表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/456

噂の4人パーティー


 今、レッチェタウンの冒険者ギルドは、不思議な組み合わせのパーティーが結成されたとの噂で盛り上がっていた。


 

 パーティーメンバーの1人目は、最近、魔術師大学の歴史学研究室を追い出されたという、異端の歴史学者で、様々な魔法を扱えるというB級冒険者。


 2人目は、善なる神々の一柱、太陽神テラに仕える聖職者で、癒しの魔法を使いこなし、貴重な封印の才能をもつというB級冒険者。


 そして、3人目は、白髪、白瞳の小柄な少年で、人族では珍しい、精霊使いというクラスについており、その傍らには、おしゃべりな妖精を連れて歩いているD級冒険者。


 この3人のパーティーの名前は『アリウム』。なんと、リーダーはB級冒険者の大人二人を差し置いて、ついさっきD級冒険者になったばかりだという、白髪の精霊使いの少年だというのだ。これは、レッチェで活動している冒険者達を大いに驚かした。


 二人のB級冒険者に関しては、最近までレッチェタウンで活躍していた冒険者であり、先日のダンジョン探索で守護者と遭遇し、壊滅の憂き目にあったという、B級パーティー『アイリス』の元メンバーである。それこそ、レッチェタウンで活動している冒険者の間では、かなりの有名人で、実力に関しても間違いなく優秀な二人である。


 ただし、パーティーの壊滅後、歴史学者は誰もが驚く、とんでもない異説の論文を発表したとかで、歴史学会からの笑い者となってしまい、街外れの穀物小屋に引き篭もって一人研究に明け暮れるようになっていたし、聖職者は、パーティーメンバーを失ったショックからか、教会の奥に閉じこもって、毎日の神への祈りの修行もせずに、自分の力の未熟さを嘆きながら、すっかりやる気をなくして呆けていると噂されていたのだ。


 そんな、実力はあっても、パーティー壊滅後の行動が噂になった二人を、レッチェタウンではまったくの無名のD級冒険者で、しかも不思議な風貌という噂の少年が率いるという。

 さらに、この三人の周りを、とても珍しい妖精の女の子が飛び回っているのである。こんな珍しくて、不思議な組み合わせが噂話にならないなど、到底無理な話なのである。



            ♢



「――ヒロ君。これはまた、凄いメンバーを揃えたわね。」


「はい。元『アイリス』のお二人に協力していただけることになりました。このメンバーでダンジョン=レッチェアームに挑み、ケインさん達、『アイリス』の残り3人の捜索をしてきたいと思います。」


 俺は、使徒と会いに行くなどとは言わなかった。もう一つの目的である、ケインさん達の捜索についてだけ、わざわざカウンターの後方から、様子を見にきてくれたギルド職員のブラースに伝えることにした。



            ♢



 ブラースは、『アイリス』の壊滅後、冒険者ギルドに全く顔を出さなくなっていた歴史学者と聖職者の二人の来訪に喜び、そして、その後に聴かされた、白髪の少年とパーティーを組むという話題に、とても驚いた。


 それはそうだろう。引きこもっていたとはいえ、レッチェタウンでも指折りの実力者の二人である。その2人が、D級へ昇格を果たしたばかりの少年に付き従うと言うのだ。


 その渦中の少年の冒険者のD級昇格についてだが、つい今しがた、新しい冒険者章を渡したばかりである。

 リンカーアームの冒険者ギルドの長、ハンド=サムから届いた真新しい冒険者章を、件の少年と妖精に渡したばかりなのだ。妖精は、何故自分がE級止まりなのかと、大騒ぎしていたが、なんとか少年が宥めてくれて渡す事ができた。


 何やら、リンカータウン周辺の村々でのゴブリンの大量発生を阻止した功績が評価されたそうで、この若さでD級冒険者に認められるということは、相当な実力があるのだろうと思う。同期のフィリアも気にかけているようだし、将来が楽しみな少年である。


「ベルさん用の冒険者章は、ヒロ君に預けておくわね。早くベルさんの身体に合わせた冒険者章が作れると良いんだけど……。」


 他人の冒険者章を預かるのは、冒険者にとって縁起の悪い事とされている。普通は、この世に居なくなった冒険者の冒険者章をその者の片見として持ち続けるものだからだ。


「まぁ、小さなベルさんの身体にあった冒険者章を作るのはなかなか大変そうだから、しょうがないのだろうけど……。」


『人族は変な事考えるのね! 人族の縁起担ぎなんか、私はまったく気にしないわ! 私がヒロに預けているのは、冒険者章だけじゃないの。だから全然大丈夫よ!』


 元気なおしゃべり妖精の声がカウンターに響くが、私も、妖精の周りの者達も苦笑いするしかなかった。



            ♢



「さて、パーティーの登録は終わったが、できれば今後の為に、全員の才能、スキルの確認をしておきたいのだが、いいかな?」


「そうね。このメンバーでダンジョンに挑むにしても、お互いの特徴を知っておかないとね。みんなで才能診断してから、連携を考えましょう。リーダーいいかしら?」


 おしゃべり妖精がリーダーは私なんだから、私に伺いをたてるべきだと騒いでいるが、ここは放っておく事にする。



「そうですね。僕もしばらく才能診断していないので、今の自分の力を知るためにも、ぜひやってみたいです。もしよければ、僕の能力の活かし方を先輩方にアドバイスしていただければありがたいです。どうか、よろしくお願いします。」



 さて、果たして俺は成長できているだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拙い文章ですが、読んでいただいている皆さんに感謝です。楽しんでいただければ幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ