若筍冒険者の伸びしろ
ブラースさんにお願いして、ギルドの才能診断の石板を使う為に、冒険者ギルドの一室を借りる事になった。4人全員、順番に確認していく。
まずは、歴史学者兼魔術師のライトさん。
▼
クラス 探究者
才能1 メモリー
(瞬間記憶)
才能2 ソーサリー
(魔法操作)
スキル 瞬間記憶 LV15
考察 LV15
炎魔法 LV12
風魔法 LV8
魔力操作 LV8
▲
ライトさんは、瞬時に文字や模様、記号などを覚えることができる『瞬間記憶』というとんでもないスキルを持っていた。第一の才能である『メモリー』のおかげで、知識をインプットできる量が常人では考えられない量なのだそうだ。ただ、覚えるのはいいが、その知識をアウトプットするのが苦手で、苦労しているみたい。
学者として長い期間取り込んできた知識を、今は神々の戦いに関する歴史の謎を解き明かす事に使っている。ダンジョン探索も研究の為に参加しているそうで、自らの身を守る為に魔法の力を磨いたのだそうだ。
魔術書の知識を『瞬間記憶』によって記憶し、何度もトレースしているうちに、第二の才能『ソーサリー』を授かったらしい。俺も、コツコツ魔法の練習をしていれば、魔法が使えるようになるだろうか。
レベルが10もあれば達人と言われると聞いていたが、ライトさんの得意魔法の炎魔法のLVは12。かなりの実力の持ち主なのだろう。
♢
次に、太陽神の聖職者であるソーンさん。
▼
クラス 神官
才能1 シール
(封印封魔)
才能2 ヒーリング
(回復魔法)
スキル 封印 LV12
回復魔法 LV12
浄化 LV10
棍術 LV10
▲
ソーンさんの両親は熱心な太陽神の信者であり、その影響もあって、ソーンさんも太陽神の教えを物心が付く前から教えこまれて育ったそうだ。
そんなソーンさんの第一の才能は『シール』。悪なる神を封印するのが太陽神に仕える者の至上命題である。両親は、この才能に歓喜し、自分で身の回りの事ができるようになるとすぐに、太陽神の教会に仕えさせたのだそうだ。
『封印』のスキルを持つ聖職者は、進んで探索組の冒険者パーティーに参加するように求められる。ソーンも例にもれず、ヒーラーとしての役割を磨き、冒険者として活躍していた。
驚いたのが、棍術のレベルの高さ。女性の身で冒険者として活動していると、魔物相手だけでなく、同業者に襲われそうになったりもしたそうで、自分の身を自分でしっかりと守れるように、護身術として修練したのだそうだ。
教会でも、自衛の為の技術として棍術を教えてくれるのだそうで、自然と長めの棍を使う事にしたそうだ。回復魔法のレベルの高さにこの攻撃力だ。やはり、B級冒険者は凄い。
そして、この俺。
▼
クラス 精霊使い
才能1 アンチ/エンパシー
(反対、拒絶 対抗/共感、同情)
才能2 ダブル
(2重、2倍)
スキル 障壁 LV70
同調 LV12/複合 LV6
剣術 LV2
投石 LV4
採取 LV2
▲
相変わらず、『障壁』のレベルが出鱈目に上がっている。常時発動しないように出来るようになったが、先日の連続で行ったゴブリン討伐での経験が加わったからだろうか。レベルの高さ云々は関係なく周りからの事象を防いでくれているので、どんどん上がるレベルに意味があるのかよくわからない。
『同調/複合』のレベルが上がったのは嬉しい。きっと、精霊達と一緒に困難な戦闘を経験した事によって、絆が一層深まったのだと思う。最近では、言葉は交わせないが、なんとなく精霊達の気持ちがわかるようになってきたし。
フェンリルさんから預けられた、霜男=ジャックフロストのフユキと契約したのも影響したのかもしれない。複数の精霊と契約できるのは、かなり珍しいそうだから、契約した精霊の数が増えれば、スキルのレベルにも影響するのだろうと思う。
剣術のレベルはさっぱり上がってなかった。遠征続きで日課の練習も出来てないし、しょうがないか……。いつかは、あの優しい剣士のように剣を使いこなしたいものだ。
戦闘に良く利用しているからか、投石に関してはレベルが少しずつ上がっていた。土小鬼=ノームのハニヤスも、石の操作がかなり上手くなってきていて、この間のゴブリンとの戦いの中で、【石礫】を細かく砕いて相手にぶつける、【散弾】という技を編み出してくれた。これからも、俺の新しい攻撃手段の要とし役に立ってくれそうだ。
♢
「――ほぉ〜、聞いたことのない才能ばかりだね。しかも、第一の才能が2つ? こんなことあり得るのか。でも、ヒロ君は実際に使いこなしているのだから、紛れもない事実ななだろうね。いやいや、実に興味深いね! 」
「――ちょっと、この『障壁』のスキルのでたらめなレベルはどういう事!? 70なんてレベル、聞いたことないわ!? レベル10で充分実力者なのよ? それをこんな……。才能を授けられているのだから、人には違いないのだろうけど……。」
俺は、この才能のおかげで、2人に初めて出会ったダンジョンの奥でも生き延びる事ができたのだと、改めて説明した。あの深い崖に落とされても平気だったのだから、かなりの強度であると。
「君は精霊を使役しているんだね。エルフなどが精霊の力を借りるというのは良く聞くが、人族で精霊と契約できるとは、それは第二の才能のおかげなのか……。これも、物凄く興味を惹かれるね!」
「まぁ、可愛い精霊さん達ね。私達にも見ることができるなんて、みんなかなり位の高い精霊なのかしら。精霊さん達、みなさんよろしくね。」
そう、フェンリルさんが言っていた、精霊たちの位が上がっている件。俺と契約し、俺の魔力をお腹いっぱい食べている精霊達は、位があがり、力を伸ばしているそうだ。もっと上位の存在になれば、今みたいなそれぞれの「宿り場」無しでも、俺に付いて歩けるようになるかもしれないそうだ。もし、そうなったら、この優しく、頼もしい友人達が隣を歩いてくれる事になる。そんな嬉しい事はないな。
「君の能力が『障壁』による絶対防御と、使役する精霊たちによる攻撃だということはよく理解できたよ。それを元に、パーティーでの立ち回りを考えていこう。」
「そうね。ヒロ君、改めてよろしくね。」
俺の才能については、これからも一緒に利用法など考えてくれるそうだ。とても心強い。
自分が何故、この身体に宿ったのか、おそらく、生まれた時に授かった『アンチ/エンパシー』に理由があるのではないかと俺は考えている。
いつか、俺の心の奥底に眠っているアリウムの事も、この才能によって、なんとかしてあげたいのだけど……。
♢
さて、お互いの理解も深まった。これでダンジョンに向かう準備も整った。
………え、おしゃべり妖精さん??
「……ごめんなさい、ベルさんじゃ手が小さすぎるのと、魔力が少なすぎて、判定できないみたい……。」
あの日のフィリアさんと、全く同じ台詞をブラースさんに言われ、おしゃべり妖精は、その場に崩れ落ちていた。
みなさん、評価やコメントなど、ぜひぜひよろしくお願いします!