で別れた元魔術師の少女の顔を思い浮かべるのであった。



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拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
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